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* 旅館 其の一 * 8
私も、当時、〝憑依体質”という部分では、森田先輩に匹敵するくらいの体質を持っていた。
行き違った初対面の霊能者から、「弟子にならないか」とスカウトされていたくらい。
自分でもそれは自覚していたところで、ある力ある霊能者から憑依を避ける方法は教えてもらっていた。
その時の森田先輩よりは私の方が動くことが出来るのは明白。
ふたりの先輩がどうにかなるよりも良いと判断した。
ましてやこのような状況や環境の中、森田先輩がどうにかなってしまったら、もう頼る術もない。
憑依された時のことを考えると、多少の躊躇いはあったものの、その時に優先すべきことをただ実行しようとしていた私がいた。
「もし憑依……」
「大丈夫。私が引き受けるから」
私が頼みたかったことを敏感に察してくれた森田先輩がいた。
いつもは、「やめておきなさい」と促してくれる森田先輩も、鈴木先輩がよほど心配だったらしく、私の行動を止めようとはしなかった。
「リキ、入れます!」
そう言って、私は、もう一度、口にタオルを当てた。
そして、その霊能者から教えてもらった“方法”を実践しながら、あの“臭い”の空間へと足を踏み入れた。
※憑依:霊などがのりうつること。憑くこと。(Wikipediaより)
>>*旅館 其の二* へつづく




