兵士長
「ふう……みっちり修行させられた所為で疲れたぜ……でもこれはいい疲れだ……」
影虎は自室のベッドに寝転がって体を休めていた。
「まだ昼だし、もうちょっと休憩して昼飯を食べたら剣術を兵士の誰かに剣術を教えて貰い
に行くか……」
影虎はそうこれからの方針を決め、体の力を抜いた。
*
*
*
そして影虎は昼食を食べ王に兵士の誰かに稽古をつけて欲しいと頼むと、なんとメコル王国の兵士長が影虎の剣術を見る事になった。
場所は先程の訓練場である。
「マジかよ……この国の兵士長ってどんな人なんだろう……」
影虎は訓練場で兵士長を待ちながらそう思案に耽っていると、訓練場の扉が勢いよく叩かれる。
「失礼致す!」
「おっ、来た」
影虎はまるで武士みたいな言葉遣いだなと思いつつも扉の方に注目した。
扉がバン! と開けられ、一人の大柄な男が入って来た。
その男は黒色の鎧を着ており、筋骨隆々であった。
顔にはいくつか傷跡があり強面である。
年は40代後半くらいか。
「あなたが翳の勇者殿か! 某はメコル王国兵士長ロックと申します!」
「俺の名前は尾野影虎です。カゲトラと呼んで下さい。こちらこそよろしくお願いします」
二人はそう自己紹介をして握手を交した。
するとロックが力強い声で言う。
「カゲトラ殿の剣術の指導が出来る事を光栄に思いますぞ! では早速、カゲトラ殿の実力を測らせて頂きたい! 某と模擬戦を致しましょう! 武器はあちらの刃のない剣を使いますぞ」
「分かりました」
二人はそれぞれに合った刃のない武器を取る。
影虎は刀に近いレイピア、ロックはオーソドックスなロングソードを選んだ。
「それでは……始めっ!」
ロックがそう戦闘開始を宣言すると同時に影虎の間合いにまで距離を詰めて来た。
影虎は慌てる事なく落ち着いて素早く後方に下がる。
「つあっ!」
下がる影虎に更に距離を詰めて剣を振りかぶる。
影虎はそれを体をずらして紙一重の差で回避し、反撃をする。
「………飛燕突き!」
高速で放たれた突きがロックの体を突こうとするが。
「打ち払い!」
「うおっ!」
ロックの剣により弾かれてしまう。
「今の一撃……素晴らしいですな……まだまだ行きますぞ! ………霧双斬!」
「こ、この技は……! ………霧双突き!」
影虎は見覚えのあるその技に驚きつつも霧双突きを放ち技を相殺する。
「カゲトラ殿は“翳牙”を習得しておられるのですかな?」
「それって……先代勇者の技の事ですか? 師匠からは何の流派なのか言われなかったんですよ」
「左様で。“翳牙”は先代勇者の方々が編み出した剣技ですぞ」
「成程……俺のも多分それです」
影虎は先代勇者の剣術の名前は“翳牙”というのか、と感心した。
「さてお話は程々に次はこれですぞ! これは某の奥の手……カゲトラ殿に見切る事が出来ますかな? ………明日葉突き!!!」
ロックは空に剣を振り回す。
影虎はロックの行動の真意が理解できずにそのままロックに間合いを詰める。
その瞬間。
影虎の体に、殴られたような衝撃が襲い掛かった―――
*
*
*
「―――カゲトラ殿! 大丈夫でござるか!?」
「うっ……大丈夫です」
影虎は辺りを見回し、自分はどうやらロックの技を食らって気絶したらしいと推測した。
「ほっ……それなら良かったですぞ。しかしカゲトラ殿、相手が不自然な動きをしたら警戒するべきですぞ」
「あっ……すみません……ところであの技は一体……」
影虎がそう聞くと、ロックは少し誇るように言った。
「あの技は某の技、明日葉突き……斬撃を空中に残す事が出来る技なのですぞ」
「とんでもない技ですね……是非教えて下さい!」
「こ、これは某の企業秘密でござる!」
「そうですか……残念……」
影虎はロックの言葉に肩を落とす。
ロックはそんな影虎を励ます。
「カゲトラ殿もいずれ自分だけの技が出来る日が来ますぞ」
「本当ですか!? ありがとうございます」
そんな風に影虎がロックと修行していると。
「翳の勇者様! 巽の勇者様がお呼びです!」
使用人が慌てた様子で訓練場に入って来た。
「俺を呼ぶとは……萌葱さんに何かあったんですか……?」
「それは分からないのですが巽の勇者様は慌てたご様子で翳の勇者様を呼んで欲しいと……」
「………とりあえず萌葱さんの所に向かいますね。ロックさん、申し訳ありません、
修行の途中なのに抜けてしまって……」
「別に構いませぬ。いつでも修行に来てくだされ」
「はい!」
影虎はそうして萌葱の所に向かって走り出した。




