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来る者拒まず、去る者追わず

「お、お前は……」

理科準備室に行くと、銀田弓矢先生がもう帰ろうとしていた。

仕事、真面目にする気あるのかな……?

「二年C組の、出席番号36番の宵草(よいぐさ)(りん)です」

「そうそう、宵草な。んで何の用?」

これ、生徒に対する態度……?

私はツッコミたいのを押さえて息を吸い込んだ。

「……ちなみに、さっき会ったんですけれど?」

「そっかー?」

「そうです。ちゃんと先生に先週、部活の入部届出しましたよ」

「んでんで?」

「……その態度、ワザとですか?」

「あ?」

銀田先生の目が鋭くなった気がしたのは、気のせいだろうか。

夕陽をバックに先生の顔の印影が強く出ている。

「……生意気言ってすいません。でも、先生のその態度。どこか本気でやっている気がしないんです」

「宵草凛」

銀田先生は突然私の名前を、フルネームで呼んだ。

「はい」

私は返事をする。

「生徒との親睦名義で、一緒にラーメン食ってこうかな」

「は?」

「いいから、来いや」



そして、学校近くのラーメン屋〖まるきゅー堂〗。


「……」

「宵草、塩ラーメンのびるぞ」

私は、塩ラーメンより豚骨ラーメンの方が好きなんだけどな……。

でも、先生の奢りだ、食べないと勿体ない。

「いただきます」

手を合わせ、挨拶をきちんとする。

湯気が立つラーメンを啜る。

「……美味しい」

「だろ?」

「先生」

「なんだ?」

先生は、醤油ラーメン大盛りを啜っている。

器用にネギを除けているのは、嫌いなんだろうか。

「部活のことで、聞きたいことがあります」

「おう、なんだ」

「弓道を、私はやる為に入部しました。でもあれじゃ……。部活の意味がないと思います。私は弓道がやりたいんです」

「……」

「先生!」

「"来る者拒まず、去る者追わず"」

私は首を傾げる。

その言葉は……。

「お前が弓道をやりたい気持ちは分かった。お前が、あの部活に幻滅したなら去っても構わないぞ、俺は」

「な!」

口をパクパクさて私は箸を落とす。

何てことを言うんだろう!

生徒も生徒だが、教師も教師だ。いや顧問もか。

どうして、私は本当に本当に。

「弓道がやりたいんです」

繰り返し、私は主張する。

「……。分かった」

銀田先生は、何かを決めたように言った。

「一週間後、市の大会がある。()()()()()()

「はい⁉」

「滑り込みで申請しておいてやる。じゃあな」

「待って、先生ってば!」

私の叫びも聞かず、先生はお店を出ていってしまった。

醤油大盛りラーメンは、ネギ以外は綺麗に平らげられていた。

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