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異 空 間  作者: 本城沙衣
12/78

* 旅館 其の一 * 6


「あの臭いも……なんだけど……」


「はい?」


「卓球してた時、香里ちゃん、止まってたじゃない!?」


「ああ……人が通ったから」


「鈴木さん、平気で球、打ってきてたよね?」


「そうなんですよ、まったくね~」



私は、元気になって来たように見えた森田先輩の言葉に、少し冗談ぽく返していた。



「不倫カップルみたいでしたね~」



また冗談を言った私。



「不倫だよ、あれ」


「え?」


「っていうか、不倫……だった!?」



過去形を使った森田先輩の言葉をにわかには理解出来ないでいた。



「鈴木さんには、見えていなかったのかもね」



その言葉で理解することが出来た。


「見えていなかった」という言葉。



「どんな……風な感じの人でした?」



すかさず、聞いてみた。



「紺のスーツの男性と赤いワンピースの女の人と……旅館の人っぽい人」



「先輩も……ですか……」



出来たら、違っていた方がよかった。


よくなかった……!?


違ったら違ったらで、もっと沢山の……がいたことになるから。


それでも、更に聞いてしまっていた。



「髪型とか……は……?」


「う~ん……どっちの人も、昭和のレトロって感じ……かな」



私が見た人たちと同じだった。


あの時、特に女性が目に入った私であったので、女性の方をよく覚えている。


若い女性であるのに、その当時、流行っていた髪型とは違い、私の母の若い時の写真のような……そのようなヘアスタイルだった。


そういえば、ワンピースも流行りのデザインではなかった。


やはり、母が若い時に着ていたような……。


女性の赤いワンピースが妙に目に付いてしまっていたせいか、男性の細かいところまでは記憶になかったけれど、思ってみれば、やはり、あの女性と釣り合っていたのであるから、昭和のレトロという感じだったと思う。


あんなにハッキリ見えたのに……色まで鮮明に!


いくら、霊感が人よりも強い私でも、あれほどまでに鮮明に見たことはなかった。


卓球台のところにいた私の後ろを通った時に、確かに言葉で挨拶も交わしたし、“人”の温もりみたいなものも感じた。



「たぶん……ふたりで亡くなったんだね……ここで……かな」



森田先輩は、意外にも冷静な物言いで話していた。



あれが、この世の人たちでなかったというの?


だったら、私の後ろにあった階段は何処へ続いているの……?



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