第67話「黒海都市ヴァルカ」
黒海都市ヴァルカ。
港は騒がしい。
だがグランデルの港とは違う。
怒号。
酒の匂い。
血の匂い。
荷札はない。
契約印章もない。
代わりにあるのは、武装だ。
桟橋には奴隷が並ばされていた。
鎖。
焼き印。
商人が値をつける。
「この女は航海経験あり」
「こっちは農作業」
値段は簡単に決まる。
交渉は短い。
なぜなら契約がないからだ。
「金を払え」
「嫌なら帰れ」
それだけ。
ヴァルカは黒海同盟最大の都市。
海賊都市。
だが同時に巨大な市場でもある。
市庁舎の屋上。
一人の男が港を見下ろしていた。
鋭い目。
短い黒髪。
名はラグナー・ヴァルカ。
黒海同盟の実質的支配者。
部下が報告する。
「協議会商船三隻、無事拿捕」
ラグナーは笑う。
「抵抗は?」
「ほぼ無し」
「賢いな」
部下は続ける。
「世界基準の印章を持っていました」
ラグナーは興味深そうに聞く。
「透明契約とかいうやつか」
「はい」
ラグナーは紙を受け取る。
そこには整然とした契約。
利子構造。
責任者。
航路。
すべて書かれている。
ラグナーは吹き出す。
「正直すぎる」
部下が言う。
「連中はこれで世界を変えるつもりらしいです」
ラグナーは港を見渡す。
奴隷市場。
密輸船。
傭兵。
「世界は変わらない」
低い声。
「強い奴が決める」
彼は命じる。
「船を返すな」
部下が驚く。
「身代金も?」
「いらん」
ラグナーは笑う。
「メッセージを送る」
「なんと?」
ラグナーは海を見る。
遠くの水平線。
「世界基準はここでは通じない」
その頃。
グランデル。
レオンは黒海同盟の情報を読んでいた。
奴隷市場。
海賊経済。
暴力信用。
ガルドが言う。
「軍を出すか」
レオンは首を振る。
「それが相手の土俵だ」
エリスが問う。
「では?」
レオンは静かに言う。
「基準の戦争だ」
港の向こう。
カイナの船団が準備を始めている。
外洋連盟の船。
速い船。
黒海へ向かう航路。
カイナが笑う。
「面白くなってきた」
レオンは海を見る。
世界基準は作った。
だがまだ。
世界は納得していない。
黒海。
そこは秩序の外側。
だが。
秩序は、外側で試されて初めて意味を持つ。
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