道順組立AC
日曜日配達。
現在では、到着した追跡郵便を処理するという業務になっている。
しかし、山口が今働いている時代の話ではちょっと違っている。
そして何よりも、決定的に時代が違っているのは
「おっしゃーーー!部長いねぇーー!局長いねぇーー!自由にやらせてもらうわ!」
「ヒャッハーー!好き放題するぜーーー!!ここで飯食って騒いでもいいよな!好きな時間でタバコを吸っていいよな!?」
上層部が誰一人もいない事である。
居ても課長クラスの人達であり、配達の人間が中心で回っている職場と化すため
「あーー、マジサイコー!!」
「マジで気軽に不満言えるわー!」
出勤者みんな、お祭り状態で仕事をしている。
とはいえ、そんな馬鹿共を纏める課長がいるのだ。
「お前等、ミーティングだぞ!集まれ!」
「「うーっす!」」
「話すことねぇーから!事故起こすな!以上!解散!!体操もめんどくせぇ!好きに業務しろ!」
「「しゃああっ!!」」
あのクソ長くて意味がなく、どーでもいいミーティングが1秒で終わる。なんかあった時はさすがにするけれど。基本はホントに早い。
いちお、監視カメラが動いているから仕事は見られるんだが……部長をして、『テメェ等、日曜日だけふざけ過ぎだ!馬鹿野郎共!』と、言われるような事もある。
日曜出勤は今も昔も面白い。個人的に他班との交流を深められる機会である事と、いつもと業務が異なるというのもある。
今回は日曜日における、”道順組立”を中心とした話になる。
この”道順組立”のテーマも、この日曜出勤にて終わりの予定だ。
◇ ◇
「張っちゃっけ過ぎでしょ、みんな……」
初めて日曜日に来た山口にとっては、この職場の異様な雰囲気に驚く。
平日はクソ真面目というか、嫌々に真面目にやってる連中が多かった。しかし、部長や局長がいなくなった途端、課長以下も含めて、張っちゃっけ始める。
ホントに好き放題始めるのだ。今はスマホが主流だが、ゲームとか漫画とかを職場で読んでるレベル。せめて、食堂や休憩室でやれという事も忘れる始末。
ホントに部長がいないというのは良い事だな。
課長の机を思い切り蹴られるなんて事……
ドゴオオオォォッ
「目を離したらこれだよなぁ~。お前等はよ~」
山口の日曜出勤。それを教える先生となったのは……
「まぁ、構わないんだが……。お前等、日曜日の誤配が3週連続で起こしてる癖に、その態度はねぇーんじゃないのかな~~~?4週連続になるとしたら、……見直しが必要だな?出勤、各班一人にするか?五月蠅いからよ」
「や、や、山口部長。なんでおるの」
「出勤すんじゃねぇよ、山口部長!」
山口兵多の父親にして、この局内で最も厳しい男にして、配達能力は実や木下、矢木すらを軽々と凌駕する配達員。
山口部長が息子の先生を務めるために、出勤していたのだ!
「はぁ~~、課長。ミーティングをしなさいよ。体操はしなくていいから」
「あ、はい……」
山口部長が直々に監視しているという事もあって、ミーティングを適度に行うことになった一同。
とりあえず、このミーティングからが大事なのだ。
”道順組立”をする上で、最も基礎的な事を言うだけなのだが……それでも、誤配などのミスをしているというのが現状だ。
「まずは”優先順位”を付けて業務をしてください。今日中に配らなきゃいけない郵便物、月曜日に回してもいい郵便物をしっかりと判断してください」
当時は全部、配達をしろとは言われない。出勤する配達員で判断するように言われていた。
これは出勤してる人の数が、班で1人か2人しかいないからだ。全てを配るのは基本的には無理だ。
ちなみに日曜日の後の祝日は1人で任されていた。
配らなきゃいけない郵便物……というより、優先するべき、追跡郵便の中身についてだが。
1.
時間指定日郵便・現金書留・代引き・特別送達・チケット系の書留
2.
