追 章 1 三光園にて
この話は、第三章の終わりのちょうど続きに当たります。
三光園に、ある日、男性が訪れた。その男性は、友延利沙を訪ねてきた。
名前を友延駿一。
駿一は、大学で勉強中だが、司法試験を受ける準備のために取り寄せた戸籍謄本で、
自分が一人っ子になっていた。
妹との二人兄妹のはずが、なぜか一人っ子だった。
おかしいと思って、両親に聞いたら、両親も知らなかった。
そこで、確認しに来た。
両親にとって、それは朗報だった。
なぜなら、犯罪者が近親者にいると、司法関係の仕事に従事出来ない。
だから、利沙がハッカーとして捕まった時点で、両親は利沙を戸籍から外すために色々と考えてきた。
それが、どんな形であれ望みが叶ったと喜んだ。
それが事実だった。
それには、駿一は気づいていないようだが。
駿一は、事実と経緯を確認するために、利沙がお世話になった所を、順番に巡って来たという。
しかし、三光園でも、事情を知っている者はいなかった。
三光園側でも、初耳だった。
そこで、その事情を知っていそうな、公安を訪ねるように伝えた。
公安に行った駿一は、利沙がどんな事件を起こしたかを聞き、驚いた。
しかし、
「あの子ならやりそうだ。ただ、利沙は優しすぎたんだ。
……戦争反対。
ただそれだけだったのに、あいつは。
本当に……、どうしようもない奴だなあ」
駿一は、愛おしそうにそう言って、家路についた。
ただ、その眼には、涙がうっすらと浮かんでいたという。
その時、駿一は涙と共に、やるせない笑顔が浮かんでいた。
自分にはどうしようも出来ない。
その事実を前に、自分の非力さを感じていたのかもしれない。
兄妹とは、離れていても分かり合えるものなのでしょうか?
二人はこの後、どんな道を歩んでいくのでしょう。




