道中のモンスターを蹴散らしながら国に帰ることにする
来た道を戻るモミジたち。来た時に載せてくれた隊商に、今度も載せていってもらうことになった。前に助けてくれたお礼と、用心棒も兼ねてもらうということでタダで乗せてもらう。
しかし、ここで小さな問題が発生した。
「馬車の空席は4つ。私とコロンちゃん、シャウラちゃん、そして元四天王の3人で合計6席必要。さて、どうしたものかな」
「モミジ殿、私は索敵のために屋根の上に載っていますのでご心配なく」
シャウラが軽い身のこなしで馬車の屋根に飛び乗る。残りは5人。
「はい、ここで私から提案があります。コロンちゃん、私の膝の上に座るのはどう?」
「え、いいのですかモミジ様!?」
「もちろん、私の膝の上はいつでもコロンちゃん専用席だよ」
「わーい! では、お邪魔しますね!」
コロンが嬉しそうにモミジの膝の上にぴょんと乗る。モミジが優しくコロンの頭をなでる。
「ふふ、仲の良いことだ」
モミジとコロンの様子を見て、四天王をまとめていた青年も微笑んでいた。
こうして、馬車は出発する。
ゴブリンがいた荒野は既に平和になっていた。ゴブリンの残党狩り部隊が編成され、ゴブリンはほぼ全滅したという。
全く居ないわけではないが、人間を襲うことはまずない。
「モミジ殿、良ければ旅の間、モミジ殿が元居た世界についての話を聞かせてください」
「あ、私も聞きたいです!」
「いいよ、まずあの世界ではね、魔法というものがなくて、代わりに科学技術というものが発展していて……」
馬車に揺られながら、モミジはたくさん元の世界での思い出を語る。この世界の住人からすれば信じられないような話の数々に、コロンとシャウラは夢中で聞き入っていた。
夕方。馬車を止め、夕食の準備をみんなで始める。料理が得意だという元四天王の老紳士と若い女がシチューを作っている。
「獲ってきました、こちらの鳥の肉も入れましょう!」
狩りに出ていたシャウラが、鶏のような鳥を背負って戻ってきた。ただし大きさはダチョウほどあり、尻から尻尾の代わりに蛇が生えている。
それを見て元四天王の青年が驚いて尻もちをつく。
「そ、その鳥はもしかして指定危険モンスター、コカトリスではないか!? 話は聞いたことがある。まず目から相手を石化させる光線を放ち……」
「ああ、撃ってきますねそんなもの。視線をしっかり観察すれば、避けるのはさほど難しくはないのですよ」
青年は頭を手で押さえる。
この世界について勉強するために冒険者ギルドに何度か訪れたとき、その危険性を何度も何度も聞かされた。「歴戦の冒険者が何人も倒されている。絶対に近寄るな」と。
「……コカトリスは馬より足が速いと聞くが、どうやって近づいたんだ?」
「走って追いつきました」
「走って!?」
青年はため息をつく。
「そしてこのモンスター、石化や足が速いやらよりももっと大事な特性があるのです」
「もっと重要性な特性だと……?」
いつの間にかコカトリスを捕まえたと聞いて隊商のメンバーも周りに集まってきていた。その場にいる全員が息をのむ。
「ええ。最も大事な特性、それは……肉が美味なことです! 特に発達したモモはもう絶品! 一度食べたらやみつきに……」
シャウラの話を、元四天王の青年は呆れながら聞いていた。
「ただいまー! あれ、なんかみんな集まってる?」
そこへ、モミジが帰ってくる。
巨大なモンスターを引きずりながら。
姿は水牛に似ている。だが、その大きさは比べ物にならず、もはや象に近い。頭の左右に生える角は、馬の首よりも太く逞しい。
「「――!!」」
その場にいた全員が言葉を失った。シャウラとコロン以外は。
「おお、流石モミジ殿! 我が一族が総出で掛かってやっと倒せる”グランドバッファロー”をお一人で倒すとは! お見事です」
「モミジ様、凄いです! これで今日の夜はおなか一杯お肉が食べられますね!」
元四天王の青年が呆れながら言葉を絞り出す。
「な、何故これほどの強敵を倒したんだ? モンスターのほうから襲ってきたわけでもないだろうに」
「なんでってそりゃ、牛肉が食べたい気分だったから」
元四天王の青年は、頭を抱える。モミジの規格外の強さに、まじめに考えるのも馬鹿らしくなってきたのだ。
そして同時に、こうも思った。
(戦う前に降伏しておいて、本っっっっっっ当に良かった!)
と。
お読みいただきありがとうございます!
申し訳ないことに前回から少し間が空いてしまいました。
プライベートの方で用事がいろいろと重なってしまい執筆速度は落ちますが、エタらずに書き続けていきたいと思います。
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