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勇者アトリ  作者: 空野 灰鷹
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プロローグ

 夢を見た。

それは、時々見る私の知識と記憶だけで構成される現実離れしたただの夢。

その夢で私は空の上に立っていた。

上では銀河の星空が、足下には空と呼ぶべき層と雲、もっと下には見た事のない大陸が広がっていて…。


(えっ、落ち…っ!? …ああ、夢か。)


 足場が無い事に一瞬焦りはしたが、夢だと思った途端すぅっと冷静になれ、足の下に地面の感触がある事を確認できた。

『これは夢だ』と気付く事で夢の中を自由に動き回れる夢を明晰夢と呼ぶけれど、なんとも不思議な体験だ。

存在しない場所に自分が存在して、自由に動き自由に考えられるのだから。


 しばらく雲の上を歩き回り、星空の星の配置を見、下の大陸の形を見る……そして最後は、私の脳内は一体何を考えてこの世界を構築したのだろうかと自分自身を心配した。

何かのゲームかアニメの影響だろうか?

最近は仕事が忙しくて溜めるだけ溜めて、休日に解消しようとしていたけれど待ちきれなかったとか?

…うん、なら存分にこの世界を楽しんだ方がストレス解消になるだろう。

さぁ楽しもう、と周りをぐるっと見回したその時、星空と雲の中に異色を見つけた。


 ……人がいる。


真っ赤なマントを身につけた眼鏡の男だ。

顔立ちは日本人なのだが、髪も眼も緑という容姿……違和感しかない。

よく見れば彼が身につけているマントもだが、マントの下の身なりもRPGの魔法使いのようなファンタジー風の衣装である。より増して日本人顔が悪目立ちしている。でもコスプレにしては髪も眼も自然に見えるし、衣装も装飾も素人が作ったとは思えないぐらいのクオリティさである。

漫画かゲームのキャラなのかとも思ったが、夢の中で目が覚めたばかりの頭が回転しないのか元々いないのか、特に思い当たるキャラはなかった。


 緑のフレーム眼鏡をした男は私に気付いていないのか気にしていないのかずっと見た事のない大陸をじっと見つめていた。

なんとなくだけれど、その表情はとても愛しそうに、そして寂しそうに見える。

しばらく彼を観察していると、彼は視線をあげて私を見つけた。

ぽかんとした表情で彼は私をしばらく見つめた後、困ったように笑って私にこう告げた。



「そっか…君も僕と同じなんだね。大変かもしれないけれど…頑張ってね。」


「え?」


 同じ、とは?

頑張ってね、とは?

そんな疑問を浮かべたのだが、どうやら私は夢から覚めるようだ。

視界がぐにゃりと歪んで、目の前の男も星がきらきら輝く真っ暗闇もどんどん霞んで見えなくなって、そこで私の意識は途切れた。


出だしなので短いです。

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