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思惑

 裸子植物《らししょくぶつ》の天敵《てんてき》であった大型《おおがた》の草食恐竜《そうしょくきょうりゅう》はいない。そのため、高《こう》CO2濃度《のうど》を好《この》むかれらの天下《てんか》になると思《おも》われた。しかし、人間《にんげん》も黙《だま》って見過《みす》ごしていたわけではない。日本《にほん》では花粉《かふん》の少《すく》ない品種《ひんしゅ》を開発《かいはつ》した。アメリカでは、熱波《ねっぱ》の影響《えいきょう》で森林火災《しんりんかさい》が多発《たはつ》していた。中国《ちゅうごく》は、大量《たいりょう》の木材《もくざい》を切《き》り出《だ》し、輸出《ゆしゅつ》を始《はじ》めた。

 森林《しんりん》の代《か》わりに果樹園《かじゅえん》を広《ひろ》げ、豆《まめ》や稲《いね》などCO2を吸収《きゅうしゅう》してくれる植物《しょくぶつ》の栽培《さいばい》にも力《ちから》を入《い》れた。被子植物《ひししょくぶつ》も人間《にんげん》を味方《みかた》につけようと、より魅力的《みりょくてき》な果実《かじつ》をつけるようになっていった。


 他《た》の生物《せいぶつ》は人《ひと》と植物《しょくぶつ》の戦《たたか》いを横目《よこめ》で見《み》ながら、より効果的《こうかてき》な戦略《せんりゃく》を練《ね》っていた。温暖化《おんだんか》によって爬虫類《はちゅうるい》の大型化《おおがたか》した。これに脅威《きょうい》を感《かん》じたのは小型《こがた》の草食哺乳動物《そうしょくほにゅうどうぶつ》である。ワニやトカゲなどの変温動物《へんおんどうぶつ》は環境《かんきょう》に左右《さゆう》されやすい性質《せいしつ》がある。長《なが》い間《あいだ》、地球《ちきゅう》の寒冷化《かんれいか》により押《お》さえられていた個体数《こたいすう》が、温暖化《おんだんか》に伴《ともな》って爆発的増加《ばくはつてきぞうか》に転《てん》じた。特《とく》に天敵《てんてき》の少《すく》ないワニの類《たぐい》の繁殖《はんしょく》が目立《めだ》った。ワニが増《ふ》えれば、その玉子《たまご》を狙《ねら》う蛇《へび》も増《ふ》える。やがて、より効率《こうりつ》のいい家畜《かちく》へと狙《ねら》いを変《か》え始《はじ》めた。中型《ちゅうがた》の草食獣《そうしょくじゅう》にとっても畑《はたけ》や果樹園《かじゅえん》の作物《さくもつ》や樹皮《じゅひ》は魅力的《みりょくてき》だった。かれらもまた彼《かれ》らを嫌《きら》う人間達《にんげんたち》との戦《たたか》いに加《くわ》わっていった。


 シナプスたちは人《ひと》のいない砂漠《さばく》など内陸部《ないりくぶ》で裸子植物《らししょくぶつ》の繁殖《はんしょく》を行《おこな》っていた。彼《かれ》らは数体《すうたい》から十数体《じゅうすうたい》の集団《しゅうだん》で活動《かつどう》する。そして、この活動《かつどう》を密《ひそ》かに助《たす》ける人間達《にんげんたち》がいた。アルマを神《かみ》とする神獣組《しんじゅうぐみ》。かれらの役目《やくめ》は、シナプスが人間《にんげん》に見《み》つからないようにすることだった。なぜ、そんなことをしたのかということを一般人《いっぱんじん》が知《し》るのはもう少《すこ》し先《さき》のことだった。


 こうして、地上《ちじょう》の派遣争《はけんあらそ》いは大《おお》きくいくつかに分《わ》かれていた。この時点《じてん》では、まだ動物《どうぶつ》たちは植物《しょくぶつ》の代理戦争《だいりせんそう》をしているように見《み》えた。しかし、被子植物《ひししょくぶつ》はやがて選択《せんたく》を誤《あやま》ったことに気付《きづ》く。それは人間《にんげん》が果実《かじつ》から最《もっとも》も大事《だいじ》な種《たね》を次々(つぎつぎ)と消《け》し去《さ》っていたからだ。種《たね》が無《な》ければ自力《じりき》での繁栄《はんえい》はない。自分《じぶん》たちが動物《どうぶつ》をコントロールしていたはずが、いつの間《ま》にかコントロールされる側《がわ》になっていた。

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