速達・レターパック・AMAZON・切手貼付の書留系・国際書留・オークションなどでお客様が購入した追跡郵便(内容品は衣類とかが多かった印象。現在でいう、ヤフオク・ラクマ・メルカリ)。
3.
通常書留・健康食品
だいたい、こんな感じの優先順位である。
基本的に速達とAMAZONまでできてたらOKであった。(国際書留までやってたけど)
追跡郵便はその内容によって、意図がかなり違っている。
お客様が早く欲しいって思っている郵便物もあれば、届けばいいよって思っている郵便物もある。すげぇ嫌な話なんだが
『なんで日曜日に書留を届けてくれねぇーんだ!!』
「あ?なら速達書留で送れ、バーカ!俺はパズド〇で忙しいんだよ!」
『暇じゃねぇか、クソ野郎!』
これが通じた時代である(言葉はもうちょっと柔らかいけど)。日曜日に届けて欲しかったら、直接取りに来るか、差出人に直接、速達書留で送れと言ってこいと。
……とはいえ、日曜日に届けて欲しいと連絡が入れば、普通に届けにいきます。今の例は、月曜日に電話かけてきたお客様への対応です。
話しがズレるが、これが通っていた理由に。今は〇〇ウィルスが蔓延しているため、休日の在宅率がかなり高いです。昔は休日だからこそ。普段、平日に在宅されていた方が家族で外出されている事が頻繁だったのです。在宅していないと渡す事ができない通常書留は、お客様が求めていないのなら、やる理由が少なかったのがあります。(他、色々あるけど)
配達に行っても、不在になるなら月曜日の方がリスクが少ないです。日曜日に書留が多いケースはそこまでなかったため、翌日回しが基本的に多かった印象。
「えー、翌日回しの入力は。午後に帰局してから行ってくださいね。朝からやったら、お客様に気付かれてしまいます」
朝から諦めるのは構わない(やる気ねぇはダメだけど)。ただ、その入力に関しては、17:00以降を推奨される。配達員とお客様によっては、意識の違いがどうしてもあるからだ。夕方に登録すれば、お客様も『今日は無理なのか』って感じで諦めてくれる。
ただ今は、基本は全部やってこいって話になっています。
「山口部長が言うようにここのところ。日曜日で誤配が3週連続で起きてます。……まぁ、課長からはいい加減にしてください。ここに出勤する人は、役職あるなしに関わらず、代表というか業務的には班長・副班長くらいに立派な方達なので、そんなヘマはしないで頂きたい」
現在は土曜休配の関係性もあり、新人や出来が良くない配達員も出勤するが、その当時は各班の主力となっている配達員が出勤する。1人、2人で一日を回す事になるため、班内の全地域にある程度の情報を持っていないとしんどいのだ。
慣れない内は平日が良いって感じるが、慣れると日曜日はクソ楽でした(2人の場合)。
「毎日誤配する馬鹿ってのは決まっているんで、日曜日に任せるわけないでしょ」
楽に感じる1つに、ホントに失礼な話となるが、ホントによく誤配する奴等と一緒に仕事をするのはメンドくさいのだ。やらかした本人に謝罪させられるケースもあれば、別の奴を出せとか、……まぁいろいろある。
その点、日曜日は誤配する奴等が出勤しないから、当日のやらかしが基本的にはない。その上
『あのー、先週の木曜日のゆうパケットが届いてないんですけど』
『担当いないんで分かりません。差出している会社も今日お休みっすね~。月曜日にしてください』
『あ、もういいです。お前等みたいなクソ会社、死ね』
誤配対応がクソテキトーでも、お客様がOKしてくれる。
誤配というのは担当者以外が対応するというのは極めて難しい。特に追跡郵便は担当者が割り出されるので、それ以外の担当者は対応がほぼできない。追跡郵便の不着・誤配で出来るとしたら、補償問題で差出人に謝罪と今後どうするかとか……そこまでいくと、課長クラスの対応になる。結局、差出人と連絡つかないとどーにもならないから、日曜日じゃ何もできない。
