第二十一話 霊魂の災い
たまには真面目な回も書こうと思い、どうせならホラー回にしようと思った書いた結果がこれだよ!
あと、UAが1000を超えました!ありがとうございます。さて、どのぐらいの方がこの回を見てくれるんでしょうかね?
「ヴィスピ港までお願いします」
ハインクフで駅馬車に乗り込みんだ四人は座席へと座ると、太郎が御者に向かって行き先を告げた。だが、御者は僅かに頷いただけでそれ以上の反応を見せることなくヴィスピ港へ向かい始めた。
「無口な方なのですね」
不思議な感じのする御者を眺めていたカルラはそう語った。その言葉に頷くようにアマラも、そして太郎も御者を眺めた。
「では、ここで我の生い立ちについて語ろうではないか。我が生まれたのは──」
ステフィーのせいで不思議な空気は尽く壊され、生い立ちについて長々と数時間語っていた。太郎も、アマラも、カルラでさえも聞いていなかったが、ステフィーは眷属のためにと一生懸命語ってくれた。
「我が天啓を受け、神々と使徒となられたところで第三部が始まる。その天啓は──」
「これ以上進めません」
次第に雨が振り出してどんどん強さを増していき、三人がステフィーの信託で精神崩壊しかけていたときだった。運転手がステフィーの言葉を遮って馬車を止める。
「進めないってどういうことですか?」
アマラが駅馬車から身を乗り出して御者に問う。前の前には小さな山があり、今まさに越そうとしているところだ。御者はしばらく口を閉ざしていたかと思うと理由を簡潔に語った。
「……。雨だ」
「雨?」
太郎もアマラと同様に身を乗り出して雨を体感する。だが、雨といっても特徴のない雨であり、豪雨ならまだしもこれしきの雨で運行を停止するなど太郎には考えられなかった。
「この程度だったらまだ進めると思うのですが」
「危ない!」
御者は太郎の意見を力強く一蹴した。
「そ、そうですか」
迫力のある声に驚いた太郎は御者の言う通りに通行を諦めた。だが、ここで放り出されても困る。周辺を見回すと、山、濃霧掛かった山林、そして小さな店があった。
「何のお店でしょうか?これから山越えなので道具屋とかでしょうか──いや、料理店ですね」
カルラが傭兵時代に培った視認能力で料理店であることを突き止める。
「よし、あそこで雨宿りしよう。あなたもどうです?」
太郎は御者も誘おうとしたが、その御者は動じずに首を横に振った。
「……。断る」
「そうですか」
太郎は変な人だなと思った。だが、よくよく考えればステフィーにオットー、ウィズインなど個性が強すぎる人が太郎の周りにはいる。太郎の中では、相対的に常識人という括りで落ち着いた。
濃霧でよく見えなかったが、料理店に近づくとログハウス風の建物であったことがわかる。ちょうど営業時間内だったため、太郎は店のドアを開けた。店の中もログハウス風の造りで、道具屋としての場所と料理店としての場所にわかれている。
「いらっしゃい。料理?それとも道具?」
ちょうどドアの前に立っていた店員が太郎たちに気づき、営業スマイルを見せる。
「うーん。ちょっとお腹も空いたので早いけど夕食にします」
店員は店内の奥にあるレストランスペースへと太郎たちを誘導し、座らせた。
「なら、こちらがメニューになります」
店員から太郎たちはメニューを受け取るが、試しに開いてみると驚愕の価格に太郎の目玉が飛び出した。それを見ていたアマラは嫌悪感を丸出しにして少し席を太郎から遠ざける。
「太郎さん?グロいのでやめてもらえます?」
「え?比喩じゃなくてマジで出てた?めんごめんご」
太郎は両目を手で遮りどうにかしてもとに戻した後、改めてメニューを開き食卓の中央に置いた。
「……高い」
人里から遠く離れていることから食料の輸送に費用がかかるのは理解できた。だが、高級料理店かと見紛うほどに料理の価格は高かった。せめて自粛を促そうと食卓の中央に置いたわけだが、他のものは気にしない。
「じゃあ、子鹿のローストを!」
「私はこのアライグマの燻製をいただきます」
カルラとアマラが答え、ステフィーの番になる。どんな高級料理を頼まれるのかと太郎は内心ヒヤヒヤしていた。
「うむ。我は太歳を──」
「ないです」
