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12.魔族

やっとタイトル回収へ向かえるぜぇ…

見渡せば建物1つ見えない草原だ。動物もいる気配はない。自分ともう1人を除いては、だが。

「兵士長あなたがやったんですか?」

俺の隣にいるのは兵士長だ。何故か分からないが俺たち2人だけがこの転移でこの草原に飛ばされている。


「あぁ、やったのは私だ。あともう兵士長は止めろ。私のことはガルダでいい。」

兵士長、いやガルダが何とも言えない疲労を顔に浮かべながらそう言う。


「どうしてこんな事をしたんだ?」

「お前さんのスキル、"王の器"だよ。それはこの世界では魔王の卵が持つものだ。休戦状態とはいえ魔族と敵対している人間側に居ていいものではない。」

何となく感づいてはいたが、本当にそうだとは思わなかった。"王の器"は俺の他のスキルやクラスメイトの持つスキルと比べて異彩を放っていた。よもやそんなものとは思いもしなかったが。


だが、それが本当なら1つ疑問に残ることがある。

「どうしてそれを話すんだ?兵士ちょ…ガルダは人間なのに何故敵である俺にそれを教える?極端な話、俺が何も知らない間に殺した方が楽だっただろ?」

そう。今ここでこれを話す理由だ。これを話した上でもし俺に逃げられでもすれば人間側にとっては手痛いどころの話では無いだろう。


「それは私の個人的な感情だな。私はお前さん…というよりは転移者にこの地で死んで欲しくないのだよ。転移者ってのは本来ここと交わることのない存在だ。それを勝手に呼び寄せた上、こちらの理由で殺すなんて私には出来んよ。」

王国の兵士長なんて言うものだから、"国の為に貴様を討たねばならんのだ!"なんて妄信的(もうしんてき)な事を言うのかと思ったが、案外人間らしい。


ガルダはいつもは見せない不器用な笑顔を浮かべた後、真面目な顔になり話を続けた。

「お前さん、いやこれからはコータと呼ぼうか。コータは今王国から命を狙われている。」

「まぁそうだろうな。」

今の話を聞いていれば予想はつく。そんな事で無ければ今ごろクラスメイトと一緒に寮にでも戻っているだろう。


「だからコータに残された選択肢は3つだ。1つ、フォルスタリア王国の西側、ガーデンバルド帝国に逃げる。2つ、帝国よりさらに西、海を渡ってアラザラス神皇国(しんこうこく)へ向かう。3つ、このまま南下して魔族領(まぞくりょう)へ向かう。少なくともフォルスタリアに残ることは出来ない。どうするかは自分で選んでくれ。」

この3つの中で無難(ぶなん)に行くなら1か2だろう。追われた身であるなら適当に旅をしてもいいかもしれない。


少し考えていると突然空から巨大な動物の鳴き声が聞こえた。ゲームなんかで聞き覚えのある生物の声だ。

「やっと来たか。」

ガルダが呟く。見上げれば巨大なドラゴンが3頭、こちらに向かってきているのが見える。

そのドラゴンは俺たちを見つけると降下しはじめ、目の前に着陸する。


「遅い。いつまで待たせるんだ。」

「悪いね、王の器を前にするとどうも黒龍の制御が利かなくてね。」

ドラゴンの背から降りてきたのは銀髪のロングヘアーに褐色肌の女性だ。黒いローブを纏っているので顔は良く見えない。それに続いて同じくローブを纏った人がぞろぞろと10人ぐらい降りてくる。


「ガルダ、この人たちは?」

「魔族だ。魔王の卵であるコータには教えておかねばと思ってな。」

すると一番に降りてきた女性がこっちを向く。

「はじめまして、我らが王の器よ。人間に器が宿るのは初めてですが、どうでしょう。こちらに来る気はありませんか?」


ガルダのヤツ、最初からこうする気だったか。提示された選択肢は3つ。だが1と2は俺を保護してくれる後ろ楯が存在しない。それではこの世界に転移して間もない俺にはとてもではないが生きていくのが難しかっただろう。

だが、3は王の器を持っているが故に魔族という後ろ楯が存在する。


「…はぁ。分かったよ。魔族につこう。」

深く溜め息を付きながら俺は返答する。すると女性は笑顔になって話を続ける。

「話が早くて助かるわ。ガルダ、器の回収と保護、感謝するよ。」

「そんな感謝はいらん。私は私の仁義を通しただけだ。」

ガルダがそっぽを向いている。一見すれば厳つくて怖い人だが、中身は優しさで溢れる人だ。ガルダがいなければ俺は死んでたかも知れないしな。


「じゃあ行こうか、コータ。」

「行くってどこへ?」

「私たちの家へさ。あんたは今から家の養子扱いなんだから、早くしな。」

そう言うと女性はドラゴンの方へ歩きだす。振り返ればガルダはもう居なくなっていた。恐らく転移したのだろう。心の中で感謝を述べながら俺はドラゴンに乗り込み魔族となったのだった。

そう言えば今日誕生日。


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