エルドレット&ミコモVSグレムリンその2
グレムリンは自分のおもちゃを自慢する子供のような表情で懐から紙飛行機を取り出し、投げた。
「それっ!」
紙飛行機は先ほどの比ではないスピードで飛んできた。
「くう……こんなに能力が上がるなんて……これが魔族の力……」
紙飛行機はエルドレットの金属鎧を貫通し、エルドレットの肉体に刺さっていた。
血がじわじわと滲み出てくる。
「そうさ……それでもボクはまだ新参者、中級魔族といってもそんなに力のある方じゃないんだ。驚いたか? 人族の中でもトップクラスのお前でもこんな他の魔族にからかわれるようなボクに苦戦するんだ。他の中級や上級の魔族ってのは本当に桁違いなんだよ?」
「嘘……でしょ?」
エルドレットが目を見開いてそう聞くと、グレムリンは頷き。
「なあに、全部本当の事だよ~。だからボクはたくさんの人族を地獄に飛ばして馬鹿にしてくる連中を脅かしてやろうと思ったんだ。それでこんな所に来たのさ。よかったね~キミだけいい情報が知れて。
まあ冥土の土産ってやつなんだけどね。キャハハハハ!」
「教えてくれてありがとう。まだ元気なんだけどね」
「え?」
エルドレットはグレムリンが得意顔になっている間にこっそりと呼吸を整えて回復薬を飲んでいた。
もちろん技を放つ用意は整っている。
「お食らいなさい。奥義………霧双突き!!!」
霧双突きは一人の相手に対し高速で無数の突きを浴びせる技である。
故に一対一ならば絶大な効力を発揮するこの技だが。
「キキキ……無意味だったねえ……」
「なっ!」
グレムリンは大量に紙飛行機を入れた服で顔を守った。
「キミのその金属鎧を貫けるんだ……こうやって防御にも使えるさ」
「ならこれならどう?奥義………飛燕突き!!!」
エルドレットは鮮やかな手足の捌きでグレムリンが紙飛行機でガードするよりも速く突いた。
「ぐあっ!まだこんな技を……技を撃たせないようにしないとな!ぶっ飛べ!」
グレムリンは紙飛行機を連続でエルドレットに投げる。
「ふふ……もう見切ったわ……さっきはちょっと油断しちゃったけど」
エルドレットはそれをひらりと蝶のように避け続ける。
魔力開放後のグレムリンの紙飛行機は時速二百キロメートルを超えるのだが、そんな事は我らがエルドレットにはあまり関係が無かった。
グレムリンは魔力開放という奥の手を使ったにも関わらず軽々と避けていくエルドレットに対して次第に苛立ちが込み上げ、そうして遂に堪忍袋の緒が切れた。
「これ以上付き合っていられるか! 紙飛行機を操作する魔力が切れる! もういい……持っている紙飛行機を全部まとめて投げてやる! 残りの魔力全てを使いきってなあ! お前等と戦ってると虫唾が走るんだよ!
低俗の分際でこのボクの紙飛行機を何度も何度も避けやがって!今度こそ地獄に送ってやるよ!」
そう叫んだグレムリンは魔力で紙飛行機を空中に浮かべた。
「さ~てまもなく発進しま~す。地獄行きの便! しっかりと遺言をお書きくださ~い。繰り返しお伝えしま~す。まもなく発進しま~す。地獄行きの便! しっかりと遺言をお書きくださ~い。……発進の準備が整いましたあ~それでは、発進致しま~す!!!」
グレムリンが数えきれない程の紙飛行機を二人に飛ばそうとしたその時。
「エル姉、準備が出来たから下がって!」
「遅かったじゃない。でもナイスタイミングよ!」
ミコモの霊術の演唱が終わった。
グレムリンはそれを聞いてもお構いなしに紙飛行機を飛ばした。
「それがそうした! お前らは地獄に着陸するんだよ! おらあ!」
「ーーー飛水龍哮」
二人に紙飛行機の猛威が振るわれんとする前にミコモがお札を掲げ唱えた。
ミコモの頭上に水で創られた龍が現れた。
体長はミコモの五倍はあるであろうその龍は顎を開き、さながらレーザーのような水のブレスを吐いた。
そのブレスは脅威の紙飛行機を全て押し流し、グレムリンにそのブレスの猛威を振るう。
「ぐ、ぐああああ! そんな、あんな低俗共ごときに、このボクがあ~~~!!」
龍はグレムリンをブレスで押し潰した後、役目を終えたとばかりに消えていった。
「ミコモちゃんにあんな奥の手があったなんてびっくりだわ」
「エル姉だって持ってるんでしょ。どうせ」
「ふふふ、どうかしら。さて、急いでカゲトラちゃんの所に行かないと」
「そうね」




