道順組立AA
「正解」
辛い夜間応援を終えた翌日。山口が珍しく、会社に早く来て実に自分のやり方をぶつけてみた。
おそらく、それも分かっていた上で
「山口くんの言う通り、2回目の再配達は1人でやるのがいいよ」
実はそんな事を後に言ったのだろう。仕組みを言う事ができても、理解するのとはだいぶ違う。これまで多く、色んなことを書いては来たが。それを実践できるまでになるかは積み重ねがモノを言う。
意地悪なって思いつつ……。さらに予測して
「今日の俺は、2回目の再配達を1人でこなしてって奴ですか?」
「勘がいいね。まさにその通り!」
日勤2人が夜間応援をする際。
1回目の再配達の時。その割合を5:5にするよりも、8:2、7:3といった具合に比率を明確にさせ、2回目の再配達を1人にさせた方がいい。
これは局までの往復時間を短縮する事はもちろん。
「2人に分けるって行為。区のバランスによっては偏りやすいです!AMAZON当日便は例外ですけど、再配に限ると、全地域を回っても本数はそう多くない。それと、1回目の再配達の郵便物の19:00~以降の指定は、……いない確率が高すぎる!」
「よく分かってるね。ホントに嫌なこと言うね」
2回目の再配達は、17:00~19:00以降に依頼された、19:00~以降の指定である。これは当たり前の話であるが、2時間前に自分が頼んだことを忘れるお客様というのは、極めて少ない。2回目の再配達の方が配達完了が多くて、業務がスムーズに進むのだ。
昨日。無理だと思っていた山口だったが、お客様の”在宅率”がかなり良くて不在を切らなかった事が超勤オーバーにならない要因だと感じた。
再配達の不在は、通常の不在と異なって、時間が掛かってしまう。お客様が頼んでいるのにいないという事態は想定していても、すぐには実行できない。呼びかけやインターフォンの回数が増えたりもする。
「それじゃあ、再配依頼の、”時間”の仕組みを話そうか」
「そうして、話しを繋げるんですか……」
「結構、重要なんだよ?この法則は頭に入れておくと、通常配達でも役に立つし」
今でこそ、不在票に当日再配の締め切り時間というのが記載されているのだが、昔は記載されてなかった。色んな方がそれに文句を言ってたと思います。
「当日の、その不在を切った郵便物が、どの時間で再配されるかを知っておこうね」
昔の、結構昔の基準で話すが(うる憶え)。
当日の再配に関しては、
午前指定。当日、9:00までに希望が可能。(うる憶え)
12時~14時。当日、12:00までに希望が可能。
14時~17時。当日、14:00までに希望が可能。
17時~19時。当日、17:00までに希望が可能。
19時~21時。当日、19:00までに希望が可能。コールセンター経由が有りなら、21:00までOKだったぞ(笑)。
「今(当時)の基準だと。ホントにビックリするけど、不在を入れて、5分後くらいには再配依頼してお伺いするのも珍しくなかったよ」
「それが可能なくらい人もいたんですか」
「まぁね。大事なのは、”お客様が依頼可能となる時間”だよ。例えば、10:00に不在票を投函すると、12:00~の再配が起きてもおかしくはということだよね」
「それがどーいう感じに……?俺もたまに電話をもらうけど」
「午前持ち出しの郵便物、認印をもらう書留を10:00頃に回ると再配の危険がある。12:00過ぎにお伺いすれば、持っている書留の再配のリスクが大きく減るって事だよ」
現在でもよくあること。不在票を入れるなって話ではない事は肝に銘じて欲しい。
いるかいないか分からないようなお客様のところに、10:00頃にお伺いするというのはリスクしかないのだ。
再配の郵便物を見る時、住所や再配時間を見るのも大事だが、再配の依頼時刻を確認するのもとても大切なのだ。特に当日の場合、自宅で依頼をされている。
「午前中のルートでどー考えてもポストに入らない、大きな郵便物があったりするだろう?それが絶対に居るとか、絶対に居ないとかが分かると、業務の負担は大きく減る。そーいう郵便物でやっちゃいけないのは、”午前も持ち出しして、午後も再配達で持ち出すこと”。これは、絶対にマイナス業務になる。夜間再配は嫌だなーって思うけど、地域のお客様事情を知れるのは、夜勤業務が一番覚えやすいよ」
不在通知を入れた郵便物が、次の時間指定で再配達になる事は……夕方・夜間を除くと、1時間以上はかかっているケースが多い。
10:00~11:30に不在通知を入れた郵便物の、再配依頼時間というのは、12:00を過ぎている事が多く。逆に12:00頃から不在通知を入れた郵便物は、そもそも配達完了が多くて再配になりにくい。再配達になっても、17:00~以降にしてくれてる。
「お客様の心理的な話だけど、再配を依頼するまでに時間的な余裕があるからね。夕方までに頼めばいいやっていう」
