第二十話 使徒の凱旋
コメントが来たと書かれてあって、内容はさておき内心大喜びでした。
あと、サブタイトルですが、本人の主張に基づくものです。必ずしも客観的に見てサブタイトルが合理的どうかではありません。
ピールスリン王国総理大臣官邸総理執務室。
中尉は武力で政権を奪取することに成功したが、戦後処理は大変極まりない。戦争終了後に共和制に移行するため、近日大統領府に改称予定のこの部屋で中尉は考えに浸っていた。
「残党もそのうち狩り終わるだろう。だが、周辺諸国では奴隷廃止運動が活発になってきている。国民の中には奴らに同調するもが出始めている。建設的に議論するか。──ん?」
しかし、外から聞こえる足音に考えを阻まれる。
「中尉……いえ、失礼しました。大統領。今、入り口のところに頭のおかしい奴がいて、十二時間ずっと門番に何やら変なのを唱えています。門番の精神状態が持ちません」
旧政府が崩壊して間もないため混乱は予想済みだった。だからこそ門番を親衛隊を警備に就かせたのだが、十二時間も親衛隊を翻弄するとは予想外であった。ただ、親衛隊を無力化されるのは色々問題があるので早めに処理したいところである。
「そうか。今向かう」
総理大臣官邸は地下二階、地上十三階の十五階建てだ 。降りるまでは少々時間がかかる。入口に降りると、そこには抵抗する親衛隊の姿はなく見覚えのある顔があった。そう、ステフィーである。
「お、お前は!あのときの馬車を壊した奴か。早急に捉えろ!」
しかし、誰も中尉のいうことを聞かない。中尉は不思議に思い倒れていた門番の顔を窺うも、十二時間聞かされた信託とやらのせいで精神が崩壊し無気力状態となっていた。先程連絡してきた門番の方を振り向くが、門番はひどく怯えて様子で震えながら立ち続けている。
「こ、これがピールスリン亡命政府が考案した兵器か。もう実用化にありつけたというのか……」
中尉にとって、ここまで有用な無力化兵器は見たことがなかった。しかも、自然環境には一切害がない。中尉は職務のことなど忘れ、ステフィーの本攻撃を恐れていた。
「おい、そこの愚民よ。装いから察するに新政府の公僕と見受けた。この我を新政府の総名代に叙任せよ」
堂々と答弁した内容は、それはもう稚拙極まりないものだった。さすがの中尉も呆れ返る。
「頭をおかしくさせる能力も持つと同時に、頭もおかしいのか!?こいつは?」
だが、その言葉を受けたステフィーは静かに怒りを覚えた。ゆっくりと中尉の方へ歩み寄る。
「我が教誨の宣告を妨礙しようとするものには、死歿あるのみ!」
「使わないような漢字ばかり使いやがって……。ここで殺したいが、門番を巻き込んで殺してしまうかもしれない。とりあえず、外で戦わないか?大体──」
中尉は外へ誘導しようとするが、彼女の耳には入らなかった。それどころか、ものすごい勢いで突進してきた。
外へ誘導しようとしていた中尉は不意を突かれ咄嗟に防御魔法を放とうとするものの間に合わずに突進を食らう。
中尉はふっとび、総理大臣官邸の柱に直撃する。柱には大きなヒビが入り、吹っ飛ばした衝撃波は総理官邸にあるすべての窓を一撃で粉砕した。
中尉はステフィーを捕まえて情報を聞き出そうとしたが、中止することにした。これ以上放置していたら門番や官邸に支障がでるからだ。
魔法の詠唱を感じ取ったステフィーはこちらに向けて突進してくる。
「我が信託を馬耳東風とした狼藉者には天誅を受けるのが必然!」
ステフィーは猛スピードで中尉に突っ込む。中尉は必死に詠唱するが、間に合いそうにない。
「やったか?」
猛スピードのステフィーはヒビの入った柱へと突っ込みそのまま柱は音を立てて崩壊する。そして、そのまま壁に直撃し大きなヒビが入った。しかし、そこに彼の姿はない。
「馬鹿め!それは残像だ! 」
声のする方をステフィーは振り向いた。
「何?」
そこには、詠唱を終えようとする中尉の姿があった。ステフィーはすぐさま反撃に出ようとする。しかし、もう遅い。中尉から吹かれる颶風によって門番もろともステフィーが空高く舞う。
「馬鹿な!この我を蹂躙するなどとは」
「冥土の土産に貴様の敗因を教えてやろう……。それは、生存フラグなど立てたからだ!」
中尉がもう一度刹那の詠唱すると、もう一度愚風が吹き荒れ空高く舞っていたステフィー地平線に消えていった。門番もろとも。
完全に地平線に消えたのを見送ると、総理執務室に戻る。総理執務室の前には秘書官が待っていた。
「大統領。亡命政府を自称する団体が会談を希望していますがどうなさいますか」
「亡命政府?ああ、あの国家反逆分子共か」
中尉は秘書官と会話しながら入室する。
「その言い方だと粛清されるおつもりで?」
