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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第26章 おぞましさと気持ち悪さ 第二話

どうして?私はこの現実を呑み込むことができない。その死体は、動きだしたその男は、生きているはずのない男だった。その男は目の前で、その銃を構えていた。そしてその銃の照準は、私の目の前の死体へと向いていた。「やめろッ!」バンッ!その銃声は断末魔のようにここに広がっていく。その銃声が笑い声で覆いつくされていたここを静寂に変えてしまった。その静寂を、沈黙を前にした私の心に湧き上がってきたのは既視感だった。そう、私はこの景色を見たことがある。私はこの死体の山を見たことがある。そしてその銃も、そして目の前で立っているこの男は...その瞬間、あたりに響く銃声、私の額に風穴が開いた。しかし、そこにあるはずの痛みはなかった。私は右手にその傷跡を触っていた。手に付着した艶やかな液体、そうだこの液体は、あの時夜見が流してしまったはずの血だッ!その瞬間、僕はすべてを思い出してしまった。どうして今の今まで忘れてしまっていたのだろう?それもこれも全部、僕が卑怯者だったから?

~~~

目の前で銃弾に貫かれ散っていく彼女”夜見”。彼女だったものは周囲に飛び散って僕が見ていたこの世界を艶やかに染めていった。そして、僕の目の前には、銃を持っている一人の男がいた。それは死んだはずの男だった。「どうして、どうしてお前が生きているんだッ!班長(リーダー)!」その瞬間、彼は右手を頭上に掲げた。虚構から突如として裂け目が生まれ、そこから現れる30人ほどの戦闘部隊。彼らは男の背後にて四列の大隊を成し、整列した。「我ら神の意思の(もと)、意思なき咎人を断罪せし神の子(メシア)、特殊部隊OK(YES)、現時刻をもって予言通り合流完了。」彼らは純然たる白色の迷彩服を纏い、その手には見たこともない銃が握りしめられていた。男が手を上に掲げる。そして彼はその手を僕たちへと振り下ろした。「神、それはこの世界の始まり、罪の始まり、そして意味の始まりだ。しかし、そんな尊ぶべきこの世界を貶めた悪魔が今ここにいるッ!」背後にいた彼らは瞬時に陣形をつくり、彼らの持っている銃を構えた。「そうだ!この貶められた世界に救済を!」部隊の中の誰かが叫ぶ。「そうだ!そして取り戻そうかつての世界を!」男を除く部隊員の全員が叫ぶ。「時間よ。そして空間よ。我が手に還れッ!そして、蘇れッ!かつての世界よッ!」次の瞬間、彼らの持つライフルの引き金が引かれる。次の瞬間、僕の隣にいた同胞の一人が胸をたくさんの銃弾によって貫かれて死んだ。僕は何が起こったのかわからなかった。

時間が伸びて縮んでを繰り返し、空間が液体のようにうねり、区切られた形から開放されていく。その姿はまるで渦のようだった。時間、空間がうねり渦を成す。そして、いつの間にか僕たちはこの渦の上に、この渦が創り出した世界の上に立っていた。その世界の中にいた僕たちの心に湧き上がってきたのは約束の希死妄想。それが僕たちの心を、そこにあった記憶を、その記憶に結びついている感動を、消して、貶めて、殺していった。そう、僕たちの見てきた今までを貶めて、今の僕たちの首を絞めて目の前にある絞首台へと(いざな)って、僕たちが見ていた未来を白く塗りつぶす。「そんな、どうして、やめてくれッ!やめろッ!」同胞たちが叫びながら、のたうち回って死んでいく。彼らはアカ黒い血を吐き出しながら死んでいく。しかし、その血がこの渦に触れた瞬間、その血は純然たる白い液体に変わっていった。その液体がこの世界を真っ白に染め上げて、死んだ者は腐り、砂状になって消えていった。

僕は走りだした。死んでいく彼らに背を向けて、助けようなんて微塵も考えることができないで。そう、僕は卑怯者だったんだ。

辺りに轟く銃声、その銃声が聞こえた瞬間に僕の体には激痛が走った。どうしてだろう。銃にあるはずの銃声から着弾までのタイムラグが感じられない。まるで、彼らがその銃の引き金を引いた瞬間、その銃に込められた弾丸が着弾しているかのようだ。僕のわき腹に、そして右腕にその弾丸は着弾して右腕はもう使い物にならない。そして、僕のわき腹から零れ落ちる血が大地を真っ白に染め上げていた。僕はその血を見て、その光景があまりにもおぞましく気持ちの悪いもののように感じてしまっていた。

僕はあたりを見渡した。彼らはうわごとのように懺悔を口走りながら朽ちて死んでいく。どうして?今更懺悔なんて出来るの?そんな僕の心を試すかのようにかつての彼女が現れた。

僕は彼女の問いかけを無視した。もう、僕には彼女の救いなんていらない。

僕は彼女の問いかけに無言という名の僕自身の意思を返した。僕はもうあなたに助けてもらわなくたっていいんだッ!そう私はもう一人で生きていける。

さあ、この絶望から逃避して、今を見続けよう。

私は物陰に隠れて周囲を観察した。どうやら、この血が真っ白に染まる範囲は決められているようだ。彼らを、そして班長?を中心としてこの渦めいた世界は展開されているようだった。そしてこの世界の中ではどういうわけかトランス能力は使うことができない。どうしてだろう?あんなに根付いていた能力だっていうのに、今の今まで能力を使う選択肢が湧いてこなかった。これは、この世界にいる時点で無意識に能力が使えないと私自身が自然と理解していたからかもしれない。どっちみち、この渦めいた世界じゃあ能力は使えない。そして彼らにこの場所が発見されてしまうのも時間の問題だ。私の武装は(M1911 )を一丁もっているだけだった。そして、どうやらここで私以外に正気なのはいないみたいだ。みんな、うわごとを繰り返す人形の様になっている。私は彼らの姿がとても滑稽に感じてしまった。「馬鹿だよね。今から逃げた選択を受け入れないで酔ってしまったからこんなことになるんだよ。今を生きることのできない奴らが幸せになるなんて甘い夢を見た結果がこの姿。かつての希望、その残骸は夢の痕。」私は物陰から立ち上がり、彼らに向けてこの銃を構えた。

続く

読んでくださってありがとうございます。

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