女王を探して
ゴブリンがラングレー側に襲撃を仕掛けた。
ドリーズからの報告でかなり驚いた。
「何処にも居ないと思ったら
まさか、ラングレー側とは。
こちらに来てくれていれば
かなり楽だったというのに
本当に厄介ですわね!」
「だな」
過剰戦力である俺達がいる
ギルフェリー側に
その本隊が来てくれていれば
何の問題も無く対処し、対応出来ていた。
だが、よりにもよって襲撃を仕掛けたのが
戦力が一番薄いラングレー側だとはな。
フェイトって実は不幸体質なんじゃね?
「じゃあ、俺達は急ぐからな。
お前達はゆっくりと警戒しながら来てくれ。
くだらない事で戦力を失うのは困るだろ?」
「いえ、しかし」
「何、イレギュラーに対処なんざどうにでもなる」
「え? きゃう!」
俺達の前に周囲の木々を吹き飛ばしながら
1匹のドラゴンが降下してきた。
「お、連れてってくれるのか?」
「がう!」
ドラゴンはこちらに背を向けて
乗れと、暗に伝えてきてくれた。
「じゃ、行くか。警戒を怠らないでくれよ?」
「分かりましたわ、マグナ様」
俺達はドラゴンの背に乗り、飛び立つ。
あまり距離は無いようで、
すぐに戦闘をしてる場所が見えた。
あそこの前線に行っても良いが
俺達のやるべき事は女王の捜索だろう。
で、あそこが蛇の道だな、騎士達がよく見える。
そして、また結構な数の白ゴブリンが居るな。
とは言え、白ゴブリンは目立つからな。
大体が即座に小さいドラゴンに攻撃されたり
大きなドラゴンに攻撃をされたりしてる。
ヤベ、1個岩が歩降り投げられた。
だが、そこは大丈夫そうだ。
ドリーズが凄い速度で飛んで行ってる。
っと、こっちにも岩が飛んで来たな。
しかも、全方位から。
「シルフ」
「ん」
だがまぁ、俺達がいる以上ドラゴンは落とせない。
シルフが展開したであろう防御の魔法は
即座にその岩を防ぎ、空中で粉々に砕けた。
そんで、シルフが放った氷の槍が
白ゴブリン達の頭を破壊して撃破する。
「流石!」
「これ位は余裕……えへへ」
少し嬉しそうにシルフが笑ってみせる。
俺はそんなシルフの頭を笑顔で撫でた。
やっぱり可愛いな、俺の妹は。
「ふむ、マグナよ」
「おぅ、どうしたドリーズ」
「これは少し面倒な事になったと言えるのぅ。
まさか本隊がラングレー側に向うとは」
「だな、どうする? 作戦変更して
出来るだけ速攻で潰すか?」
「いや、ラングレー側を見てきたわけじゃが
どうやら、何とかシャナとフェイトで対処が出来ておる。
問題が見えないゴブリン。あいつらを看破できるのは
現状ではシャナだけのようじゃ」
「シャナだけじゃ、流石に厄介そうだよな」
「うむ、あやつは強いが、全域のカバーは困難じゃ。
じゃが、あやつらは総じてシャナ達を狙っておる。
その為、儂はマジックゴブリンを優先的に排除する。
白ゴブリンも儂と部下が対処しよう。
じゃから、お主らは女王を探して欲しい」
「あぁ、そのつもりだ。仕留めるのはやっぱ無しだよな?」
「うむ、何かしらの方法で教えて欲しいのじゃ」
「分かった、じゃ、そろそろ降りるかな」
「うむ」
俺達のやることは女王の探索って奴だな。
とにかく探してみることにするか。
地上に降りてこの森の中を探し続けるのは
いくらか面倒くさい気もするが、まぁやるしか無いだろう。
「っし、探すか」
「ん」
俺達は地上に降りて、森の探索を開始した。
何体かゴブリンが俺達に反応してきたわけだが
俺達としても対処は何の問題も無かった。
だが、あまり大規模な攻撃は避けて撃破する。
あまり派手にやり過ぎると女王に勘付かれて
さっさと逃げられる可能性が大いにあるからな。
とにかくだ、ゴブリン達の防衛が多い場所を探す。
