表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1万PV達成!】天は二物を与えず(仮)  作者: Kuu
第2章 『運だけの猫』
22/110

第22話 猫と楓とベストショット



「オッケー、じゃ交代」

 美月はそう言って楓に歩み寄り、楓も美月に歩み寄ると中間地点でデジカメを受け取った。

「楓、小鉄ちょうだい」

「あ、うん」

 楓は抱っこひもごと俺を美月に渡すと、右手にはめていたリードを外し、美月に渡した。

 美月は俺を受け取るとさっき楓が立っていた場所まで歩き、振り返った。

「小鉄、私の頭の上に乗れる?」

 え? 頭の上?

「動かなければ乗れるぞ」

 俺は頷いた。

「よし、じゃぁ……よっと」

 美月は俺を抱き上げて抱っこひもから出し、頭の上に乗せた。

「お、おぉぉ……」

 丸い頭の上で、髪の毛が少し滑る。

 おぉ……お……安定した。

「小鉄? 大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

 俺は美月の頭の上に香箱座りした。

「……なにそれ! ずるい!」

 さっき美月が立っていた場所から、カメラを構えていた楓が、カメラを下ろして抗議した。

「もう一回撮ってあげるから、ほら、撮って撮って!」

 美月は斜に構えると右手を手すりに乗せて、ポーズを取った。俺は三月の頭の上で香箱座りのまま、顔だけカメラに向けた。

「もう……撮るよ! はい、チーズ!」

 パシャッ。

「ちゃんと撮れた?」

 美月はそのまま動かずに聞いた。

「うん、バッチリ」

 楓はカメラで画像を確認しながら、こちらへ歩いてきた。

「ほら」

「……うん、いいねー。じゃ、交代」

 美月は画像を確認すると、そう言ってゆっくりとしゃがんだ。

「おいで」

 楓は両手を俺に差し出して抱き上げ、美月からリードを受け取った。

「うぅん……どうしようかな……小鉄、私の腕に乗れる?」

 腕に……?

「乗れないことはないが、重いぞ?」

 俺は首を傾げた。

「やってみてもいい?」

 ああ。俺は頷いた。

「じゃ、肩に乗って」

 楓は俺を自分の肩に乗せた。丁度俺が楓の右肩に覆いかぶさっているような状態だ。そこからよっこらせと立ち上がり、楓の左肩に両手を乗せ、左肩に両足を乗せた。

「じゃ、そのまま腕に乗ってみて」

 楓は両手を水平に広げた。

「いくぞ、重かったら言えよ」

「いいよ」

 俺はゆっくりと楓の左腕の上を歩き始めた。

「あ……お、重いっ……」

 楓の腕がプルプルと震えだすと、体が左に傾き始めた。

「お、おい……揺らすな……あっ!」

 腕の震えが限界になると、急に腕が降ろされた。俺はそのまま地面に落下……する直前に、楓の両腕で抱きとめられた……。

「危なかった……大丈夫?」

「あ、ああ」

 俺は頷いた。

「ごめんね……小鉄は重いって言いたかったんだね……でも今、空中で止まらなかった?」

 いやいや、まっさかぁー……。俺は首を振った。

 実際には空中でアリシアが俺を抱きとめ、楓が下に入るまで待っていた。

「サンキュー、アリシア」

「いえいえ」


「なるほど、それをやりたかったのね……。それってあの映画の真似よね? あの、青い服着た女の子が、何だっけ……チト? とか言うリスの子供を腕に乗せるやつ」

「うん。でも、無理だった」

 楓は俺を抱いたまま、美月を見た。

「じゃぁさ、そこに乗せたら?」

 美月が近くに設置されていた望遠鏡を指差した。

「ここ?」

 楓が望遠鏡を指差した。

「うん。その望遠鏡の上に小鉄を乗せて、台の上に楓が乗って手を広げたら、小鉄が乗っかってるように見えるよ」

「あ、そっか……。小鉄、できる?」

「ああ、動かないものなら大丈夫だ」

 俺は頷いた。

「じゃ、乗ってみて」

「おう」

 俺は楓の肩から望遠鏡に飛び乗った。うぉっ! 乗った瞬間に望遠鏡が上を向いて足元が下がり、バランスを崩しそうになったがなんとか持ちこたえ、そのまま安定した。危なかった……。

「だ、大丈夫?」

 楓は俺の下に両手を出して俺を見た。

「ああ、安定した。楓、ここに腕を出せ」

 俺は空中を指差した。

「ここに立てばいいの?」

 楓は望遠鏡を覗く子供用の台の上に乗り、カメラを向くと両手を広げた。俺は楓の腕に両手を乗せた。重心は望遠鏡の上をキープし、そのまま腕だけを添える感じだ。

「どう?」

「も少ししゃがんでー。うんそう。撮るよー……はい、チーズ!」


 カーン!