誤配の場合なのだが、誤配したお客様が郵便ポストに投函して郵便局に戻ってくるというケースもあれば、誤配してる郵便物を回収してくれと、お客様から依頼される事もある。
不着の全体で、5%、2%と、薄い確率ではあるが、地域のお客様のおかげでこーいう形ながら解決する事もある。まぁ、開封されている事も珍しくないため、正当受取人は大激怒なんですが。
「日曜日はともかく、運転も含めて、”防衛”に徹してください。誤配しない。居住確認を面倒に思わず、1通1通確認する。横着しないで道順通りに配達を行う。誤配の解決は、早くても10分以上はかかります。お客様の信頼に関わるんで、お願いしますね。……じゃあ、点呼でもしますか」
◇ ◇
「じゃあ、兵多。日曜日配達の”道順組立”をするわけだが」
その前に、追跡郵便・書留などの抜出・受取をするのだが……それは省くとして。
「まず、”誤配”の話を少しする」
「部長が対応してください」
「課長と班長がやるもんだ。俺達はやらん……というのは置いといて、”誤配をする理由”について少し話す。日曜日は”追跡郵便”しか配達しないから、その理屈を覚えてないとダメだからな」
山口部長の経験から出る。
配達員が”ホントに誤配”をする理由について解説。
1.誤配の9割は配達員の怠慢である。
これはホントに残念な話ではありますが、”誤配”する原因は配達員の怠慢です。
交通事故も同じく不思議な話で、郵便物の数が少ない日の時ほど、トラブルが多いです。人間の油断こそ、ホントに大敵であり難しいです。
これは配達員個人でどうこうして欲しいのですが。
作者個人の対処法としては。
時間に余裕を持って、下準備は常にする。
慢心せずに居住確認を怠らない。
楽な時ほど、基本動作を怠らず、住所をしっかりと確認して配達を行う。
「体力勝負だけど、根気もいる勝負だ。自分が誤配多いなーって思うのなら、準備を怠らない癖を早めにつけた方が良いぞ」
「課長が誤配対応してくださいよ」
「新人だったら許すけどな、2,3年目の奴等が頻繁に誤配してたら、もう知らん」
2.誤配する原因は思い込みである。
怠慢と似ている話だが。誤配をしない配達員が意識している部分がある。
誤配をしない配達員は郵便物に記載されている住所を
”町名”、”丁目”、”番地”、”号”、……集合住宅なら”部屋番号”を見ている。
それは常にとは限らないが、”大区分”、”道順組立”、”配達時”に、確認をしている。
郵便物に記載されている”苗字氏名”で判断する事はない。というか、”苗字氏名”のみの”配達”、”道順組立”、”大区分”は絶対にしてはいけない思い込み。
このような癖は忙しい時や、暇過ぎる時に現れて、”誤配”を起こしやすくなる。
住所、苗字氏名を常にじっくりと見なきゃいけないのではなく、確認は緩めてはいない。という意識。
住所や氏名を口ずさんだり、読み上げたりなどで誤配の防止に努めてる。
苗字やいつも来る郵便物だとか、そーいうのをキッパリと忘れて、初志貫徹で業務に当たっている。
誤配をしやすい配達員は、住所を見ているが”確認”をしていない。
自分がいる配達している現在位置から、”苗字氏名”を確認するだけで配達をしてしまっている。
これが思い込みの配達というもの。
「何が性質悪いってさ。思い込みで配達する奴は、7割が自信満々の配達員だって事」
「間違えておいて、自信満々かい」
俺は”大区分”を間違えない。”道順組立”も正確だ!配達も完璧だ!
だから、配達原簿を見ないで”道順組立”、”居住確認”をできるんだ!
