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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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殺人温泉~密室に真実を閉じ込めて 第二話

私の名前は五月雨丹(さみだれたな)。私が扉を開けると、そこには死体があった。そう、まるでぼろ雑巾のようにソファの上で横たわっている彼、六波羅の姿が......


もう、この光景も見慣れたものね。「フフフ。どうやら、目に見えて疲れているようね?名探偵。」

彼は事件が解決した次の日はいつも、まるで緊張の糸がほどけてしまったかのように、決まってこの一人暮らしのアパートに閉じこもってしまう。閉じこもっているときの彼は何もしなかった、いや何もできなかった。かろうじてトイレに行く以外、自室のソファの上でただ茫然と頭上を見上げているままだった。この時の彼は食事も、彼の趣味である読書ですらすることができないようだった。「やめろよ。今はただの六波羅だ......今ッ、そう呼ぶのはやめてくれよ......」私には閉じこもっている彼が、推理から開放された彼が、まるでいつも何かに追い詰められているかのように見えた。「なんでよ?かっこいい呼び名なのに......」私のそんな茶化そうと勢いをつけて出した言葉は、彼の耳に届かないで、あたりの空気にあてられて濁り淀みそして中途半端に成り果ててしまった。そして、そんな中途半端な言葉を非難するかのように彼は生気のない顔色を浮かべ、瞬き一つしない大きく開かれた瞳をこちらに向けて、ただ黙っていた。気まずい空気があたりにあふれる。私はこの空気を消し去ろうなんて考えて、彼へと向き直った。その時だった、私は見てしまったんだ。彼の瞳にうつっていた私自身の姿を……


私たちはバスに揺られ、温泉宿に着いた。バスから降りた私を出迎えてくれたのは、澄み渡った空気だった。冷たい空気、軽やかな空気、そしてそんな空気が私の鼻孔を震わしていく。私は深呼吸をしてこの空気を味わった。なんておいしいのだろう。空気においしさを感じることができるだなんて、どこか素敵ね、なんて思いながら、私は彼がバスから降りてくるその時を待っていた。しかし、彼は待てど暮らせど降りてこない。しびれを切らした私はバスの車内に戻ってみる。すると、そこには死体があった。そう、まるでくたびれた雑巾のように、椅子に腰かけてまま苦悶の表情を浮かべている彼、六波羅の姿が......


私は温泉の暖簾をくぐる彼を見送った。彼はふらふらとまるで今にも倒れてしまうかのように見えた。


彼が行った後、私は温泉に入る前に、チェックインを済ませることにした。会場は右手の通路の先の会議室のようだ。私は会議室に行くまでの道を歩いていた。廊下は結構な人がいた。コーヒ牛乳を買っている人、タオルを首からかけてゆったりとした表情を浮かべながら歩いている人々、そして慌ただしく、それでいてこの宿の雰囲気を崩さない従業員の姿。彼らの満たされているような顔を、そして彼らから発する雰囲気を感じ取った私もこの雰囲気にあてられて、どこか元気づけられたように思っていた。そう、この時の私はこの温泉宿が気にいっていた。そうだ、この温泉宿は、私のために存在していたと思ってしまうほどに、気にいっていたんだ。フフフ、まだ温泉に入る前だっていうのに......そう、私は心の中で笑って見せる。そしてはやくチェックインを済ませようと少し駆け足気味でこの廊下を私は歩いていた。しかし、それが災いしたようだ。私は同じように廊下を歩いていた誰かにぶつかってしまった。


チャリン......三つの小銭が落ちる音がした。(二枚が表、一枚が裏)


「やあ!失礼ッ!失礼!吾輩が先を見ていなかったためにぶつかってしまったようですな。ハハハ。」その男は胡散臭い男だった。その男は私にぶつかったその刹那、彼は後ろへと離れ、私との距離をつくりだした。その振舞いだけでも、私がその男に対して私が抱いた第一印象は芳しくなかったが、彼のその間髪入れずの言葉はまるで私の意表をつくかの様だった。とても不愉快、嫌に奇妙だ。私は彼をジッと見て、様子をうかがう。


「すみませんなぁ。吾輩の名前は、”四面蒼汰”と言いますよぉ。どうぞよろしくぅ。」彼は私に向かってお辞儀をした。そして彼はお辞儀をしたままで、彼の右手を前に突き出した。なんだろう?この右手は?「えっと......」私が戸惑っていると、彼はこちらを見て笑って言った。「握手ですよぉ。これから仲良くするためのおまじないですよぉ。ここに来たということはあなたも参加するのでしょうッ?協力者は多ければ多いほどいいですからなぁ。ホホホ。」嫌な感じだ。とても気持ちが悪い奴だ。私はそうな印象を、彼から漂う”い~やな感覚”を抱いていた。その嫌な感覚は警鐘を鳴らしていた。この男は危険だ。今すぐ離れるべきだって。しかし、同時に初めのうちは彼と協力関係を、たとえその振りだったとしても結んでおくのはありなんじゃないかと考えていた。私は何としても勝たなければならない、彼を巻き込んでしまったんだ。もう後には引けないんだ。


「あはは。わかりました......よろしくお願いします......」私は彼と握手を交わした。しかし、その男の手を握りしめたその瞬間、何か冷たいものがその手に触れた。円状の何かが。私は気持ち悪くなって思わずその握手していた手をほどき、私はその手の平の中を見た。しかし、その手の平に触れた何かは、私がそれを確認する前に、床へと落ちて散らばった。それは三枚の五円玉だった。


チャリン......三つの小銭が落ちる音がした。(一枚が表、二枚が裏)


私は戸惑っていた。小銭?そんな戸惑いを浮かべて固まっていた私を他所に、彼は落ちたその小銭を拾いあげていた。そして彼は私を見て笑って見せる。「すみません、先ほどぶつかってしまったとき、落としてしまった小銭を拾いあげたまま、握手をしてしまいましたな。失礼ぃしましたぁ。ところで、あなたのポケットの中にも何かが入っているようですが......」なんだっていうの?私は羽織っている服のポケットを触る。どうして?私はポケットに何も入れてないはずなのに?私はそれを掴んで、そしてポケットの外へと取り出した。その何かはすべすべした何かで、私はその意図しない質感によって、それを床に落としてしまう。


チャリン......三つの小銭が落ちる音がした。(全部が表)


私はその男を睨んでいた。「どうしましたかな?そんな睨んでもしょうがないですぞぅ!」彼は私を嘲笑う。そして彼は左手から三枚の小銭を取り出していた。


(そうか、もう始まっているんだ。このゲームは......)私は身構えた。

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

「せっかくゲームがちょうどいいところだったのにさ。」

まじないの類か、これは。

当たるも八卦当たらぬも八卦

私は自分の道を征くッ!導け、私のサインよッ!

次回 殺人温泉~~密室に真実を閉じ込めて 第三話

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