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ここ数日投稿忘れてて申し訳ございませんでした

 村の中には小ぢんまりとしてはいるが、宿があった。そんなわけでそこに大銅貨九枚払って部屋を借りた。一泊、食事なし、風呂なし、設備ぼろい、あたりの待遇だったらこれぐらいが適正なのだろうか。いや、それでもネットカフェより安いぞ……。訪ねてみたところ、店主のおばちゃんが半ば趣味でやっているそうだ。つまり、この村は半ば趣味でやっている宿が一軒しかない村である、ということだ。どんだけ田舎なんだよ。まぁ、悪くない雰囲気だ。こういったのどかなのもいいだろう。風呂は無くても、これを使えばいいし。

「いやぁ、気持ちいいなぁ」

 俺は無属性下級魔術『清浄クリーン』で体の垢や汗、泥やその他汚れを落とす。肌の表面がさっぱりした感じがするな。ただ、風呂に入った時のような疲労が回復する様子はない。そんな時は、

「やっぱこれだなぁ……」

 『ヒール』を使えばよい。これで疲労も回復だ。ついに無属性ならば中級まで無詠唱で使えるようになった俺は、緩んだ声でそう呟きながら、荷物を机に置いてベッドに横たわる。服も『クリーン』で浄化済みだ。

 ちなみに、『クリーン』は『ヒール』と並んで、定番どころだったら水属性か光属性に分類されるだろう。光属性は無いから別として、イメージ的にも水属性になるのが自然な流れだろう。

 しかし、なんとこの世界、水属性は『水で出来る範囲』しかカバーしてないのだ。故に、魔力を使って直接浄化や治癒をすることはない。代わりに水属性魔術には洗濯から脱水までを数分でやってくれる下級魔術『ウォッシュ』や、きれいな水を出して傷口を洗い、実質回復を早める初級魔術『フレッシュウォーター』等がある。ただ、『クリーン』のと違って時間がかかるし『ヒール』と違って即効性はない。

 他にも、無属性が効果を及ぼす現象は多い。精神、温度、光陰、物質構造、電気、音、重さと言ったところか。多すぎて挙げるのが面倒だ。無属性は、あの『四つの属性で出来ないことが出来る』属性だ。となると範囲は広くないように感じるが、どっこい。逆だった。

 四つの属性の干渉できる範囲が狭すぎるのだ。

 例えば一番わかりやすいのが風属性。風属性は空気を操るから音や気温、さらにはファンタジーの定番で電気にも干渉できそうなものだ。だが、この世界は魔術にイメージが必要であり、なおかつ科学が発達していない。よって、例としては、『音が空気や物の振動である』、ということが分からないため、魔術で干渉できないのだ。気温については多少何とかなるがな。

 その一方、無属性は工夫すればちょっとは何とかなる。

 例えば温度を頑張って上げれば火だって熾せるし、冷たい空気と暖かい空気を作り、対流によって風を起こすこともできるだろう。

 余談ではあるが、魔術には属性は違っても似たような結果をもたらす魔術がある。

 例えば『ウォール』シリーズや『ボール』シリーズ、それと『バレット』シリーズなどなど。これは、属性が違うとしても、求める結果が同じことが多いからだ。

 例として、地属性だから土の壁を造れるが、他属性は壁が作れないから防御手段がない。ならそれぞれの壁を造る魔術を作ろう。となったのが『ウォール』シリーズだ。このようにシリーズ化されている魔術は、末尾にシリーズの名前がつくのだ。

 とかなんとか言っているうちに夕食の時間となった。俺は部屋に鍵をかけ、ここに来るまでにチェックしておいた飲食店へと向かおうとする。宿屋の玄関を出ようとしたとき、

「あれ、ユウスケじゃない?」

「あ、ユウスケさん」

 女の子二人に後ろから声をかけられた。振り向いてみると、そこにいたのは金髪と銀髪の美少女。

「ああ、エリスとリリアか。まぁ、この村には宿が一つしかないからこうなるか」

 さっき別れたばかりの二人と同じ宿だったようだ。当然だな。

「今からどこ行くんですか?」

「んー、ちょいと夕食に」

「じゃあ一緒に行かない?」

 とこんな流れになるのも必然か。まぁ、悪い奴らでもないしいいかな。

「じゃあご一緒させて貰おうかね」

 俺は素直に頷くことにした。


               ■


 この世界には米が普通に普及している。一般的な異世界物だと必死になって米を探す主人公がよくいるが、俺はそんな心配がなかった。醤油や味噌がないのはちょっと辛いが、それでも調味料は割と種類が豊富なので問題ないだろう。

