* 迷 路 * 2
近いからと、SAでは休憩はとらずに、目的地のインターまで直行。
インターを降りると、普段、私たちが生活している都会の喧騒とはまるっきり違った景色。
昔ながらの商店街や、少し遠くには新緑が鮮やかに写る木々が生い茂っている小高い山の風景。
よく晴れた青い空に緑色がよけいに鮮やかに写っていた。
「こんなに近くにこういう場所があるなら、いつでも来れるね」
助手席に乗っていた森田先輩が窓を開けながら言った。
「だから私にまかせて正解だったでしょ~♪」
鼻歌を唄いながら運転していた鈴木先輩が得意気な口調で言っていた。
「また、お願いします!」後ろの席で叫んだ私に、先輩たちが笑っていた。
「あと10分くらいで旅館前に着くよ」
インター近くにあった商店街から少し抜けて、ちょっとした山道のような道路を車を走らせていた鈴木先輩の「あれ?」という声。
突然、路肩に車を止めた。
「どうしたんですか?」
後部座席から身を乗り出して聞いた私。
「ここ、さっき通ったような……」
申し込んだ旅行会社から送られてきたという地図を確認しながら鈴木先輩が呟いていた。
「道、間違えたかな」
普段、車の運転には自信があるといっていた鈴木先輩。
自分に府が落ちないようにそう言って、「ごめんね~」と言いながら、再び車を発進させた。
私たちは、外の景色は見ていたものの、新緑が多いその山道のような場所が何処も同じような景色に見えていたので、「大丈夫だよ」などと言いながら、のんきに構えていた。
すると、また鈴木先輩が車を止めた。
今度は、道のど真ん中。
「変だよ……やっぱりさっきから同じところ、通ってる」
「そうですか?」
「だって……ほら、あそこの看板。さっきも見たでしょ!?」
先輩が見ている方をみると「○○温泉へようこそ」と書かれた看板があった。
そういえば……見た。
温泉地なのだから、あちこちに同じ看板があるのだと、あまり気にもとめないでいた。
しかし、鈴木先輩の言葉を受けて前方を見ると、インターを降りて最初に見た看板と同じということに気付いた。
というのも、その看板の横には、観光客向けのような大きなレストランがあり、そのレストランの屋根が赤く、その赤い色が印象にあったから。
「あ……本当……」
私がそう言いかけた時に、いつも冷静な森田先輩が「もう一度、インターへ戻って!」と、かなり大きな声で言った。
「あ、うん」
鈴木先輩は、森田先輩の言う通りに、その場で車をUターンさせ、インターへ向かおうとした。
高速を降りたインターへ向かって走り出した車から見える景色は、もちろん途中に見た景色だった。
私も、何となくだけれど、異常な感じに包まれていたので、今度は注意深く、外の景色を見ていたのだった。
『インターまでは大丈夫そうかな……』
そうは思っていたけれど……。
一瞬だけ窓の景色から目を外し、再び外を見て、今度は私が叫んでしまっていた。
「あれ?」