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追 章  2-  2/11 高校一年生・初夏 

 

         2


 夏ともなると日が長く、午後五時でも冬とは違い、昼間と変わらないほどに明るかった。


 ここは、住宅街の中にあるそれほど大きくない公園で、

 三方を住宅に囲まれ、入口は残道路に面している一方に二か所あった。


 滑り台からは、男の子達の大きな声が聞こえてきた。

 ブランコでは女の子達のはしゃぐ声。

 砂場では小さな子達が、蛇口から小さなバケツでくみ出してきた水を使って、ダムを作って興奮した声を発していた。


 そんな風に放課後のこの貴重な時間を、友達と過ごしている子ども達がそこかしこにいた。


 そこには二つベンチが備えられているが、その一つに高校生の三人組がいた。

 一人の女子と二人の男子。


 なんだか楽しそうな組み合わせだが、状況が違っている。

 ひそひそとした話し方に、誰も近づいて行ける雰囲気はなく、そこだけがこの公園の風景になじんでいなかった。


 誰もが遠巻きにしている。


 だからといって、別に何か悪事をはたらいてしているようには見えず、いちゃついてもいなかった。

 なんだか真剣に話し込んでいる様子が、人を近づけなくしていた。


 そんな様子が小一時間過ぎた頃だろうか、公園には人の数も消えて行き、

 もう高校生達しか残っていなかった。


 辺りも薄暗くなっている。


 そうして、その三人が公園を後にしようと出口に向かって行くと、

 その目の前に一台の車が止まった。



 話は、数時間前に戻る。


 昼休みに教室にいると、同じ学年の違うクラスの二人の男子が女子がくつろいでいるところに近づいて来て、

 一人の女子を廊下まで呼んだ。


 そこで、こんな話がされていたのだが、


「……本当にこれは、しない方がいいよ」

「頼むよ。これ本当に、頼まれてくれよ」

「先輩に言いなよ。絶対良くないから」


 先ほどから、こんなやり取りを繰り返していた。

 それでも、男子達に譲る気配はない。


「これ、先輩から頼まれたんだよ。頼むよ。これ一回だけだから、な?

  友延とものぶ、頼むよ」


「何回言わせるの。こんなの良くないから、やめよう。

 二人とも、先輩に言いにくいなら私から言うから……」


「それは困るよ。俺達が」


「だったら、こんなのやめよう。それに、このパソコン、その先輩のなんでしょう? 

 だったら、本人が頼みに来るのが筋じゃない?」


「分かってるよ。でも、……分かってくれよ」

「なんで、これをしようと思うかなあ? 

 それに、どこで仕入れてきたか知らないけど、こんなの、しちゃいけないんだよ?」


「……だったら、これ、見せてくれよ。これって、どんなものなんだよ。

 俺には、ただの記号にしか見えないし」


「記号ね。それでいいんじゃない? 

 先輩に言いなよ。出来ないって。したいなら、許可もらえって」


「そ、そんな、頼むよ」

「それに、なんで私に頼むの? 関係ないでしょう、私を直接知らないのに。そう言って断わったら?」


「……でも、先輩には」

「情けないなあ、たった一歳か二歳しか違わないんだよ? 

 いくら先輩って言っても、悪い事には関わりたくないって言えばいいじゃない?」


「分かったよ、……一度先輩に聞いてみるよ」

「そうしなさい。それがいいって」


 その後、一度はあきらめた二人だったが、放課後改めてやって来た。


「今度は何? 謝りにでも来たの? それとも、また頼まれてきたの?」

「まあ……な。もう一回頼みに来たんだ」


「懲りないわね? で、今度は何?」

「前と同じだよ、やっぱり、してくれないかな?」


「言ってるでしょう? ハッキングはしないって!」


 そう言いながら、小声でしかも周りを異様に気にしながらの言い方だった。 

 校内でこの手の話題は、タブーだ。


 それというのも、

 春先にニュース部が部活動中に、校内新聞を作る傍ら企業にハッキングを試みていて、

 それを突き止められたうえ、もう少しで逮捕という事態になった。


 それを回避したのが、友延だった。


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