 そんなわけで、俺が夕食に選んだのは牛丼。といっても、味付けは地球の牛丼のように甘辛いタレではなく、ピリ辛のソースでの味付けだ。

「っとまぁそんな具合でついさっき冒険者の魔術師になったわけよ」

 俺は口の中の牛丼を飲み込んだ後にそう言った。というのも、ここまで冒険者でもないのに何であんな山奥にいたのか、と言うのを尋ねられたためだ。俺はこの質問が来ると予想していたために予め解答を用意しておいた。山奥の小さな家で生まれ、そこにある本で冒険者に憧れ、いい感じの年になったので山を下りてきた、と言う事にした。うん、半分ぐらい本当の事だ。

 いきなり、異世界からトリップしてきちゃって拾ってくれた人は元王国魔術師隊長です、とか言ったら変人と嘘つきのレッテルを貼られるだけだ。魔術が使える理由は、ある程度家で修行してから下りてきたから、ということにしといた。うん、嘘はついていない。

「魔術師かぁ……。見たところ、腕も立つようだし、それに二つの属性に適性があるんでしょ?」

「そこで、どうでしょう? 一緒にパーティーを組みませんか?」

 と美少女二人からのお誘いだ。あ、ちなみにパーティーと言うのは、冒険者のグループのことだ。長続きするのもあれば、その場限りということもある。たいてい、バランスよく組むのがベターとされる。

 悪くない話ではない。二人とも戦士だが、エリスは普通の戦士、リリアはトリッキータイプの戦士だ。後者は別の言葉でいうところの盗賊やシーフと言ったところか。こっちでは戦士と一括りにされていて紛らわしいが、だからと言って地球みたいに盗賊とかシーフと呼ぶわけにはいかない。失礼極まりないからな。

 余談だが、この二人はどちらも戦士だからバランスが悪いのでは?と感じる人もいるだろう。だが、案外そうでもないのだ。少人数なら二人で近くにいて、お互いに補助しあえる距離にいる方が安全だったりする。とはいっても、やはり四人くらいになると魔術師か弓使いは欲しいところだ。この二人は、この段階で魔術師を確保しておこう、とでも考えたのかもしれないな。

 で、結局のところ結論だが……

「気持ちだけは受け取っておくよ。しばらくゆーっくりとマイペースに進めていくさ。また今度よろしくな」

 となる。つまりいいえノーだ。悪い話は無いんだけど、ちょっとなぁ……。

「そうね、分かったわ。忘れて頂戴」

「じゃあ、普通にお友達と言う事でお願いします」

 二人はちょっと残念そうだが、笑顔でそう言ってきた。ふむ、気持ちの切り替えは出来るタイプの様だな。

「ああ、よろしくな」

 俺も笑顔でそう返した。


                ■


 あの後、俺たちは宿まで一緒に帰って、それぞれの部屋に分かれた。

 俺は寝る前の読書がてらにギルドで貰ったルールブックを読むことにした。

 えっと……クエストには通常クエスト、特殊クエスト、緊急クエストの三つがある。

 通常クエストはそのまんまの意味だ。普通に依頼が出されて、冒険者が受ける。

 特殊クエストは様々なパターンがある。依頼者が直接指名する指名クエスト、ギルドが依頼するギルドクエスト、常時出ている常時クエストなどだ。

 ギルドクエストについてはランクアップ試験がほとんどだ。FからEに上がるときは無いのだが、それ以上に上がるには、例外を除いてギルドから出される試験を突破しなければならない。で、分かりやすくするためにこのギルドクエストのクリアを条件にランクアップ出来る、ということにしたそうだ。

 また、常時クエストの内容は繁殖力の高い魔物の討伐や、良く使う特殊な草の類の採取などだ。常に需要があるので常時出されているのだ。それと、これには失敗や中断の時の違約金が発生しない。また、報酬は歩合制だ。

 そして緊急クエスト。これは有事の際に出されるものだ。例えば、魔物の異常繁殖や強力な変異種が確認された場合や行方不明者の捜査、そして戦争などだ。

 それと、冒険者の職業についても書かれていた。ここで、ジャリスさんから教わった情報に初めて誤りがあることが発覚した。いや、山奥に籠っていたから情報がちょっと古かったのかもしれないな。

 職業は軽戦士、業師、弓使い、魔術師、重戦士の五つあることがわかった。というのも、この名称が変わったのはここ数か月らしく、まだ定着していないそうだ。……俺は新参者である意味良かったのかもな。古い知識はあまり持っていないからな。

 で、簡単に言うと、重戦士は騎士だ。名前が変わった理由は、国に仕えている騎士と紛らわしいからだ。それと、戦士が軽戦士と業師に分かれたのは嬉しい。軽戦士は今までで言う普通の戦士で、業師はトリッキータイプの戦士だそうだ。例えば、エリスは軽戦士でリリアは業師となる。弓使いと魔術師は変わらない。

