激レア種族の獣人は話を聞かない
「決闘って……なんで?」
「あれは2日前、貴殿ら異世界人が召喚された日のことだ。我が銀狼一族の村は、仮面を付けた異世界人に襲われた」
銀狼の獣人シャウラが語り始める。
「村の戦士は皆勇敢に戦ったが、誰一人かすり傷さえつけることができず重傷を負い、敗北した。負けていないのは、その時狩りに出ていた私1人だけだ」
決意を秘めた目でモミジを見据える。
「私には村の最後の戦士として、その異世界人を倒し、一族の誇りを取り戻す義務がある! 故に貴殿に! 決闘を申し込――!」
「いや、人違いっす。私そんな強盗みたいなマネしてない。ホラ、仮面だって付けてないし」
モミジが顔の前で手を振って否定する。
「仮面以外になにかその異世界人の特徴とか聞いてないの? 能力とか」
「うーむ、そういえば聞き忘れたな」
モミジとコロンが呆れた顔をする。
この短い会話の中で、2人とも理解していた。
(銀狼の獣人って身体能力が高い代わりに頭は良くないんだな)と。
「そうだ思い出した! 1つだけ言っていたぞ。その異世界人は”この村に伝わるアーティファクトを差し出せ”と言っていたらしい。私の村にはそんなものはなかったので、異世界人の見当違いだったようだがな。つまりその異世界人はアーティファクトを探しているということだ。貴殿はアーティファクトを欲しがっているか?」
「そりゃくれるなら欲しいけど……」
「ならば怪しい! 斬る!」
シャウラが刀を抜いて切っ先をモミジに突き付ける。
「んな無茶苦茶な」
「モミジ様、どう説明したところで無実は証明できるものではありませんし、話し合いは無理そうです。こうなったら戦うしかないかと。大丈夫です、モミジ様が負けるはずありません!」
コロンが輝きに満ちた目でモミジを見る。
「そうだ! タイラントアリゲーターを一撃で仕留めたお嬢ちゃんなら銀狼の獣人だろうがイチコロよ!」
「俺もお嬢ちゃんが勝つほうに賭けるぜ!」
周りの野次馬もモミジが勝つと考えているらしい。
「仕方ない、一丁やるとしますか。シャウラちゃん、その勝負受けて立つよ! ただし、街中じゃ危ない。場所を変えよう」
3人は街の外れにある森の中へ移動した。周りに人の気配もない。まさに決闘するのにうってつけと言えた。
モミジが普段リュックサックにしまっているクレハの盾を取り出し、戦闘態勢に入っている。
リュックサックを預かっているコロンは広場の隅で見守っている。
「あらためて名乗らせてもらう。私は銀狼一族、ヒヒバ家のシャウラ」
「ええと、私は綾崎家の長女、紅葉。モミジと呼んでほしい」
シャウラが刀を抜く。モミジは左手で盾を、右手で拳を構える。
「「いざ尋常に、勝負!」」
決闘の火ぶたが切って落とされた。
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