血まみれのラブレター
”最期のラブレター”は、朱色に変色していた。
「・・・ハァ。ハァ・・・。ハァ・・・」
息が、苦しくなる。
段々と、私の呼吸も止まりそうになっていく。
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愛した女性がいた。
同じ会社に勤める同い年の女性で、社内ではそこそこな人気を誇る美人さん。
複数人の男が彼女に堕ちている中の一人である私、柴田 優生。20歳になったばかりの社会人2年目。
そして、私の席の隣の、噂の宮音 遥さん。
同期であって席が隣であるからか、割と仲がよい方だと思う。
勿論、そんな好機を逃すはずもなく、彼女のことを好きになった日からアタックし続けた。
「遥さん!よかったら、一緒にご飯いきませんか!?」
「えっと、胡桃さんと行くので大丈夫です」
最初は、断られたりもした。
そりゃそうか。
社内で、そこそこモテているのなら、きっと学生時代も告白された数は両手ですら埋まらない数にまで昇るんだろう。
でも、機会があれば私は遥さんに話しかけていた。
「んー。どうしよう.....」
「どうしたんですか?」
「えっと、この図表の使い方がわからなくて」
「あぁ。これですね。これをこうすれば・・」
「わぁ!ありがとうございます!!」
このとき、PC系の資格を取っておいてよかったと思えた。
そんな感じに、困っていそうであったら手助けをする。なんていう、些細な事でも関わる機会を増やそうとしてみた。
その努力が叶ったのか。
半年経った頃、随分と仲良くなった私と遥さん。
意を決した私は、遂に遥さんに告白してみることにした。
・・・場所は、空に届きそうなビルが多数見られる公園のベンチ。
思い出せば、懐かしく感じる。
その日は夜だった。
冬に入りかかった頃......ということもあってか、肌寒い日であったことを今でも鮮明に覚えている。
そんな日に、私は告白をした。
「遥さん。私は、遥さんが好きです。
仕事をしている姿も、談笑中に笑う姿も......。
私は、遥さんの内面とその綺麗な笑顔に惹かれました。
好きです。付き合ってください」
数秒の間、沈黙が辺りを漂った。
振られる。かと思った。
・・・が。現実は大逆転劇を見せた。
「ありがとうございます。私も、貴方の事が好きです。
面倒見が良くて・・・。私がずっと昔から思い描いていた理想の男性にピッタリでした。
私で良ければ・・・付き合ってください」
「ほんとですか!?や、やったーーー!!」
心の底からの喜びが漏れた。
それほど、嬉しかったからだ。
だからこそ、その日は安心して眠ることができた。
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あれから2年。
彼女との交際はうまく続いていた。
いろんな話をした。
結婚の話。子供の話。将来家を置く場所の話。
何をするにも、楽しかった。
その頃になって、私は、そろそろ遥さんにプロポーズしようかと悩んでいた。
「どうしようかなぁーー」
「お前なら行けるって!!これまでずっと遥さんと仲良くしてきただろ。
恐れるな。絶対行けるから」
「そうなのか?でも・・・」
「なんでだよ・・・。お前、そんなに鈍感だったのか?」
私の同期、和樹がいつも相談に乗ってくれる。
ほんとに、助かる限りだ。
「心を決めろ。はやく結婚するんだ」
「・・・そうだよな。私は男だもんな」
「あぁそうだ。彼女と一生を共にする決意を固めるんだ。どれだけ、遥さんのことを好いているんだ?」
「そりゃあ、これ以上にないほど・・・”概念”をも越すほどに愛している」
「だったら、プロポーズをするんだ」
「わかった。今日指輪を買って、明日実行することに決めた」
「おう。幸せになれよ」
「ありがとう」
親友のお陰で、遥さんにプロポーズをする決心がついた。
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今日が、プロポーズをする日。
場所は、私たちが付き合ったあの場所。
時間は夜。
季節も一緒だ。
私の体に当たる冷たい風に少し震えながら、愛する彼女を待つ。
・・・待つ。待つ。
・・・ただひたすらに、待つ。
待ち続けて、2時間が経過した。
約束の時間から2時間が過ぎている。
「おかしいな」
彼女の性格上、急用が出来て行けなくなった時でも、何かしらの連絡を入れてくれるから。
もしかしたら、何かあったのか・・・?
「やめてくれよ」
その”何か”がなかったことを願いながら、彼女を待つ。
・・・すると。
<ピロン>
スマホに、一通のメッセージが入った。
その内容を確認してみると・・・。
「・・・大好きだよ。最期に、伝えられてよかった」
「・・・は?」
待て。まてまて。
まさか、本当に何かがあった・・・?
「っ!!」
そう考え始めたときには、もう体は動き出していた。
「っ・・・ハァ。ハァ・・・」
息が切れながらも、彼女を必死に探す。
つかれる足を止めずに。
・・・・・・やがて、少し距離が離れたところで。
「ッ!!!・・・あぁぁぁぁあああ!!!は、遥!!」
そこには、血まみれになった遥の姿がたしかにあった。
信じたくない。
嫌だ。
やめてくれ。
見せないでくれ。
夢であってくれ。
全てを願う。
宮音遥に、何もなかったんだ。
と、私自身が思い込ませてくる。
「遥・・・?」
「ちょっと!!」
警察の人に止められそうになるが、そんなのを無視して私は彼女に触る。
「・・・嗚呼」
彼女の体は、既に冷えきっていた。
それは、寒さでないことが一瞬で判った。
その次に、近くに落ちていたそれが目に入る。
「あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・!!!」
涙が、込み上げる。
必死に我慢していた涙が、込み上げる。
それは、『ラブレター』
つまり、つまり・・・。だ。
それはそういうことを指している。
「なんで!!なんでっ!!!」
戻ってきてくれよ。
そう願う。
・・・・・・あぁ。
なんで、世界はこんなにも残酷なのだろうか。
『melt bitter』
という曲をご存じですか?
この曲を聴いて書こうと思いました。
もう一度、脳内で再生しながらこの話を読んでみてください




