表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

2月14日

扉が開く。待ちわびた人物の来訪に、少年は思わず舌なめずりをした。こすり合わせていた両手を頬の左右に添え、口を尖らせる。


「いよっ!待ってました!」


部屋の中央にあぐらをかいて座っている学生服の少年、ダイキ。短髪ゲジ眉、細い目の、笑顔が似合う少年だ。


「ダイキ。来てたんだ」


部屋に入って来た少年も同じく学生服姿で、大きなカバンを肩にかけている。少し伸ばした髪を自然に流し、整った顔が優しい印象を帯びている。


「おう、お邪魔してまーす」


「もしかして、学校から直接僕んちに来たの?」


「おう。何てったってユウの為だからな!」


笑い飛ばすと言う言葉を思わせる、ダイキのパワフルな笑顔がそこにあった。


「自分の為でもあるだろ?」


少年ユウは半笑いで答えながらカバンを置き、ダイキの前に腰を下ろした。


「人聞きが悪いな。俺今朝から何も食ってねーんだぜ。何てったって今日はアレだからな」


引き続き笑顔のダイキに対し、ユウは表情を曇らせ、置いたカバンに目を落とす。


「ああ、それなんだけど…」


「ん?どした?」


ユウは首をかしげた後、カバンのチャックを開け、右手を中に入れた。ダイキの目線が目の前のユウからカバンに移る。


「今年は…これだけなんだ」


ユウが控えめに掲げた手には、濃い赤色の紙で包まれ、金に光るテープで飾られた平たい箱があった。


「は?一個?」


ダイキの笑顔が一変、目を見開き口は半開きになっている。


「うん…」


「どうしたんだよ。去年は数えんのも面倒なくらいあったじゃねえか」


「分からない…」


ユウは掲げた手を下ろし、箱を床に付けた。ダイキは内緒話でもする様に上半身を乗り出して、ユウに接近する。


「バラしたのか?チョコ無理だって」


ユウは小さく、首を左右に振る。


「それは無い。誰にも話してないし…」


ダイキは元居た場所にドカッと座り、腕を組んだ。ユウはうつろげな目で、自分とダイキの間の床を見ている。


「僕にも何が何だか分からないんだ」


「んだよー、折角メシ抜いてきたってのによー」


声を大きくして不満を主張するダイキに、ユウはススッと床を這わせる様にして、赤い箱を差し出した。


「とにかく、これはダイキが食べて。僕はアレルギーだからね」


「おう…」


ダイキが赤い箱を受け取ると、ユウは立ち上がり、クローゼットを目指してフラフラと歩いた。


「言っとくけど俺はぜーったいアレルギーの事バラしてないぞ。何てったって俺達親友だからな」


クローゼットの前に立ったユウは、ダイキに背を向けたまま、制服のボタンをひとつひとつ外していく。


「そうだね。去年、女子から貰ったチョコを代わりに全部食べてくれたよね」


「直接言わねえのか?チョコ無理だって」


黒い上着の袖から腕を抜く途中で、ユウの動きが止まる。


「…直接チョコを手渡ししてくる子も居る。食べれないからってはね退けたら悲しむかなって思うと、ね」


「ユウは優しいよな。んでモテる」


力説する様にダイキが言うと、ユウが脱衣を再開し、黒い上着を脱ぎさった。


「モテる…筈なんだけどな。今年は一個だけか」


ダイキが赤い箱を顔の前まで持ち上げ、手首をひねって箱を観察している。


「まっ!変にモテても迷惑だし気にすんなよ!」


ダイキは笑顔で立ち上がり、ユウの背中に近付いた。肩を叩いて励まそうとしていたのだが、ユウが振り返ったのでそれは出来なかった。


「迷惑はしてないけどね、ちょっと気になるな。嫌われる様な事はしてないと思うんだけど」


「嫌われたりしてねえよ。何てったってユウは優しいからな!」


ダイキの力強い笑顔に、ユウもつられて微笑んだ。


「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ」


「おう!」と返した所で、ダイキの腹がググーッと鳴った。


「一個じゃ足んねえから、今日はもう帰って何か食うわ」


「うん」


「じゃあな、ユウ」


ダイキはユウの部屋を出る直前で立ち止まって、もう一度「じゃあな」と言い残し、姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