不自然に配置されたゴブリンを辿っていく。
無意味な場所、戦略的に必要無い場所のゴブリンだ。
そのゴブリンを探していって、撃破しながら進む。
そして、少しだけ気付いた気がする。
これ、扇状に展開されてる気がするな。
つまりは背後ががら空きなのだ。
本隊のボスが居るのだとすればだ
扇状の一番端っこ、そうだなぁ
扇の持つ場所に居る可能性があるだろう。
まぁ、こんな森の中だから
正確にゴブリンが展開できてる保証は無いが
手当たり次第よりはマシじゃねぇかな。
「恐らくこっち側に、お?」
「ぎぎ、ぎぃ!」
「攻めてきてた……
ドラゴン共は?」
「ぎぎ! ぎぃ、ぎぎぎ!」
「ホワイトゴブリン狙い、他?」
「ギギ!」
「ドラゴン娘、マジックゴブリンを。
……ドラゴンの女王、何で攻撃を。
あのお方から力を貰ったのに、不敬な奴」
あのお方ってのは何だ? 良く分かんねぇな。
まぁいいや、恐らくあれが女王だろう。
「シルフ」
「ん」
俺の言葉の意図が分かったシルフが
地面に巨大な氷の柱を呼び出した。
「な!?」
ゴブリンの女王がその氷の柱に気付き
こちらに向けて、焦りの表情を向けてくる。
ふむ、緑色の肌にほぼ全裸の格好か。
ほぼ布切れだ、ゴブリンらしい格好だな。
とは言え、一応女の子という自覚があるのか
腰巻きと胸当りにちゃんと布があった。
瞳の色は良くは見えないんだが
かなり濁ってるように見える。
そう、まるで死人のようにな。
スタイルはかなり抜群と言えるな。
身長もフェイトよりも高いし
何なら、シャナ以上の長身と言えるだろう。
髪の毛は黒いロングヘアーだな。
しかし、あのグラマラスな体格で
あの布切れはちょっとスケベな格好だな。
てか、お洒落なんて興味なさげな姿だが
胸元に紫色の宝石みたいな物が見えた。
何だ? あのよく分かんねぇ結晶か宝石は。
「人間……男!?」
「ぎぎ!」
俺の姿に気付いたゴブリンがこちらにやって来た。
茶色いゴブリンだが、俺はそいつを殴って撃破。
「ぎぃ!」
炎のような玉が俺に向って飛んで来たが
俺はその玉を軽く弾いて消した。
「ぎがぁ!」
赤いゴブリンが全力で振ってきた拳を
俺は人差し指で止めてみる。
「まぁ、焦るなよ」
「ぎゃぎ!」
そのまま、赤いゴブリンを小突いて消した。
「な……」
「よぅ、お前がゴブリンの女王様で良いか?」
「貴様……私の夫、なれ!」
「え? 何で?」
「強いオス! 強いオスの子を宿して
より強い女王を生む! そして支配する!
あの方に言われた様に、世界を!
お前も世界、支配する!」
「いやぁ、俺は世界の支配って興味ねぇんだ。
そりゃ? 俺が本気を出せば?
世界程度なら支配できるのかも知れねぇが
そんな世界の管理者とか? 支配者とか?
俺は窮屈でしょうがねぇからな。
ま、好きなように生きるってのが一番だ。
支配なんてしたって、面倒くさいだけだろ」
「関係無い、支配、する! お前の子、生む!」
ゴブリンの女王が大きな武器を取り出し
こちらに向かって飛びかかってきた。
「私の物! お前、私の夫!」
「いやだなぁ、俺は誰の物でもねぇぜ?」
「ふん!」
「ぎ!」
飛びかかってきたゴブリンの女王に飛びかかる影。
不意の攻撃だっただろうが、ゴブリンの女王は
その攻撃に反応して武器で防ぐ。
しかし、女王の武器はあっさりと砕かれ
ゴブリンの女王は吹き飛ばされていく。
そして、ゴブリンの女王の前にドリーズが立った。
「ドラゴン娘……」
「ゴブリンの女王、ようやく見付けたのじゃ」
明らかな殺気を放ちながら、ドリーズが
ゴブリンの女王を睨み付けた。
女王同士の戦いか……俺はただ見るだけにしよう。