「あ~。そうすりゃ、日勤者じゃなくて、夜勤者が再配に行くから、不在を入れた日勤の負担は減るってわけですね。基本的に日勤と夜勤は担当が違うから」
夜間応援が確定している場合は、大きくて面倒な郵便物を夜間でお伺いする配達員もいる。1回で捌けたほうが楽だし。
「夕方や夜に当日再配を頼む人って、締め切り時間を気にしてるからね。16:40に入れた不在を16:58に頼む人ってかなりいるから」
「たぶん、在宅してたろ」
「この他にも、進研〇ミが分かりやすいかな。子供向けの郵便物って事は、平日の子供って学校に行っているから、午前に持ち出しても捌けないよね?こーいう判断はできないとまずいよ」
◇ ◇
ブロロロロロ
今。夜間応援、1回目の再配達をやっている最中。感覚が麻痺してきたが、山口。4日連続の夜間応援である。ちなみに明日も夜間応援だ。
今回の方法は、2回目の再配達を1人でやるという内容だ。
実も、その時に自分がいないため。山口に注意点を事前に伝えていた。
「今回の場合は、局に19:20に戻って来なさい。それでAMAZON当日便の”居住確認”を必ずしてください。実際、する暇ないんですけど」
AMAZON当日便を作者が異様に嫌ってる理由はホントにいくつもあって……。
まず、時間がない中でも居住確認をした方が良いです。
現状のAMAZONを配る業者も薄々気付いていると思っているんですが、お客様って”前回の住所をそのままにして、注文をしてらっしゃる”ことが多いです。AMAZON以外でもそうなんですけど、”追跡郵便”や”ゆうパック”などでやられると、業者と差出人からするとかなり迷惑なんです。
ただでさえ、料金を上げて対応しているので、お客様のミスで配達が出来なくなると、そこそこの問題になりやすく。こちらも恥ずかしい話、旧住所に配達する配達員というのはかなり多いです。
「郵便局の嫌な事は、こーいうケースの場合。郵便局は滅茶苦茶叩かれるんです。逆に、他の業者は叩かれないんですよ」
転居のやり取りがあるので、それを対応してこその郵便局だろって言われる話です。
「あと。集合住宅だけですけど、部屋番号を忘れるケースも多いんです。小規模の集合住宅はこれ多い。……一軒家の並びですと、夜間帯ですから表札もロクに見えないんで、周囲の情報を知ってた方が楽ですよ」
クソ忙しいのに居住確認をするというのは、ロス以外の何ものでもない。多くは時間指定こそなかったが、だからこそ間違えない業務をする余裕は作るべきこと。
「それと自分が捌けない量がきたら、必ず、現地にいる私に連絡を入れなさい。19:30~19:40までなら受付ます。ただし、10通ほどが限界です。基本は自力でなんとかしろ!」
2回目の再配達”だけ”をお伺いするのは、決して難しくないのだが、数が多いと回り切れない。ホントに多い場合は、まだ勤務中の日勤者をもう1人、2回目の再配達の応援として出させるのであるが……。今日はそんなに物数がないし、木下と矢木もいないため、そーいう配慮が班内でできない。
そんな時は上司に全てをぶん投げろ!応援体制をなんとか作ってくれるはずである。
色んな技術や配慮をしたところで、人生と同じことだが
「結局は”運頼み”です。2回目の再配達は”お客様が必ず在宅してる事”と、その総数が少ない事が前提です!」
めっちゃ酷いが。現場も管理者も上層部も、これに関しては運頼みだろう。
2回目の再配達が多い時も、警戒をしてくれというのは、日勤者にさらに残業をさせるという事なのだ。それ自体に違法というのはないのだが、警戒という事だけで残業をさせる予算がない。
実際、少ない日もあるし。結局、出される事も少ない。山口の所属の班がキツイというだけで、軽い班にとってはそーいう運とかも必要ない。終わるから。
そして、こーいう”運頼み”をなるたけ避けたい。避けるべき手段として、最良の選択が
「できる奴に、日勤から夜勤をやってもらうこと」
できない奴に夜間応援を任せると、2回目の再配達にも応援が必要になってきて、残業も嵩むし手のうちようがない。
キツイ事を実は、山口に注文をしているが。そーしてくれないと、現場が困る。本人が困ったところで、実や木下、矢木からすれば。知ったこっちゃねぇ、であるからだ。
書留を道順に並べ、定形外・ゆうパックなどを整理し
「しゃあ!」
山口は飛び出していく。
こんなキツイ班にいると非常に目をつけてしまうのが、仕方ない。明らかに”2回目の再配達”から班の格差が大きく現れる。
通常の業務だと、隣の班の様子を確認するのが限度であるが、夜勤の業務だと、全班の様子が嫌でも分かってしまうのだ。並べられる再配の郵便物・書留の総数など。……正直、見たくない。
これはどうしようもないのだ。正直に所属にされた場所が悪いと思って欲しい。