 うーん、この変更は正直ありがたいがこれから認識をすり合わせていくのが大変かもな。頑張れギルド。

 さて、続いて魔物について説明だ。まず、魔物は色々な種類がいる。種類によって特徴、能力、弱点、知能、生息地……と色々な要素が似ていたり違っていたりする。

 ちなみに、種類をさらに大きなくくりとしたものがあったりする。例えば、亜人と人を纏めて人間族と呼ぶようなものだ。

 また、魔物の中でも特に厄介な種族が巨人族とドラゴン族と魔族。どれも定番だろう。

 巨人族は大きな人型。五mから百m、さらにはそれ以上まで様々だ。圧倒的なパワーと、上位にいる個体や種類は高い知能や魔力を持つ。また、見た目に反して俊敏だったりするらしい。また、種類も様々だそうだ。

 ドラゴン族は、つまりまんまドラゴンだ。知能がとても高く、魔力やパワーも強く、ブレスを吐いたりする。プライドも高く、個体の一匹一匹が大規模な討伐体が必要になる。

 この二つはまだ縄張りを侵したり、その他酷いことをしなければそんなに被害は無いらしいからマシだ。とは言ってもたまに人里を襲ったり、たまに国が滅んだりするらしいが、おおむねまだマシだ。

 厄介なのは魔族。知能、魔力、身体能力、技術力、寿命……どれをとっても優秀だ。と、ここまではまだ巨人族やドラゴン族と変わらない。しかし、魔族は滅茶苦茶好戦的なのだ。頑張って他の魔物や人間の土地を奪おうと戦争を仕掛けてくる。こいつらがまた厄介で、過去に滅ぼされた国もあるらしい。ちなみに、魔族はそりゃあもう多くの種類がいたりする。というか、結構な割合で固有種である。

 固有種というのは、簡単に言うとごく少数だが他とは違う種類だ。ゲームとかだとボスかその取り巻きのポジションによくいる感じだろうか。

 さて、ここでちょっと前に出てきた単語の解説だ。それは変異種。

 変異種とは、まんま突然変異種だ。その種類、または種族なのだがどこか違う個体だ。大体が元の種類や種族より強力で、その違う部分は能力、見た目と様々だ。大体が群れのボスになっていたりする。で、こいつが出ると途端に魔物の統制が取れ始めるから厄介なのだ。

 この説明だけ聞くと、変異種と固有種は同じではないか、とも思わなくもない。実際、意外と線引きは曖昧で個人の解釈に任される部分が多い。ただ、ギルドでは昔からいる個体を固有種、最近確認されたのが変異種、となっているそうだ。 

 他に書いてあることは、称号と勲章について。

 称号は名誉なことをした人が、その人にちなんだ内容で貰えるもので、二つ名的なものらしい。名誉の内容はそれに見合うほどであればなんでもいいらしい。この近辺で有名な称号は『銀爪牙』、『金閃剣』、『不死身の守り手』、『輝く人形』などがあるらしい。由来は分からないが、何となくカッコイイな。といっても、これはあくまで名誉的なもので援助などは無い。

 勲章は、称号と違って決まったことをすれば貰え、ギルドカードにも刻まれる。例えば有名なのは、定番の『竜殺し』だろう。他にも『巨人殺し』や『魔族殺し』、ちょっと変わったところで『盗賊ハンター』なんて言うのもある。こちらは勲章によって、ギルド連携店でのサービスが良くなるそうだ。割引やタダ、増量などがそうらしい。

 なるほどねぇ……読んでいるうちにちょうどいい時間になったようだ。さて、じゃあそろそろ寝ますかね。


                ■


「はあぁぁ……緊張したよぅ……」

「あー、あんたも大変よね」

 二人は部屋について早々にこんな会話をした。リリアは涙目でベッドに倒れこんでいる。

「男の人と話すのは苦手だから……うぅ……」

「あんたの男恐怖症は厄介よねぇ」

 リリア達は、ある『仕事』のせいで遊助と交流を持たざるを得なかった。よって、リリアは男性恐怖症なのを我慢して、必死に演技して会話していたのだ。

「まぁ、やると決めたからにはしっかりやりましょ。で、どうするの?」

「そうですねぇ……」

 エリスの言葉を受け、すぐに気持ちを切り替えたリリアは考え出した。

「とりあえず、明日、ユウスケさんはクエストを受けると思いますので、その尾行でしょうか」

「あー、そういえばさっきご飯食べているときに言ってたわね。それでいいんじゃないかしら」

 遊助は、食事の際にこれくらいなら話してもいいだろう、ということで明日、クエストを受けることを話していた。

「あの野盗を捕らえた腕からして、初心者にしてはかなり有望だと思います」

「そうね。魔術も上手く使っていたわね」

 二人はそんなことを話しながら、明日の打ち合わせをした。

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