「いや、さらに弾圧を強めれば諸外国からの政府承認が大幅に遅れる。少なくとも、経済的な結びつきが強いキャピリスとビローペからの承認は得ないとな。まず国家反逆分子に対し宥和的な政策をとって諸外国に阿る」
経済の安定化は国家にとっても重要である。不安定ならば当然それだけ政府に対する不満だって大きくなり、崩壊しやすくなる。国民を黙らせるためには経済政策が最優先だった。
「そうですか。会談を容認されますか。彼らはキャピリスを指定していますが」
「いいだろう」
「スケジュールに加えておきます。因みに亡命政府の代表者はタロウ氏だそうです。
「は?」
代表者の名前に中尉は衝撃を受け、感嘆を漏らす。少し考えた結果すぐに前言撤回した。
「……外務大臣を代わりに派遣しろ」
「外務大臣ですか?大統領ではなく?諸外国に阿るならば大統領本人が出席するのがよいかと」
「宥和的政策といっても認めるわけではない。今会談で和平と最終的な統一を約束するだけだ。それに、タロウを派遣するなんて堕ちたものだ」
「わかりました。その旨を彼らお伝えいたします」
秘書官が秘書室へ戻っていくのを中尉は見送った。
一方、太郎たちは亡命政府に戻ってきていた。
太郎が一番乗りに亡命政府本部に入ると、そこにはオットーがいた。オットーは太郎たちの帰りを待っていたかのように振る舞う。
「おお、いいカラダ……じゃなかった、いいところに来た」
「ん?どうしたんですか?」
「実はな、逃げれた政府役員はごく僅かでな、人材が枯渇しているんだ。そこでは、君に外交官として、キャピリスで故郷奪還のために動いてもらいたい」
オットーはボロボロの破れかかった地図を持ってきてハインクフの位置とキャピリスの位置を指差した。
「キャピリスですか……」
「いいですね。行きましょう。」
アマラもカルラも激しく賛同する。キャピリスというのは、かなり古くからある街らしく、昔ながらの風情が残っており観光都市としても有名らしい。
「ちなみに、安全上トンテインとビローペ経由で向かうことになる。ハインクフからはビローペまで直接向かう便がないからヴィスピ港から向かってくれ」
オットーは地図を指差し詳細にルート説明をする。
「ちょっと固有名詞多すぎてよくわかんないですけど船旅ですか……殺人事件があったりスられたりでいい思い出がないですよ」
不幸にも、太郎のしょっちゅうウィズインの船を引き当ててしまう。他の船だったらもう少しましだろうが、主人公補正は使ったばっかりで期待はできない。
「陸でもつながってるけどピールスリン新政府の支配地だからどうしようもないね」
「貴族の奴らは裕福な生活を送りながら、新政府へくだらない政策をぶつけ合っている。自由を掲げる自分たちは、そのしわよせでこんな生活を……強いられているんだッ!」
どこからともなく太郎に迫真の集中線が現れた。だが、アマラやカルラの反応は芳しくなかった。
「はいはい。行きましょう」
「行きましょう~」
「そうですか。でしたら運賃をくださいな」
手のひらをオットーに差し出す。だが、オットーは出された手のひらを見て当惑しながらも素晴らしい笑顔を見せた。
「ないんだな、それが」
「へ?」
「資金がもうないんだよ。残念だけど、君たちの運賃を支払う余裕ははない。因みに、ハインクフからヴィスピ港まで15ネス。そこからビローベ港まで20ネス。あとは知らないから」
無責任にも必要経費をくれず、仕方なく太郎たちは駅まで向かうことにする。
「仕事を任せるくせに自己負担なんてまるでピールスリンギルド……あ」
太郎たちは気づいてはいけないことに気づいてしまった。お互い気づかないふりをしようと約束を交わし、無言のまま駅の方へ向かう。
「そういえば駅が騒がしいですね。何かあったんでしょうか。」
アマラの人が集まっている場所に気づき、太郎たちは渦中に飛び込んでみる。そこに居たのは、どこかで会ったことのあるような人影だった。
「我は神からの信託を後世に残せし者。神からの信託を希求せし者は我の眷属となるがよい。我が能力の加護を受けたくばな!」
そう、ステフィーが毎度懲りずに何やら言っていた。
「みなさん!離れてください!精神が汚染されてしまう危険があります」
警察官が野次馬を必死で避難させようとするも、珍妙なものをひと目見ようとする好奇心旺盛な野次馬の勢いは完全には抑えられなかった。
「フッ。組織め、現世において安寧の秩序を取り締まる公僕をも支配下に置いたのか。しかし、我は不滅なり」
「下がって!下がって!急いで!」
警察官数十人が出動するも圧倒的な野次馬の数に抵抗できず、ついにステフィー近辺への侵入を許してしまう。大勢の野次馬がステフィーの元へ近寄り絵を描いたり笑いあったりしていた。
