第56話「炎の中の影」
白炎教団の宿営地。
白い天幕が並ぶ。
その中心で、議論が起きていた。
「利子の分解など欺瞞だ」
強硬派の神官が言う。
「罪は罪」
だが、別の声が上がる。
「では飢えはどうする」
若い神官。
名はルシア。
「融資が止まれば、救済も止まる」
強硬派が睨む。
「神は救う」
「神は船を動かしません」
静まり返る。
白炎教団は一枚岩ではない。
利子は罪。
だが“現実”は存在する。
その頃、会議場。
レオンは再定義案を提示していた。
「利子を三つに分解する」
・時間価値
・リスク対価
・独占利潤
「独占利潤は制限する」
「時間価値は透明化」
「リスクは共同体共有型へ」
ヴェルドが指を組む。
「制度化できますか」
「可能です」
エリスが補足する。
「監査機関を設置します」
アレクシスは静かに呟く。
「利子を神から取り戻すか」
セラフィナは黙っている。
彼女の中でも揺れがある。
夜。
港で暴動未遂が起きる。
信徒が利子拒否を主張し、
商人が殴り合い寸前になる。
その間に割って入ったのは――
ルシアだった。
「待ちなさい!」
若い声。
「神は争いを望まない」
強硬派が叫ぶ。
「裏切り者か!」
ルシアは震えながら言う。
「神の名で市場を壊せば、信仰は嫌われる」
その言葉は重い。
信仰は強い。
だが孤立すれば消える。
翌朝。
白炎教団内部で分裂の兆しが広がる。
強硬派。
穏健派。
セラフィナは一人で祈る。
炎が揺れる。
神の秩序は絶対。
だが人の世界は複雑。
その頃。
帝国旗艦。
ヴェルドが静かに言う。
「宗教は揺れ始めました」
副官が問う。
「介入しますか」
「いえ」
穏やかな笑み。
「揺れを待ちます」
だがアレクシスは違った。
「放置すれば、帝国も燃える」
ヴェルドは目を細める。
「殿下は信仰を恐れますか」
「恐れるのは暴発だ」
帝国内部にも信徒はいる。
火種はどこでも燃える。
会議場。
レオンは静かに言う。
「世界基準は、誰かを排除して決めない」
セラフィナが顔を上げる。
「我らも並ぶと?」
「並びます」
「だが強制はしない」
炎が揺れる。
信仰。
恐怖。
信用。
流動。
四つの秩序が、均衡の縁に立つ。
世界はまだ決まらない。
だが今。
白炎教団の中で、
初めて影が生まれた。
思想は、割れ始めていた。
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