第二十四遭遇
「ということで、怜奈。今から帰るよ」
「………え?」
「今から私達の星に帰る。と言ったのだ」
怜奈は少し戸惑いの顔だった。
「いきなりだな…」
優衣が寂しげに言ったが、雄夜は状況判断ができなくなっていた。急にいままでなかったところに宇宙船がでてきて、そしたら怜奈の父という男が出てきたのだ。混乱するに決まっている。
「僕だけですか?整理が追いつかないのは…」
健次が頬を掻きながら言うと、雄夜は頷いた。
「俺も同じだ」
「親子の感動の対面ですよ?どこが分からないんですか?」
雄夜が言ったらすぐさま雫が切り返してきた。
「うん、まぁ分かるんだけどね。さすがにこんな非現実なことがあると…」
「てめぇら、こんな感動な場面に水を差すようなことすんなよ」
「でもよぉ、って!優衣、泣いてんのかよ!」
「泣いてなどいない!」
そう言いながら優衣は袖で目をこすった。
「お父さん、皆と会うのが最後になるんだよね?」
雄夜は怜奈が発した「最後」という言葉を聞いた瞬間何故か胸が締め付けられるような気がした。
「そうだよ、怜奈」
「でも…私の双子は……」
「もう見つかったよ」
「本当!?どこにいるの!?」
「星に帰れば会えるよ」
怜奈は胸を撫で下ろして「良かった」と言った。
「良かったですね」
「良かったじゃねぇか」
雫と優衣が次々言った。
「それじゃあ、お父さん。最後に話してきてもいい?」
「…あぁ、行ってきなさい」
すると怜奈は雄夜と雫と優衣と健次の近くに行き、微笑んだ。
「なんか突然だけどこうなっちゃった」
怜奈は軽く笑うが、嘘笑いがバレバレだった。目に涙を浮かべていた。その涙を見て皆の涙腺が緩くなってしまう。
「まぁ、そんなに思いでとかねぇし~」
雄夜が夜空を見ながら言った。やけに綺麗で雄夜は壊したくなった。
「ありがとね、霧山さん。あなたのおかげで楽しく生きていけそうです」
雫は俯き、泣くのを我慢しながら途切れ途切れに言った。
怜奈は優しく頭を撫でながらそっと、抱きついた。
「もっと、話したかったな」
優衣は溜め息をついたあと、しっかりとした瞳で雫に抱きついてる怜奈の目を見つめながら、問題をだした。
「最後の問題。宇宙空間はいたるところ一様で等方であり、大局的な特徴は宇宙のどこで観測しても同じであるとする原理。宇宙論で仮定されてるものとはなんだ?」
怜奈は少し考えたあと、いつものように微笑みながら答えた。
「宇宙原理でしょ」
「……正解」
「えーと、この流れだと僕もなんか話すんですか?」
「まぁ、そうなるわね。ほら、私になにか言いたいことはないの?」
「なんかうざいですね」
「今、空を見上げてる人によく言われる」
健次は溜め息をして、雄夜のことを見ると少し笑った。
「こんな風に話したのは何年ぶりなんだろう」
「ヒッキーしたのは二年間だよ」
「分かってますよ。うーん、まぁ寂しいですね」
怜奈は健次の頭を乱暴に撫でる。
「やめてください」
「本当は寂しいのか~」
「僕が外に出るきっかけを作ったのはお前だしな」
「素直じゃないな~」
健次はそっぽを向いてしまった。
「そんじゃあ、私かな。楽しかった!以上!」
「それだけかよ!」
「別にいいじゃん。雄夜だってあまり話してないし~」
「うっ…」
怜奈は大声で笑った。
怜奈の目に浮かんでる涙は笑ったから出たのか、それとも悲しいのか雄夜には分からなかった。しかし、雄夜の目には悲しいときの涙があった。
「もういいかな?怜奈」
怜奈の父が輪の中に入ってきた。
「最後くらい涙を流さずに、笑ったらどうだい?」
そう言って、怜奈の父は雫の頬に伝った涙を人差し指で撫でながら取ると、雫はコクッと頷いた。
「それじゃあ、行くぞ。怜奈」
「うん。皆、またね…じゃない、さようなら」
怜奈は涙が出そうな顔を無理矢理に笑っていたので、くしゃくしゃの笑顔だった。
「おう、じゃあな」
「今まで楽しかったです」
「アタシはもっと宇宙について勉強すっからな」
「まぁ、さよならです」
雄夜、雫、優衣、健次の順で言った。
怜奈は後ろを振り向き、父の手を握った。
そして、二人は宇宙船に向かって歩き始めた。
「え…なんで……?」
雫が口を大きく開けながら驚いていた。
「どうしたんだよ」
「泣いてる時、気がつかなかったんですけど…あの男の人の手が私の頬に触れたとき少しだけ分かったんです。あの男の人嘘ついてます」




