24.狐娘、民衆の前へ
ザワザワと周囲が賑わっていくのが嫌でもわかる。もちろん視線の先は私達。
「あそこにいるの姫様じゃないか?」
「じゃあ、隣にいるのは第二王女様と……あと獣人の子?」
「お、おれ見てたよ! あの獣人の女の子が変な杖を持って瘴気を消したのを!」
「えっ、じゃあ新たな聖女様ってこと? でもそんな話聞いたこともないけど」
「そういえば瘴気の山が浄化された時神様が降りてきたとか噂を聞いたことあるぞ……」
「まさか……でもあの白銀の姿どこか神々しくない?」
勝手な推測がどんどんと膨らみ異様な雰囲気になりつつある気がする。キョロキョロと困ったように周囲を見渡すも誰しもがこっちを見ており、好奇な視線から物色するような目線、中には拝んでいるような人もいるけどそれは気が早すぎないか。
「……これはそのまま放置は出来なさそうですね」
「いかがいたしましょうか? 護衛に囲いを作って戻ることも可能ですが」
リベリカの言葉にリティアは首を横に振った。
「何も言わずに去ってしまうとあることないこと広まってしまうと思いますし……ナコさん少しだけ私に合わせて頂けますか?」
「え、あ、うん……?」
彼女はそう言うと私達より一歩前に出て民衆の前で美しく礼をしてから口を開いた。
「フィオレンティア王国第一王女リティアです。皆さん、この度この広場にて起こったことは間違いなく瘴気が原因でした」
ザワ、と民衆に動揺が走る。リティアが断言したことでまた以前の恐怖を思い出したものもいるようだ。しかし彼女はすぐに問題なく解決したことを続けて伝えて民衆を落ち着かせた。
子供っぽい一面も見たことはあるがこうして凛とした態度で声を出す姿は大人顔負けで、本当に人生一週目なのかと疑ってしまうほどだ。
「王国としてなぜこのようなことが起こったのか原因は必ず究明します。また、恐らく皆さんの気になっているこちらの方ですが……」
彼女は噴水事件のことはそう締めて、今度は私を見る。視線で促されるままに前に出た。一体彼女は何を言うつもりなのだろうか?
「こちらの方はナコ様と申します。普段は旅をしながら各地の瘴気を浄化している尊いお方です」
「へっ?」
まさかのでっち上げであった。呆気に取られているとそのまま話が続く。
「1ヶ月前、彼女はこの国の危機に偶然立ち合い私達に助太刀をしてくださいました。ただ彼女自身あまり目立ちたくないとのことなのであまり詮索はしないようにお願いします。また、この噴水広場はしばらく立ち入りが制限されますので、兵士の方の言葉に従って慌てず退避してください」
彼女がそう言うと控えていた兵士たちがテキパキと誘導を始める。リティア自身の人徳か民衆は素直に従うものの、何人か子供が「耳を触りたい!」と言っているような気がしたが、今は聞かなかったことにする。
「ふぅ……すみません、あの場を収めるにはどうしても説明が必要かと思ったのですが勝手にナコさんの境遇を作ってしまい」
「いやいや、大丈夫! それにしてもリティアって演説みたいなの慣れてるよねぇ。私なんかただの打ち合わせでも緊張して碌に喋れないのに」
「打ち合わせ?」
「あ、いや、こっちの話」
不意に日本での嫌な記憶が戻ってきてちょっとテンションが落ちる。今はもう気にしなくていいものなのに。
「とにかく一度戻りましょうか。お父様含め報告もしなくてはなりませんし」
「すぐに馬車を手配してきます」
リベリカさんはそう言って離れる。残念ながら散策はこれにて終了らしくミリナも文句こそ言わないが少し悲しそうであった。
「お城に帰ったら遊ぼうか。せっかく時間あるんだし」
「ほんと!? いいの!?」
「うん。こっちの遊びは知らないから教えて貰わないとだけど」
「やったぁ!」
何か心苦しかったので思わずそう提案していた。おかげでミリナちゃんの顔が明るくなったからよしとしよう。そしてしばらく待っていたら山からこの国に来た時と同じ馬車とリベリカさんがやってきた。
「どうぞ皆さまお乗りください」
行きの馬車では一般人を装ったためリベリカさんも乗ったが流石に今回はリベリカさんは同乗できないらしい。エスコートして乗せてもらうと最後に彼女は小さな箱を手渡してきた。
「これは?」
「すみません、クレープではないのですが屋台で売っていたので買ってきました」
開けてみると中にはシュークリームのような生菓子が入っていた。な、なんて気の利く人なんだろう……!
「まぁ、ありがとうリベリカ!」
「とんでもないです。どうぞ、馬車の中でお楽しみください」
「あ、あのリベリカ……!」
そんなリベリカさんに声をかけたのはミリナちゃんだった。彼女から声がかかるのは意外だったのか少し呆気に取られている彼女にたどたどしく言葉を紡ぐ。
「あのね、あの時我が儘言ってごめんなさい……それに前からねーさま取られるって思って無視したりしてごめんなさい……」
その言葉を聞いたリベリカさんはすぐに微笑んだ。
「お気になさらないでください。姫様もミリナ様も守るのが私の役目ですから。それに実際に寂しくさせていたことも事実。ですから、これからは寂しいと思った時は我慢せずお伝えください」
「う、うん……!」
「それとお菓子の感想もあとで教えてくださいね。それで今までの分はおあいこにしましょう」
「うん!」
よかったと胸を撫でおろすリティアと何だか勝手に感動している私。結局あまり散策らしいことはできなかったし、割と人の目についちゃったけど、神楽鈴の使い方とかミリナちゃんとリベリカさんの仲もよくなったし、今回はそれでよしとしよう!
そう思い、お城までの道中は馬車の中でお菓子を食べながら楽しい時間を過ごした。
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