「そーいう性格の奴等が、基本的に誤配をしてるから……。ま、こーいう仕事は毎日同じことの繰り返しで、思い込むのも無理ねぇんだよな」
自信がある人ほど経験年数もあるもんだから、一度誤配癖がついている人を矯正するのは非常に難しい。業務内容の見直しが必要になりそうだ。
通常配達の場合。
配達ルートが決まっている事で間違えに気付きやすいのだが、休日配達は気の緩みを含め、配達ルートも各々自由にやってしまう。誤配や事故がなければ、何でもいいのは事実だが。
配達ルートを自由にしてしまうと、配達する時間を短縮できるが予想されていないミスも起こしてしまう。一例として、
「地域には同じ地域に、同じ苗字で、住所が全然違う奴が追跡郵便を頼んでるケースがあるだろ?」
「そりゃあ普通にあるな。そんなの普通に間違えない」
「そう思っていても間違える奴がいるの。”居住確認”を怠って、”苗字氏名”で確認してる癖ついてる配達員は、こーいうのを思い込んで並べてしまうんだ。ホントに冗談で言ってるんじゃなくて、マジで言ってるからな」
現在。配達員には、位置情報を随時監視されているシステムがあり、仮に追跡郵便を別の場所に配達した場合でも発見する事は容易くなったが、昔はそーいうものがなく。書留の配達証などで時刻と位置を割り出したりとアナログなやり方をしていた。
そんなやり方が通用できるのは、配達ルートがほぼ決まっている通常配達の業務なのだが。休日配達の場合、配達員がその時どこにいたかどうかを特定するのは難しい。休日配達の誤配がかなり五月蠅く言われるのは、誤配や不着をした時の発見が極めて困難だからだ。誤配や不着が発覚するのは、数日が経過してから連絡されると、担当者もまず思い出せない。
「休日配達は任される区が広くなる分、似たような住所があるって事を通常配達以上に気をつけなきゃいけない。お前だって、郵便課が区分を間違った郵便を、他区に渡してるだろ?あいつ等は信用すんな」
「作者の声だろ。それ」
同性同番地というのは、”配達原簿”に注意書きがされているものだが。区や住所が離れ過ぎると、さすがに注意を促せない。配達員個人でやってくれの状況。
一例↓
”西砂流町1丁目10-14 北川”
”西砂流町2丁目10-13-503号室 北川”
”北砂流町1丁目1-4 北川”
”砂流町4丁目11-14 北川”
”西砂流町1丁目30-22 北川”
こんな感じに北川さんという方がいる住所だけ列挙したが、……。2パスなどはしっかりと判断するのに対し、人間の目というのは不思議であり、一部分の情報や慣れ切った経験から思い込みに繋がってしまう。
ほとんどは気付くモノだが、誤配をしやすい方は
『忙しかった~(笑)』
『気付かなかった~(笑)』
という感じで、思い込んでしまう。
配達地域についたら、”苗字”だけ見て配達をするなんて事も珍しくない。
だからこそ、配達地域に行く前の、”道順組立”と”居住確認”をしっかりして欲しいと言われる。特に”道順組立”
「休日配達だと場所によっては、通らない道や届けに行かない集合住宅だってある。思い込みは絶対にするな」
「再三と五月蠅いな……」
はぁ~~~って、兵多は父親の説教染みた教え方にウンザリしていた。
思い込んで配達するわけねぇーよって、ここまで頑張って来て嫌でも身に染みている彼だった。
そんな息子に。父親である、山口部長は
ドーーーーーンッ
台車を7台用意し。そこに追跡郵便、主に”ゆうパケット”と”レターパックライト”がごちゃ混ぜに入れられた、時間指定を問われない今日配達の郵便が入ったケースを載せては
「じゃ、兵多。この班の全区の追跡郵便を、1人で全て配達してこい」
「ぶふふふーーーーーーぅぅっ!!!」
「残業していいから全部1人でやれ」
この班。7区分の追跡郵便の配達を全て任されるのであった。
「親父ってやっぱこの班の人間だな!!人間にやる仕打ちじゃねぇ!!」
「うっせぇぞ。俺は夜まで時間指定の相手をしてやるんだ。お前より遅くまで仕事してるっつーの!」
書留や時間指定をやらずであれば、250通くらいの配達で終わる事だろう。いや、それでも多くね?って思うかもしれないが
「投函で済む郵便物だけだ。俺なら時間が余ってしょうがねぇくらいだ」
「そんな簡単に終わるわけないだろ!俺は2区しか分からないんだぞ!!残り知らない5区もできるか!」
「知らないで仕事できねぇなんて言ってんじゃねぇ。お前はできる。とっととしろ。手順はもう教えてあるだろ」