今現在は、窓口の業務時間が19:00まで短縮されているのだが。この当時は24時間窓口が空いており、不在の荷物を受け取る事ができたのである。これは非常にお客様から有り難く、任されている窓口担当に人にとっては非常に困ることだった。夜勤の方が人数が少なく、その内容も不在を受け取るだけに限らず、クレームなども色々とある。
「あーーーっ」
他の局がどーなのかは、作者は知らないのであるが……。
窓口業務の人は、”局から遠い配達地域”の担当者には割と優しい。一方で、局から”近い配達地域”の担当者には厳しい。
局から近いほど、お客様が取りに来てくれるからである。それは再配の数が減るという有り難い事なのだが、再配の本数は遠い地域の方に偏る。そして、
「あんた等ねぇ!いい加減にしなさいよ!!」
「すんません。ホントに……」
クレームも非常に来やすいのだ。拠点が近いと直接足を運んで文句を言う人が多く、それを窓口が受けるというもの。行列ができていれば、とっとと郵便物を出せや。
「ラーメン作ってんじゃねぇんだからよ!!」
「急いで持って来なさいよ!」
「さっさとしろよ!」
ATMのご利用なども含めて、夜間のゆうゆう窓口さんは対応に追われてる。回転率を上げようにも窓口の数にも限界があり、それにイライラし出す人は大勢。身分証明書と不在票の確認。事前のご連絡がないで来たりなど……色々とあるというのに、お客様は分かってくんねぇし。
「あー、あいつ等。ホントに大変だな」
「そーっすねぇ~」
仕事がないわけではないのだが、窓口で荷物を受け取りにくる率が高いから、夜勤業務が”近い配達地域”だと凄く暇をしてる。同じ本数でもそっちが早く終わるのに、明らかに少なすぎるのだ。(今でもかなり差がある)。
「21時まで何してよ」
「あー、ホントホント」
山口の班と、4倍・5倍ぐらいは夜間再配の数に差がある。20:30頃まで食堂で野球中継を見てたり、当時はDVDのポータブルプレーヤーで、エロ動画を視聴する人がいたくらいだ。それして給与もらえるなんて、いいよな、おい!
……という心の声もあるんだが、”近い配達地域”にも苦労はあるので許して欲しい。
お前のところは、夜勤が2人配置じゃんとか、言われたりもしたが。人員削減で夜勤が各班1人配置に変わった途端に地獄と化した。
「近いところ、夜勤禁止な!」
その後、再配時間を見直した際。夜勤の勤務時間の見直しも図った。特に近いところ。
「お前等、20:10~21:00まで、何もしてねぇだろ!!」
「しょうがねぇじゃん。再配終わっちゃうんだから」
20:00~以降を考慮すると、定時も21:00にして欲しい。それは山口みたいな遠い班だと、有り難いのだが。近いところだと、勤務時間というか拘束時間が長すぎるのだ。通常の業務でもそうだが、どのようにすればいいか、判断が難しい話。業務量の差というのは、明確な数字も出されているけど、良い改善はないと思う。
悔しいけれど、耐え忍びつつ、実力をあげるのが、妥当なものか。
◇ ◇
「うおおおおお!!」
19:42に現地到着。
ミスがなければ終わる。郵便物の住所を確認する余裕もない。頭の中に描いた、配達ルートを動作で表現するのみに集中する山口。
「うへー。この子、おっ〇いでけー」
19:43。
エロ動画もいい感じな展開になって、盛り上がってくる場面。
「すみませーーん!郵便局でーーーす!!書留でーーす!!」
20:00。
インターフォンを鳴らしているのに、出てくれないお客様に対し、デカイ声を張り上げ、
「ごめん、聞こえなかったー」
「判子かサイン!あ、もうサインしてください!取りに行かないで!」
ちょっと高齢のお客様を急かせるようにサインをさせる山口。
『〇く。〇っちゃううぅっ。ああぁっ、利樹の〇〇〇が』
「ぐへへへへ」
『これっ、感じちゃうよおぉぉっ』
20:00。
ヘッドフォンから漏れてしまう、甘くてエロい女性の声が画面と共に激しく揺れ
ドゴオオオォォッ
「エロ動画視聴してねぇで、さっさと夜間再配に行きやがれ!!」
夜勤の課長・管理者がブチギレる。
テーブルを蹴り飛ばすのも日常的。
サラっと局の電気代使って、DVDプレーヤーを充電してんじゃねぇ。ってのもある。
そんな上司の怒声もサラリと自分の状況を使って、構わないだろって答える。
「しょーがねぇだろ。20:00~のAMAZON当日便が5つもあるんだ。20:00頃にお伺いするのはいいけど、不在になったら客と窓口に迷惑行くんだから、20:20に現地着けばいい。20分で周りきれるから、20:15に出発できれば、21:00には終わる。定時で上がれば、文句ねぇだろ」
往復距離というのはホントに馬鹿にならない。
信号待ちにもイライラなんかしないのだ。
もっと言うと、これまで色んな工夫や細かいことなどを書いてきたわけだが。
そんな事を覚える必要性なんてないのだ。
地域のポストの位置や順番を覚えていれば、通用してしまう。




