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【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第3章 『何も望まなかった中の上』
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第40話 質問攻めという名の苦行



「小鉄、どうして死んじゃったの?」

「いや、あれは寿命だったんで」

「四歳にもなってないのに?」

「……どう説明したら良いかな……俺は、こう……運。運だけ持ってたから、それ以外がからっきしダメだったんだ。むしろマイナス」

「マイナス? それって神様の話?」

「あ、いや……その……」

「言えないんなら良いや。じゃ、小鉄は自分が死ぬことを知らなかったの?」

「ああ。気がついたら天井に浮いてた」

「何時頃?」

「多分、三時くらいかな……まだ暗かったし」

「その時、私とお母さんは寝てたの?」

「ああ。ぐっすりとな」

「え、でもさ。あの五十音表に丸をしたのって、小鉄でしょ? 死ぬの分かってたんだよね?」


 俺は楓に小鉄認定され、その後車を走らせながら、楓から色々聞かれ、色々と怒られながら、根掘り葉掘り聞かれていた。楓と二人きりのロングドライブは、すっかり答え合わせのような、俺が責められ続け、聞かれ続けるという、一種の苦行のようになっていた。

 まぁ、自分の猫が話せるようになったら、そうなるわな……。


「あ、え……えっと。言えないことです」

「どうして急に敬語になるの?」

「いや……俺は今も言えない状態にあるんだ」

「ふーん。それって、神様から禁止されてるってこと?」

「え……? い、言えないことです」

「……まぁいいや。あ、お友達にやってもらったの!?」

「あ……うーん……。言えないことです」

「……わかりやすいけど、大丈夫?」

 いや、かなり大丈夫じゃない気はする……。


 そして途中のファミレスで昼食を取りながら。


「チョールってやっぱり美味しいの?」

「食ったことないか?」

「人間だもん」

「すんごいうまいぞ」

「やっぱり美味しいんだね」

「ああ。あれは格別だ」

「あ、あのビスケットとケーキは?」

「ああ、あれも美味かった! どうして人間が作ったものが、猫に美味く感じられるんだろうって思ってた」

「どっちが美味しかったの?」

「両方共別の味だから、比べられん」

「じゃ、その二つとチョールなら?」

「うーん……行かないと食えないという理由でケーキかな……?」

「なるほど。カリカリは最後ので満足してた?」

「ああ。あれはあれで美味かったぞ」


 そして再び車の中で。


「最初から言葉はわかってたの?」

「ああ、分かってた」

「ふーん。やっぱり解ってるんだ……。でも、それって小鉄だから?」

「多分そうだ。俺は特殊だからな」

「そっか……。じゃ、どの猫も理解しているわけじゃないんだね?」

「ああ。……あ、違う。俺も最初は理解できなかったぞ。だから年老いたら、理解できるようになったりするのかもな」

「そうなの? 最初って何?」

「言えないことです」

「そっか。じゃ、どうして急に喋りたいと思ったの?」

「忙しくなり始めて、タクシーで移動し始めた時。タクシーの中で楓が俺に『調子が悪くなったらちゃんと言え』って言ったの、覚えてるか?」

「ううん。覚えてない……私、そんな事言った?」

「ああ。それで、よくよく考えたら、俺は楓の言葉に返事をしているだけで、俺から伝えることが出来ないって気づいたんだ。それから色々考えた」

「そうなんだ……。結構覚えてないもんだね……」

「ああ」

「あんなに大切な……三年間だったのに……」

 楓はぐずりだした。

「あ、楓! 危ないから、車を停めろ!」

「うん……」

 楓はぐずりながら、車を路肩に停めた。


 そんな感じで、質問しては思い出して泣いて車を路肩に停め、また泣き止んでは車を走らせて質問し、また泣いては車を停めた。こんな感じで進んでは止まり、進んでは止まりを繰り返し、ようやく目的地に到着した。


