毛玉
程なくして影虎は萌葱の所に辿り着いた。
そこには萌葱とリトテと……謎の艶めいた白色の毛玉が居た。
その毛玉はもぞもぞと蠢いており、萌葱の肩に乗っていた。
大きさは赤子くらいである。
「か、影虎君! やっと来てくれたか! これ何か分かる?」
「さっぱり分かりません」
影虎が今の状況をまるで理解出来ずに萌葱にそう返すと、萌葱はこう説明した。
「エルさんの卵からこれが出てきたんだよ! でも何の生き物なのか全く分からなくて……エルさんと付き合いの長い影虎君かミコモちゃんなら知ってるかなと思って呼んだんだけど、影虎君に心当たりは無かったか……」
「すみません……でもあいつなら何か知っているかもしれませんね」
「そうだね……とりあえず影虎君この毛玉重いから持って」
「ええっ!?」
影虎は萌葱に毛玉を強引に押し付けられる。
毛玉を影虎が受け取ると、毛玉は影虎の腕に掴まってきた。
どうやら小さい腕が四つ生えているようだ。
もふもふとした触感が伝わってくる。
「……うっ、重い……早くミコモを呼びましょう萌葱さん……」
「もう呼んでおいたから大丈夫……はやく来てくれミコモーーーっ!」
「某気○斬使いじゃないんですから……」
そんな風にミコモの到着を待っていると、ミコモが慌ててやって来た。
「はあっ、はあっ……何があったのよモエギ……」
「エルさんの卵からこれが生まれたの。ミコモちゃん心当たりない?」
「え……? 何よそれ……分からないわ」
「そう……」
気を落とす三人。
そんな三人にミコモがこう言った。
「とりあえずこの生き物が何を食べるのか調べた方がいいと思うわ」
「確かに……じゃあリトテ、何か食べ物出してよ」
「了解っす! ーーー貿易!」
リトテは貿易で肉と野菜を出した。
「これで肉食性か草食性か雑食性か分かるっすよ」
「なるほど、なら早速あげてみようぜ」
影虎はまず肉を毛玉の前に差し出した。
すると毛玉はのそのそと動き、肉を咀嚼する。
「食ったな……他にもあげてみよう」
影虎は更に野菜を差し出す。
因みにリトテが出した野菜は柔らかい葉物だ。
毛玉は肉を齧るのを止めて野菜の方に近寄り、むしゃむしゃと食べた。
「雑食性だけど結構草食性の方が強いみたいだな……」
「本当になんなのかしらこれ……まあでも育てられるんなら良かったわ」
毛玉の食べる様子を見てミコモはそう安心した。
そして影虎が毛玉を撫でながら皆に言う。
「なあ、こいつに名前付けようぜ」
「ああ確かに。ずっと毛玉とか呼ぶのもアレだしね……何にしようか。ミケとか?」
「萌葱さん、この毛玉は猫じゃないんですから。というかこの毛玉何か普通の毛とは
肌触りが違うな。何かスベスベしてるような……」
「影虎君、人のネーミングにケチを付けるくらいなら影虎君も考えてよ……毛玉撫でていないで……」
「分かりましたよ……う~ん」
四人は首を捻って毛玉の名前を考える。
「シラユキってどう? この子白いし」
「おおーミコモ、お前らしからぬいい名前じゃん」
「モチスケというのはどうでしょう兄貴!」
「う~ん女の子かもしれんぞ? この毛玉」
「ホクロ」
「ん? 萌葱さん今何て?」
「ホクロ……」
「「「……………」」」
三人は萌葱のカオスなネーミングに固まってしまった。
「あの……萌葱さん、何でその名前を?」
「し……白と対照的でいいかなって……」
「じゃあかっこいいしシラユキでどうだ、お前ら」
「賛成よ」
「オレも賛成っす」
「スルーしないでよ!」
そう叫ぶ萌葱を無視して毛玉にシラユキと命名する三人。
かくして、毛玉ことシラユキが爆誕した。
これが何であるかはまるで不明だったが……。
*
*
*
所は変わって玉座の間にて。
メコル王国兵士長ロックが王に召集されていた。
「国王様……何用で御座いますか!?」
「おおロックよ。急用ではないのじゃ、そう焦るな」
「申し訳ありません!」
「別によい。今お主をここに呼んだのはカゲトラ殿の事じゃ」
「カゲトラ殿の……何かおありで御座いますか?」
「いや、そうではなくカゲトラ殿の強さの事じゃ」
「ははあ……そうですな……」
ロックはしばしの間考えた後、王にこう言った。
「剣術を初めて一ヶ月かそこらには到底思えない剣捌きでしたな。余程厳しい修行を積まれたのでしょう」
「成程、他にはあるか?」
「それが……少し焦りが見られますな」
「詳しく申せ」
王がそう促すと、ロックは心苦しそうに申し上げる。
「私が修行の際、これなら見切るだろうと放った技を避けられなかったのです。そして見た所ひどく霊力を消耗しておられるようでした。もしやカゲトラ殿は激しい霊術の修行などをした後に私の修行を受けたのではないでしょうか。そんな状態で修行しようものなら普通は倒れてしまいますな。おそらく早く強くなる為にそのような事をしたのでは無いかと。それほど焦っておられるご様子でござった」
「う~む……そんな事が……ロックよ、カゲトラ殿が仲間が亡くなってしまい焦るのは
分かるが倒れてしまっては意味が無い。師匠として言っておいてくれるか」
「はっ! 必ずや!」
「では、戻るがよい。頼んだぞ……」
そうしてロックは玉座の間を後にした。
(ああは言ったものの……どうすれば、カゲトラ殿を説得出来るのだ……! つい最近仲間がお亡くなりになったばかりだと言うのに……!)
大きな苦悩を抱えながら。




