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天翔ける龍  作者: たたみ
13/19

(13)

それから1週間後。“龍”は消えた。現れた時もそうだったが、消える時も突然だ。

消えたといっても警戒をすぐに解く訳にはいかないので、さらに一ヶ月発表は見送られた。


一ヶ月後、発表の後大騒ぎだったが、火星の開発に拍車がかかり

ボクらの監視センターも大きく組織編制される事になった。

そんな中、ボクとチーフは昼勤になった。


「ナカムラ、Aちゃんと飲む話どうなった?」

「…彼女には決めてる人がいるようです。簡単には誘えなくなりました。」

「…そうか、気を落とすな!今夜いっしょに飲みに行かないか?」

バンバンとボクの肩をたたく。慰めてくれてるのかな。

「チーフのオゴリなら喜んで。」返事を返す。


「実を言うと、統計課のBちゃんも一緒なんだ。

以前資料集めで世話になって、そのお返しを催促されてね。」


Bさん?

彼女苦手だな、美人だけど。

確か“朝まで女子会”を仕切ってたのも彼女だった。

他の女の子は簡単に笑ってくれるけど、彼女には効かない。


「2人で行ってくればイイじゃないですか」

「女の子とオジサンの2人きりなんて格好つかないじゃないか、タノム!」


手を合わされる。


「Bさんは女の子っていうよりお姉さんだし、

チーフもオジサンってほどくたびれてないのに自信持ってイイですよ。」


彼の“タノム”ポーズは消えない。仕様がないな。


夕方、待ち合わせの場所に彼女が現れた。

ヘェー、ちゃんと化粧して私服でいると本当にキレイなお姉さんだなー。

いい香り。“マダム・ジュジュ”のノートだ。

趣味が大人ですね。惚れ直しちゃったなー。

アレ?ボクを見る目が冷たい。“ジャマ”って言ってる?

そうですかターゲットはイシカワさんなんですね。服の下も勝負服と…。

こりゃ、チーフ。観念した方がイイですよ。

地球の危機は去ったのだし。


「チーフ、具合が悪くなったので帰ります。」

「待てよ!」慌てるチーフ。

「アラ、大変。ナカムラ君、お大事に。」

彼女がチーフの腕に手をからませガッチリ、ロック。

雑踏の中へ消えていく。お見事。


自宅でボーッとしてるとダダからの通信だ。

「キレイなお姉さん登場でアクセスアップだぞ。」

「Aちゃんのリクエストも来てるぞ。」


Bさんはチーフの大事な人になるし、

Aちゃんも人のモンになっちゃったし、

地球の危機は去ったし、

ボクもそろそろ帰ろうかな…。


ダダに呼びかける

「ダダ、そろそろ戻ろうかな。」


「だめだ。コッチじゃAちゃんの人気大爆発で、映らない日はクレームが来るんだ。」

「もう、一年ぐらい頑張れるダロ?」

「エーッ。」


次の日、もっと驚く報告があった。

「ナカムラ、週末は入籍パーティだからな。」

「誰と誰のですか?」

「オレとBちゃんだ。」

昨日が初デートでしょ。お似合いの二人だし問題はないけど…。

「早すぎるって思ってるんだろ。」ボクがうなづく。

「龍の騒動の時、オレはひとりが気がラクだって思ってたから

イザという時はBちゃんを置いて逃げるかもしれないって、彼女に言ったんだ。」

「そしたら彼女が笑ってね。“貴方はそんな事しない”って言うんだ。」

「“それに私が一緒に居たいだけなの。”って言うんだ。」

「惚れたね。」チーフ、ごちそうさま。


週末、予想はしてたけどパーティ会場はボクのマンションになった。

もちろん仕切りはミセス・イシカワ。

「だって、こんなに広いしHOSもいるし、会場代タダだし。」

チーフのすまなそうな顔。イイです。お役に立ててボクは嬉しいです。

ここは貴女たちの公民館です。野郎がいるのが気にくわないけど。

自分の家なのにスーツなのがイヤ。

朝からHOSは彼女の料理作りにこき使われてる。

でも、Aちゃんのドレスアップした姿が見れた。

ボクのチャンネルをご覧の皆さん。よーく、御堪能下さい。

ボクは彼女に手を降る。Aちゃんの笑顔!やっぱりカワイイ。

隣の無愛想なTがジャマ。そんなに独占したいのなら早く入籍しろ。


会場の仕度を女の子たちにまかせてミセス・イシカワがドレス・アップして登場。

やっぱり、キレイだー。チーフ見ほれてる。

でも、ミセス・イシカワ。ドヤ顔はやめましょう。


重ねる祝杯。楽しい会話。酔うハズもないのに皆の高揚した気に当てられたのかボーッとしてくる。気がつくとEちゃんが目の前にいた。ドレスお似合いですね。

「スーツ姿ステキね、ナカムラさん」ボクの首に手を廻して身を寄せてくる。

Aちゃんと同じ香水。流行ってるのかな。確か名前はフルール。何故かイラッとしてくる。

「彼氏が見てますよ。」「関係ないわ。」君もボクを利用するの?


ミセス・イシカワが見咎めて「やめなさいよ、E。」と声をかける。

「それじゃ。」ボクはEちゃんを抱きしめる。

腕の中から逃れようともがくEちゃん。飛んでくる彼氏。

その彼にEちゃんを押し付けてその場を去ろうとして後ろから蹴られる。

倒れるボク。もう起き上がりたくない。耳にボクをかばうミセス・イシカワの声。

ボクをベッドルームへ運ぶチーフの肩。目の端に怯えるAちゃん。

そんな顔しないで笑って。気が遠のく。

「コイツこんなに軽かったっけ?」チーフの思考が流れ込む。

チーフが大雑把で本当によかった。

…パーティ、シラけさせちゃってゴメンなさい。


気がつくとチーフとミセス・イシカワがボクを心配して残ってくれてた。

あの後パーティはお開きになった。当然だ。

ミセス・イシカワはEが悪い。気にしないでと言ってくれた。

以外と優しいんだな。

でも意外だわ、と言った。

いつもならフザケテかわすのに、どうしたの?と。



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