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花が咲く 第一部 ~その時見た夢~   作者: 三布
第三章  過去との遭遇
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第三章 28 (終)

 この話で、第三章と言わず、第一部の最終回です。

 


 杉原は、利沙の話を聞いていた。

 が、聞いているうちに苛立ちを覚えた。



 そして、その苛立ちも利沙が話し終わる頃には、ピークに達していた。


「利沙。お前は、自分が偉い人間だとでも思っているのか? 

 自分のためにみんながいるとでも? 

 お前は、何様のつもりだ? 


 利沙一人のために、どれだけの人が今まで動いてくれたと思っているんだ? 

 お前は、人を道具か何かと思っているだろう? 


 自分の思っている通りに動いてくれて当然だって。


 ……それは違う。絶対違う。

 それはお前が間違っている」


 杉原は、利沙の襟首を左手でつかみ、右拳で一発利沙の頬を殴った。


 杉原の顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。

 そして、体は、他の捜査員に押さえられていた。


「俺は、お前のために泣いてるんじゃない。

 俺は、お前にそんな風に見られていたのが、悔しい。


 お前にとって、俺達警察も何もかも、ただの道具に過ぎなかったわけだろ? 

 ……そうだろ? 


 今までの、全部お前の書いた筋書通りなんだろ? 


 スピースも、フラワーポットも、全部。

 俺や、今までお前に良くしてくれた人も。


 ……いい加減にしろ。もう、お前とは付き合ってられん。

 もういい、もう関わるのはごめんだ。


 ……分かった。もう落ち着いた。大丈夫だ」


 最後の言葉は、自分の体を押さえていた捜査員に向かって言った。

 杉原は体の自由を取り戻し、


「利沙。お前は、戦争は嫌だと言いながら、スピースを使って、いろんな悪さをしてきた。


 でも、それは、戦争をなくすためじゃない。


 反対だ。


 もしかしたら、世界規模での戦争が始まるかも知れない危険に、世界中を巻き込んだ。

 日本も例外じゃない。


 もし、これを、日本政府がスピースを使っていると思われたら?

 そうしたら、日本が真っ先に標的になる。


 お前がいくら違うと言っても、それをそう簡単には信じてはくれない。


 そして、利沙が望むように、スピースを引き渡さなければ、余計な疑いをかけられるのは、必至だ。

 そうなれば、日本を舞台に戦争が始まる。


 日本から仕掛けた戦争がだ。


 それは、すなわちお前の大嫌いな戦争を、お前が起こすんだ。

 お前の家族も友達も何もかもが、被害を受けるんだ。

 お前とはなんの関係もない人達までも」


 そこまで言って、一息ついて、続けた。


「それに、人をこれまでだましてきた。これは詐欺だ。

 善人ぶってソフトの開発だと? 


 ふざけるな!


 それもこれも、全部ハッキングで得た技術を売り物にしただけじゃないか。

 親も、兄弟も、友達も関わってくれた全ての人に、自分は、もう何もしてませんって嘘ついて。


 本当は戦争の引き金を、いつでも引けるようにしていたんじゃないか?


 嫌な奴に復讐するために、軍事システムをジャックしたんじゃないか?

 そう言われても仕方ない事をしてるんだ。

 その自覚もないままに。


 ……そろそろ自分の犯した事実を、ちゃんと自覚する時だ。

 これが最後だ。


 もう、……お前とは関わるのをやめる」


 そう言って、杉原は取調室から出て行った。

 利沙の方をふり向かなかった。


 利沙は、それを聞いても何も顔に表れていなかった。


 利沙には分かっていた。


 真実を言えば、傷つく人がいると。


 そして、その中でも杉原をより傷つけてしまう事も。

 そして、杉原がどんな反応を見せるかも、だいたい想像ができた。


 杉原を兄とも慕い、

 杉原になら、感情の赴くまま甘えたり、ふざけてみたり、時には涙も流せる。


 そんな関係の杉原に、こんな風にしか言えなかった。


 でも、言うと決めた。

 それで、自分の気持ちに決着したかった。


 日本にはいられない。


 その事実が、利沙を追い詰め、利沙の判断を鈍らせたかもしれない。


 でも、これ以降、利沙の肩の力が抜けた。

 それが事実だった。


 杉原とは、この時を最後に会わなかった。



 この数日後、IIMCから、派遣された担当捜査官が来日。

 その数日後に、利沙は、IIMCに身柄を移された。





 利沙がIIMCに移送されたその頃、三光園に一人の訪問者があった。


 見た目は、二十歳前後の男性で、少し線が細い印象を受ける。

 しかし、意志はしっかり持っているようにも見えた。


「すみません。おじゃまします」

 その声はよく通っていた。


「はい」


「こちらに、友延利沙がお世話になっていると、聞いて来たんですが。


 利沙には会えますか?」


 対応した職員は、ちょっと驚いて、否、戸惑っていたと言った方がいいかもしれないが、

 落ち着いた声で、


「あの、どちら様でしょうか?」

 男性の訪問者は、少し慌てて、


「すみません。私は、友延利沙の兄で、友延駿一(しゅんいち)といいます」

                                    ―― 終 ――



 以上で「花が咲く 第一部 ~その時見た夢~」本編が終了します。

 これ以降は、暫くのちに始める予定の「花が咲く 第二部 ~あの晴れた空を仰いで~」を、お待ちください。

 なお、それまでは、「花が咲く 第一部 ~その時見た夢~ 追章」をお楽しみください。

   「追章」では、本編で語れなかったものを補足として、書かせていただきました。


 本編をここまで読んで下さりありがとうございました。

 この後、第二部 ~あの晴れた空を仰いで~ を始めるまで間、追章をよろしくお願いします。

 番外編ではなく、本編のちょっとした続きと、本編の補助みたいなものです。

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