「愚かな。組織というのは実に愚かなり。誰も公僕の制止を聞くまい。なぜなら、我の信託を聞きたいが故の行為なのである。我の信託の為にここまでするとは。神とは畏怖すべきに疑いはないのだな」
「見てみて!あの人面白いね!何言ってんだろ?」「受けるんですけど」「えー。マジ厨二病!?」「キモーイ」「厨二病が許されるのは小学生までだよね!」「キャハハハハハハ」
明らかにステフィーへの罵詈雑言なのだが、当のステフィーは讃えられているものだと信じて礼を言う。
「我を尊ぶその感傷。我にしかと伝わってくるぞよ」
ステフィーの仲間だと疑われるとまずいので太郎たちはこっそりの駅を通過しようとする。だが、群衆が多すぎてうまく通り抜けられず、太郎たちはステフィーの前へ押し出されてしまう。
「お?そこにいるのは我が眷属達ではないか。慈愛の精神で装いに貧窮している我を救いに来たのか」
良い心がけだとばかりに頷くステフィーをガン無視して、太郎たちは通り抜ける。
「さて、ヴィスピに向かおうか」
僕たちは馬車乗り場に向かった。そう、僕たちは。
「もう行くのか。ま、一つの場所に居続けても神からの信託を伝えられないからな」
「ちょっと君!待ちなさい!」
ステフィーも僕達のパーティーに同行しているのだ。あまつさえ、彼女を問いただそうと警察官もパーティーに加わっていたのだった。やったね!ピールスリンのみんな!仲間が増えるよ!
「お前ら知り合いか?馬車鉄道営業法及び威力業務妨害罪の可能性がある。署まで来てもらおうか」
警察官が一番近くにいたカルラの手首を掴もうとするも、カルラは平然と払いのける。
「いえ、違います。私たちは彼女を知りません」
これで警察官も納得するだろうと太郎は思ったが、またしてもステフィーが邪魔をしてくる。
「我への信仰を恥じているのか。愚かなことだ。我には神の加護がある。決して恥ずべきことではないぞ。さあ、汝も神の信託を復唱するのだ!」
「だが断る 」
太郎はきっぱりお断りするも、警察官はひどく混乱していた。
「で、結局どっちなの?双方の意見が食い違っているけど。彼女はあなたたちの知り合いなの?」
「そんなオカルトありえません」
アマラも真顔できっぱりとお断りをする。だが、ステフィーの精神の強さは尋常ではない。
「うむ。我の眷属なり」
「どっちだよ……」
警察官は双方から聞いても意味がないと悟り、後ろをついてくる。そんなこんなで五人パーティーとなった。が、直ぐに問題が発覚する。
「一人15ネスになります。五人ですので、75ネスになります」
「75ネスか……持ってる?」
「ないです」
「ありませんね~」
「我に賑恤を要求するのか?我は賑恤される側であられ──」
「ここに来る前に道交法違反を取り締まったから過料があると思うが……。300ネスだな」
警察官は過料を徴収した袋を開き、中にあるコインを数えた。
「それはよかった」
太郎は安心して過料の入った袋を受け取ろうとする。警察官も太郎に渡そうとするが、何かがおかしいことに勘付きすぐに引っ込めた。
「ちょ待てよ!」
「何のために数えてたんですか。それに、公僕ですし沢山とっても給料増えませんよね?上納するだけでしょ?」
アマラの推測に対して、警察官は完全否定をする。
「いやいや、幾割かを差し引いて上納するに決まってるでしょ。そうだな……もしも、言うこと聞いてくれたら300ネスあげますよ」
警察官はいやらしい目で太郎たちを見つめた。
「やめて…私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに」
アマラが咄嗟に警戒するも、急に警察官が真顔に戻り否定した。
「しねーよ、!実は……濡れるようないい男を紹介してください!」
太郎は考えてみる。連絡が付きそうな男性を。まず最初に思いついたのは自称神様だ。だが、上級国民だしというか、人間かどうかわからないので除外。残る候補は……。
「ピールスリン亡命政府にオットー……名前なんだっけ。まあいい、オットーっていう人がいるんだ。多分お気に召すと思うよ?」
交通費を出してくれないのだから、これくらいのことはさすがの亡命政府でも許容してくれることだろう。警察官の期待が高ぶる様を表情からでも感じられて、太郎としても気持ちが良い。
「そうか、大歓迎だ!」
警察官は太郎に過料を全額渡すと、亡命政府の方へ大急ぎで走っていった。
「さあ、行きましょう~」
面倒事は全て解決し、カルラの掛け声ともに太郎たちは駅馬車に乗り込んだ。
こんな内容ですが、一つ小説大賞に応募しようかと思います。なので既存の話を修正します。




