これが異世界
浮かんだ……というよりは、暴力的な引っ張り力だ。
「っ……何が?うえっ」
首の皮一枚掴まれて、強制的に持ち上げられたような感じだ。
「にゃにゃ!?おま、なんでいきなり浮かんだんにゃ!?」
「浮かんだんじゃ、無い。釣りあげたのさ」
上から声が聞こえ、僕とキャットは空を見上げた。
「やあまた会ったね……野良転生者君」
そこにいたのは、八重歯をのぞかせた笑顔をした丸眼鏡をしたあの細めの男だった。
彼は屋根に腰かけ、細い長い……釣り竿か。
「……随分場違いな物を持ってるねぇ。えっとりゅ、りゅ……リョウマ?だっけ?」
「リュウだよリュウ」
僕は首元に触れている、釣り糸に手を触れてみる。
どうにか外せないかこれ?
おそらく、釣り竿を見るに、光った糸は釣り糸だろう。そして、僕の首筋に当たったあの鋭い痛みの正体は……釣り針。
釣り針という事は、どうにか針を外すことができるはず。
……最悪、首の皮を引きちぎればいいはず。
そう思って、首筋に手を触れてみるが……おかしい。
おかしいぞ?
針が無い⁉
「無駄だよ、俺の針は君の首に入り込んでいるからね」
「首に入り込んでる⁉」
確かに、針が無くうなじから直接糸が伸びているような感触だ。
「狙った獲物は逃さない。それが僕のユニークスキル……≪釣りと宝≫さ」
「ユニークスキル……ってことは転生者か」
「にゃにゃ!?転生者……あああ!」
そう言って今まで蚊帳の外だったキャットが声を上げた。
「何さ?そんな素っ頓狂な声出して」
「リュウ、リュウ……リュウって、まさかAランク冒険者の【釣り師】リュウ!?」
そう言った後、キャットは僕の事をどこか憐れんだような目で見てきた。
「……お前には、ひどい目にあわされてばっかだったけどにゃ、何ていうか……ご愁傷様にゃ」
「何、今生の別れみたいなこと言ってるのさ」
「当たり前にゃ、相手はA級冒険者。にゃーたちが、逆立ちしたって勝てない相手にゃ」
「そりゃ、逆立ちしたら勝てないだろうね。不利だもん僕たち」
「そういう意味じゃないにゃっ!」
そう言ってツッコミ入れたキャットは「はぁ」とため息を一つつく……
「ってお前の野良転生者だったにゃ!?」
そう言ってキャットはぎょっとした顔をした。
相変わらずコロコロ表情がよく変わるなぁ。
「……よくわからないけど、たぶんそうなんじゃないかな」
「何て言う事にゃっ!にゃーは何て危ない奴と一緒にいたにゃ!」
「危ないって、そんなに?」
僕がそう尋ねると、キャットの代わりに……えーと、なんだっけ?えーっと、【お菓子】リョウだっけ?が答えた。
「野良転生者は言うなれば、核爆弾が服を着て歩いているような存在……って言ったら、転生者の君には伝わるかな?」
「なるほど、それは危ないね」
「そう、だから君は抹殺しなきゃならない」
そう言って彼は満面の笑みでそう言った。
「なるほどね、ただドッキリの為だけに、釣りあげたってわけじゃないと思ったけど……なるほどね…………ちょっと物騒じゃない?」
「物騒で結構。これが異世界だ」
そう言って彼は、右手で髪をかき上げた。
「ま、この世界に転生したことを呪ったらいいよ」
僕とリュウがそんな話をしていた時だった。
視界の端で動く影が。
「おや?どこに行くんだい子猫ちゃん?」
「にゃ、にゃーは関係ないから、ちょっと離れてようかなーって」
そう言ってキャットは引きつった笑みを浮かべながら、後ずさっていた。
「そうかそうか……けど、ごめん!君も、抹殺対象だよ?」
「勘弁してくれにゃーー!!」
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