ステフィーの異常っぷりは感覚でわかっていたのか、話し終わる前に店員が即答する。その隙を見計らい、間髪を入れずに太郎はメニュー表の一部を指差した。
「僕はキノコのナポリタンで」
太郎たちにとっては幸運なことに、ステフィーは頼む機会を失い注文しないこととなった。屈強な肉体から山に入っても食料を得れそうなので、何ら問題はない。
「そういえばお兄さんたち、アイテム買わない?」
別の店員、レストランスペースとは反対の位置にあるアイテム屋の方を手のひら全体で指した。レストランの店員とはよく似た顔立ちだが若く、かつ年は離れていそうなので息子なのではないかと太郎は考えた。
食事が運ばれるまでは時間があるので、太郎たちは並べられている商品を見ることにする。
「何か珍しいものはありますか?」
「うーん。……。これといって珍しいものはないね。薬草だったり、ポーションだったり」
並べられているのはどの街でも売ってそうなものばかり。それどころか、僻地にあるためか街で買うよりも遥かに高い。
「そうですか。どうやって時間潰そうかな」
「何か待ってるんですか?」
「雨宿りを」
太郎は、窓を指差した。窓の外では、雨がパラパラと降っている様子だ。
しかし、その様子に若い店員は首を傾げた。
「そんなに降ってないと思うのですが」
「雨がもう少し弱くならないと先に進まないって御者が言うんですよ」
「ええっ?この雨で?とんだ御者ですね」
若い店員は驚いた様子で太郎たちに同情する。すると、何やら閃いたのか顔が得意げに笑った。
「だったら代わりに僕が送りましょうか?特別料金で」
その魅力的な提案の前に、太郎たちは一瞬考えしまった。
「どうしよう……。でも、割と重要な用事だからできるだけ早く行かないと行けないんですよ……。よし、そうすることにします」
太郎たちは早くヴィスピ港に着き、若い店員は儲かる。ウィンウィンの関係だ。
太郎たちは気分を良くし、他の商品を物色する。
そんな中、突如として店内にある蝋燭の火が予兆も見せずに消えてしまう。
ただでさえこのあたり一帯は濃霧に包まれている。そして、山林も生い茂っており陽もあまり当たらない。あまつさえ、外では雨が降っているのだ。蝋燭が全て消えてしまった店内は、真っ暗闇で何も見えなかった。
「まあ、光魔法でなんとでもなるんですけどね」
太郎は自称神様に言われたのだ。全ての魔法が仕えるのだと。そうなれば、周囲を明るくする魔法だって使えて当然だ。
「フラッシュ!!」
周囲一帯が程よい明るさに包まれる。これでいつもどおりかと思いきや、太郎は足元を向いた。なぜなら、そこには先程までなかった感覚があったからだ。
足を上げると、靴からは赤い液体が零れ落ちる。
「これって……」
赤い液体は太郎の足元だけではない。店の入り口付近まで続いており、そこには赤い液体で文字が書かれてあった。
『馬車を出すな』
文字の脇には、先程まで話していた若い店員が地面に横たわり大量の赤い液体が付着していた。どうやら意識はない模様。
そんなことよりも、太郎にはこの赤い液体の方が気になっていた。この液体を見ていると嫌な予感がするのだ。
恐る恐る太郎はこの赤い液体を手の指で掬い、口に含む。
「ペロッ…こ、これは、
……ケチャップだ」
甘酸っぱい風味。水を入れて薄めてあるがまさにケチャップである。薄いとはいえ味は決して悪くない、いつ空腹になってもいいようにと太郎は溢れたケチャップを魔法で凝固する。
店員についてた赤い液体もケチャップのようで見た感じは大丈夫そうだ。となると、次にするべきことは犯人探しである。
「この中に犯人はいる!犯人はすぐに名乗りをあげよ。我は神の信託を受けし者。そのような者を欺瞞できぬと覚悟することだ」
太郎はかっこよく決めたかったが、その前にステフィーが高らかに宣言してしまった。
だが、この状況はおかしい。一応若い店員以外にも店員がいるが、調理のために厨房にいる。暗くなった一瞬で若い店員を攻撃できるとは思えない。そして、太郎たちには攻撃する理由がない。
「あれ……?」
そう、犯人と疑わしい人が誰一人いないのだ。太郎は皆目検討もつかない犯人に、悩むのであった。
次の更新はそんなに遅くはないと思います。多分。




