とある電車の車中にて
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃい」
私は友達と一緒に大阪まで、ローカル線を使った女子旅を企画した。
話といえば他愛もないものばかり。
就職のこと、恋人のこと、自分のこと、友達のこと。
私はあまりおしゃべりな方じゃないけれど、
おしゃべりな友達と一緒ならずっと飽きずにいられる。
私たちは向かい合わせで通路側に座っていたんだけど、
窓際に女性が一人、私たちよりも年上で私の親ぐらいの人。
その人は小さな顔写真入りの額縁を窓枠に置いて、
ずっと外の景色を眺めていたの。
私はなんだかその人が気になって、ふと声をかけてみた。
「お一人ですか?」
「ええ、まあ」
「どちらからいらしたんですか?
私たちは大阪まで行こうと思ってるんです」
「あら、新幹線を使えばいいのに。若いって良いわね、羨ましいわ。
私は東京から来たの。友達がせとうちを好きって言ってたから」
「そうなんですか」
「友達がね、せとうちの夕日はとてもきれいだって。
私もどんなものかと思ってね。彼女、夕日のことをなんて言ってたのかしら。
忘れちゃったんだけど」
私はパパが話していた、せとうちの夕日のことを思い出した。
でもなぜか言うべきではないと思った。
言ってしまうとなんだか意地悪な感じがして。
ちょうど、映画が始まってすぐにラストシーンをばらされる気分かな。
「せとうちの夕日はとてもきれいですよ」
「そうなの……楽しみだわ」
そういってその女性は小さな額縁に収められた写真を見つめていた。
電車は停まり車内が静かになった。
開いたままのドアからは人影はなく、かすかに波の音が入って来ていた。
「私はここで失礼するわ。話に付き合ってくれてありがとうね」
「こちらこそ、良い旅を」
「あなたたちも、良い旅を」