「楓、目が腫れてるぞ……」

「え……? あ、ホントだ……どうしよう……。もう、小鉄のせいだよ?」

 楓はルームミラーを覗き込むと、そう言って俺を見た。

「いや、俺は悪くないかと……ちょっと、顔を洗ってきたらどうだ?」

「どこで?」

「ペットボトルの水じゃダメか?」

「あ、その手があったか。頼んで良い?」

「おう」

 俺達は車を降りると、バックドアを開け、鞄の中からペットボトルを取り出した。

 俺はペットボトルを開け、楓の両手に水を注いだ。楓はその水でバシャバシャと顔を洗った。

「あ、お化粧、大丈夫ですか?」

 アリシアが言った。

「え……? あ、楓……化粧大丈夫か?」

「ん? お化粧なんかしてないよ?」

 楓は顔を上げ、タオルでゴシゴシと顔を拭いた。

「え……すっぴんでその顔!?」

「うん……ダメかな?」

「いや、ダメじゃない! ……ってか正直驚いた。昔から思ってはいたが……お前、どんだけ美人なんだ!?」

「あはは……ありがと。で、どうかな?」

 楓はそう言って笑うと、俺に顔を近づけた。

「うん。大丈夫じゃないか?」

「よし。じゃ、いくよ?」

「おう」


 俺達は子猫の新しい飼い主を訪れ、楓は子猫を新しいケージに入れ、飼い主に注意事項を説明し、子猫が落ち着くまで待つと、飼い主に抱かせて猫との相性を見ていた。そして一時間ほどそうしてから、自分が納得すると、宜しくお願いしますと一緒に頭を下げて、家を出た。


 俺達は車に乗って、来た道を戻っていた。


「今はどこに住んでるの?」

「台東区に住んでます」

「どうして敬語?」

「いや、なんか今のことを聞かれると……」

「ああ、小鉄モードじゃなくなっちゃうのか……あはは。可笑しいね」

 楓は笑った。

「ああ。今はなんか小鉄と蒼汰っていう二つの人格が混ざり合ってて、変な感じだ」

「なるほどね……あ、台東区だったら近いね。寄ってく?」

「え、どこに?」

うち

「え、アパートって台東区だったのか!?」

「あー、今は引っ越しちゃって、あそこじゃないの」

「あ、そうなのか……?」

「うん。お母さんにも合わせたいし。どう?」

「ああ、是非会いたい」

「うん」


 車は夕方の道を一時間ほど走り、そこそこ大きなマンションの駐車場に入った。


「ここか?」

「うん。今の仕事を初めて、少し広い所に引っ越したんだよ」

「ああ、家でも飼ってるのか」

「うん。あ、ちょっと待って。私バック苦手なんだ……」

 楓はそう言うと、車を駐車スペースの前に停め、ギアをリバースに入れると後ろを見ながら車を後退させた。二度前後に行ったり来たりを繰り返すと、車は無事、駐車場に入った。

「よし。で、何だっけ?」

 楓はギアをパーキングに入れ、サイドミラーをたたむとエンジンを止めた。

「家でも飼ってるのか?」

「ああ、そうだった。うん、見ればわかるよ」

 楓が車を降り、俺が降りると楓は車のドアをロックした。


 そのまま駐車場を歩く。

「お家に連絡しなくていいの?」

「あ、じゃメールしときます」

「あはは、うん」

 楓は笑い、そのまま駐車場から続く、マンションの入り口の鍵を開け、中に入った。


 エレベーターホールで俺がお袋にメールをしていると、楓は横から覗いた。

「なんか、普通の高校生だね……」

「ええ、普通の高校生ですから」

「全然普通じゃないけどね。私に駅のホームでナンパしたんだから」

「いや、してないだろ!」

「あれ? あれって愛の告白じゃないの?」

「違う!」

「なーんだ」

 楓は笑ってエレベーターに乗り込み、ボタンを押した。


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