18.朝食と話し合い
神社でのご飯を除けば異世界に来て初めて朝食をとる。どれだけ日本との文化の違いがあるのか気にはなっていたが幸いにもとんでもない料理が出てくることはなかった。
「おおっ、おいしそう!」
ふわふわの白パンに小ぶりのソーセージとベーコンにオムレツ、サラダは瑞々しいトマトと葉野菜にソースがかけられ輝き、スープは透き通っているがコンソメスープだろうか。そしてデザートはフルーツの盛り合わせが用意されている。
泊まったことはないけど高級ホテルとかの朝食なんかはこういう感じなんだろうかと思う。
(今はお腹が空いている状態だけど毎日これはきついかもなぁ)
社会人の頃は朝は食べずコーヒーだけ飲んでたのでそんな贅沢なことを考える。
ただクリシュナ様に関してはまだ病み上がりのためかパン粥やフルーツをすり潰したものなど体に負担をかけないものが多いようだ。
「お飲み物はいかがいたしましょうか?」
使用人にそう尋ねられるも何があるのかわからないのでリティアに助けてと視線を送る。流石に察しがいい彼女はすぐに反応する。
「用意できるのはハーブティ、フルーツジュース、ミルク、紅茶などでしょうか。お好きな物を頼んでくださいね」
「ミリナはミルク!」
元気良い妹の声に場が和む。そのまま流れに乗ってフルーツジュースにした。何か高級そうだからという理由で。
「ではいただきましょうか」
女王様の一声で食事が始まる。どうやら「いただきます」という言葉はないようで、皆何かに祈るような仕草をしてから食べ始めた。「郷に入っては郷に従え」というし、私も適当に祈るふりをしてパンを口に運ぶ。
「う──」
思わず「うまいっ!」と叫びそうになり耐えた。この高級感あふれる場に相応しくない言葉を我慢したのは正直に偉いと思う。
「す、すごく美味しいよ!」
「お口にあったようでよかったです。もし足りないものがあったら言ってくださいね」
これだけ美味しければお腹いっぱいになっても食べ過ぎてしまいそうだ。リティアは私の向かいに座り上品な所作で食べており、ミリナは時々クリシュナ様に甲斐甲斐しく世話を焼かれながら元気いっぱいに朝食を食べている。
ふと、そんな彼女らを見るリティアの瞳が微笑ましいものを見るようでそれでいて少し悲しそうな、なんだか色んな感情が入り混じった目をしていることに気づき疑問に思う。
「……どうしましたか?」
それが気になってジロジロと見過ぎてしまったかパチリと目があってしまい、私は慌ててオムレツを口に運んで誤魔化した。
「いや、オムレツ美味しすぎてびっくりしてた」
「まぁ……料理長にも伝えるように言っておきますね。きっと喜ぶと思います」
そういって微笑む姿はいつものリティアに戻っていたので私も気にせず食事を勧める。そこからはまた賑やかな朝食の時間が過ぎていき、私は椅子の背もたれに身を任せ満腹感を存分に味わっていた。
「た、食べたなぁ……」
貧乏性の私は追加でどうですかと言われると断れない。そのおかげで今はお腹がポッコリだ。食後にストレートティーをお願いしてから、ちょっと場が落ち着いたころ、クリシュナ様が話を切り出した。
「さて、それじゃあ少しお話をしましょうか。たぶんそろそろ来る頃だと思うけど」
クリシュナ様がそう言うとちょうど扉が開いた。そこから現れたのは彼女らの父であるギレン王だった。
「すまない、ちょっと政務が立て込んでいてな。ああ、紅茶を一杯頼む」
彼は使用人にそう指示してクリシュナ様の横に座るとミリナがはしゃいで彼の膝にのる。彼女が落ちないように腕を回しながら彼は切り出した。
「で? どこまで話したんだ?」
「貴方が来るのを待っていたからまだ何も話していないわよ」
「そうか……」
完全に蚊帳の外の私だったが、彼は姿勢を正すと私に向けて頭を下げてきた……!?
「まずナコ殿、ちゃんとした礼も出来ておらず申し訳なかった。多忙の身というのは言い訳でしかないのだが、この場を借りてもう一度お礼を申し上げたい」
「えっ、いや、私はそんな、たいしたことは……」
「国だけじゃなく家族のことを救ってくれたのだ。謙遜されずともよい。そこでだ、ただ礼だけで済ますわけにもいかないから、お礼の形として褒賞を受け取って欲しいのだが」
褒賞……?と首を傾げる。
「出来る限り望むものを用意させて頂く故、何でもいって欲しい」
「そう言われても特に欲しいものは今は浮かばないんですが……」
困ったようにそう言うとギレン王は少し考えて提案してくる。
「わかりやすく言えば金銭でもいいし、この王都に家が欲しいなら用意もするし、王城に私室を設けるのも構わない。何なら領地が欲しければ割り当てることも出来るが」
「りょ、領地!? いらないよそれは!」
領地なんてもらったところで持て余すに決まっている。ああいうのは経営のノウハウがないとまず無理だし住んでいる住人に迷惑をかけまくるに決まっている。流石にシミュレーションゲームとは違うことは理解しているので断った。
(かといってお金や家も別になぁ……)
あって困るというものではないが、神社に戻ればお金も家の心配も不要だし喉から手が出る程……というわけじゃない。仮に働いていた時だったら四の五の言わずにお金を欲しがっただろうけど。
「えーっと別にいらないっていう解答は困ります?」
「恩をそのままにしておくのは王家としてはよくないのだが、ナコ殿がそれを望むならそのように取り計らおう」
「ナコさんは謙虚ですね……さすが神様の御使い様です……」
どこかウットリとした目でリティアが勘違いしていたが単純にこういうのに慣れていないだけだ。結局、話し合った結果貸し一つとして残しておくということで一旦決着した。
「さて、それともう一つ。ナコ殿のことを大々的に公表するかどうかについても決めたいのだが」
「え、公表?」
そしてまだ話し合うことは残っているらしい。
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