 と近くで大きな鐘の音が鳴った。

 すぐ側にどこにでもある「幸せの鐘」なるものが設置されていて、それを誰かが勢い良く鳴らしたのだ。


「ひゃっ!」

 俺は驚きその場で飛び上がった。

「あっ!」

 楓は俺を見て振り返り、俺に両手を差し出した。

 楓! 俺も両手を差し出した。

 ボフッ! 俺は楓の両手に受け止められた。

「大丈夫!?」

「あ、ああ……ちょっと驚いただけだ」

 俺は楓の腕の中で、楓の頬を舐めた。

「腰も平気?」

「ああ……大丈夫だ」

 俺は体を動かして確認すると、楓に頷いてみせた。


「はいカット! オッケー! ナイス小鉄!」

 美月が大きな声で叫ぶと、グッドサインを出した。

「カット……?」

「いやー、いい絵が撮れたよー。ほら!」

 美月は俺たちに駆け寄ると、カメラの背面を俺たちに向けて再生した。


 楓が両手を広げ、俺がその上に乗っているように見える状態で始まり、鐘が鳴り、俺がジャンプして、それを振り返った楓が受け止めた。最後に美月の「カット」の声まで入っていた。


「動画……?」

 楓は目を丸くして美月を見た。

「うん、なんか色々いじってたら偶然動画になっちゃった……あはは」

 美月は笑った。

「そ、そうなんだ……」

 楓は少し不思議そうだった。

 実はこのデジカメ。写真モードから動画モードにするにはカメラの上のツマミを七回、回転させなくてはならない。なので、一体どうやったら「偶然そうなる」のかがわからなかった……。

「でも、最高の絵が取れたでしょ?」

「う、うん。そうだね」

 楓は笑った。

「でももう一回、写真で撮って。設定戻したから」

 楓はカメラの設定を写真モードに戻すと、その他の設定を確認してカメラを美月に渡した。

「うん、わかった」

 美月はカメラを受け取ると、再びさっきの場所へ戻った。

「小鉄、もう一回いい?」

「おう」

 俺が頷くと、楓は手で望遠鏡を固定し、俺はその上に乗った。

「ゆっくり離すよ?」

「おう」

 楓はゆっくりと望遠鏡から手を離した。

「大丈夫? 危なくなったら私に飛び移るんだよ?」

「わかった」

 楓は俺が頷くのを確認すると、カメラに向き直り、両手を広げた。

 俺は両手を楓の腕に乗せた。

「楓! 小鉄の方に少し首を傾けて、左足を上げて! 飛んでるみたいに!」

「こう?」

 楓は少し首を左に傾けて俺に顔を寄せると、左足を上げた。

「うん、そのまま! 撮るよー! はい、チーズ!」

 パシャッ。

「オッケー! 良いのが撮れた!」

「うん。おいで」

 美月が今の写真を確認してそう言うと、楓は振り返り、俺を抱き上げた。


「あ、良いね!」

「お、良いな!」

 美月がこちらへやって来てカメラの画面で今の写真を見せると、楓と俺はそう言った。

 写真には、望遠鏡の踏み台の上に乗った楓の左腕の上に俺が乗り、楓が俺に寄り添うように顔を寄せ、左足を可愛らしく上げているおかげで、とても可愛く、二人仲良く写っていた。

 これ、今までのベストショットに入るんじゃないか?


 ふと見ると、俺達の周りを数人が取り囲んでいた。「小鉄……?」「あれ、小鉄くんじゃない?」と所々から声が聞こえる。


「あら、バレたかしら?」

「お母さんが叫ぶから……」

「あはは、いい絵だったから、つい……」

 美月は苦笑いした。

「もう行こう」

「そうね、小鉄。入って」

「おう」

 美月がカゴの扉を開け、俺が中に入るとリードを外してカゴを閉じた。


 そのまま何事もなかったかのように人垣を抜け、下りのロープウエイに乗り込んだ。

「小鉄、お腹すいた?」

 少し、空いたかな……。俺は首を傾げた。

「どうする? 食べる?」

 まだいいや。俺は首を振った。

「わかった。お腹すいたら言うんだよ?」

「ああ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