↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/116

第四章 対決 三

 軍権を一手に握っていた宇文護は、すっかり現状に安心しきっていた。

 皇帝ようは愚鈍で優柔不断。そして自分の言うことになら、何であろうと頷くのだ。


 楊堅ら先帝の旧臣も、宇文護に従順に過ごして早十二年。

 仕事を投げ渡しても迅速、確実にこなすので随分と楽になった。


 外憂はまだ多いが、国内は全て掌握した。

 ――――宇文護はそう確信していた。


 悩むとすれば、このまま皇帝を傀儡として使っていくか、それとも禅譲を迫って自分が帝位につくか。

 そんなところである。


 一方、裏では楊堅たちによって宇文護の暗殺計画が進められていた。

 もちろん、本人は全く気付かずのままである。


 伽羅の策はというと、どうやら成功にこぎつけられそうであった。

 翌日の午前には出立した伽羅であるが、数刻後には皇太后の宮殿から戻り、従者の手も借りず、裳裾さばきも鮮やかに軒車から降り立った。


 洗沐日(休暇)のため館に待機していた楊堅は、家人からの知らせを聞き、自ら門まで迎えに行った。

 伽羅は楊堅を見つけると、


「皇太后様のご協力を取り付けてまいりました」


 そう言って、麗しいおもてに笑みを浮かべた。


 こんなときであるのに楊堅はやはり、その笑みに見惚れてしまう。

 多くの子を生んではいるが、人を惹きつけずにはいられぬ類稀な美貌なのである。


 しかし、詳しい話を聞かされた楊堅は、思わずのけぞりそうになった。

 妻が規格外であるのは楊堅もよく承知していたが、そこまでとは思っていなかったのだ。


「いかがでございましょうか? 

 皇太后様は納得して下さいましたが、あなた様は、下策だと思われましょうか?」


「あ、いや……その策であれば、成功の確率は高いだろう。

 しかし『なんと言って』皇太后様を説得したのやら」


「まあ。わたくしも皇太后様も『母親』ですもの。

 母は子の幸せのためになら、大抵のことは出来るものですわ。

 それに皇太后様は、むしろ乗り気のご様子でしたのよ?

 策の細部は、皇太后様のご希望を優先して変更しておきました」


 伽羅は益々にっこりと微笑んだ。


 結局、楊堅はその策を良しとし、次は楊堅が皇帝邕に冷や汗をかきながら報告することとなった。

 ようは楊堅よりもたらされる吉報を心待ちにしていたが、さすがに吃驚したようだ。

 長き忍従の果てに、最後を飾る策がこのようなものだとは思ってもいなかったのだ。


 しかし、気を取り直すとこう言った。


「いや、宇文護めの最後には、このような場がふさわしいのかも知れぬ。

 位を極め、太師たいし(この場合は宰相と同意)にまで成り上がったあ奴が、このような最後を遂げるかと思うと、胸がすくではないか」


 そうして『女人の奇想』に苦笑いしながらも、お互いうなずきあったのである。



 さて、わが身の危険を知らぬ宇文護が、いよいよ地方巡回より国都・長安に戻ってきた。

 翌日には早速、皇帝との謁見を行うべく皇宮に参内した。


 形ばかりであっても、まずは皇帝に拝するのがしきたりである。

 だが、やはりというべきか、そこかしこに侮りが見える。

 豪奢に着飾った姿をことさら強調して、上からものを言うのだ。


 皇帝邕はそれを苦々しく思っていたが、面には出さずに宇文護をねぎらった。

 そうしていかにも頼りなさそうに、そう、いつものごとく――――宇文護に相談を持ち掛けたのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=565178620&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。