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3

もどかしい日々を過ごして数年が過ぎた頃。


お嬢様が突然1人の少女を御屋敷に連れて来た。


異国風の顔立ちに見慣れない服装のその少女は、初めて訪れた公爵家に圧倒されながらも、興味津々なのは隠せないようで仕切りに周りをキョロキョロ見回していた。


お嬢様から、大切なお客様だから誠心誠意おもてなしするように命じられて私がお世話をする事になったが、ミリという名のその少女は、自分は庶民だと言う割には受け答えなどもしっかりしており、きちんとした教育を受けて来た事を窺わせた。

私を始めとする使用人への接し方も礼儀正しく丁寧で好感が持てたが、それだけではなかった。


最近のお嬢様は、どこか全てを諦めているような、それでいてギリギリのところで耐えているような危うさがあった。

表情こそは明るさを取り繕っているものの、目からは日に日に生気が失われ、このまま何処かへ消えてしまうのではないかと感じられるくらいだった。


ところが、ミリを御屋敷に連れて来た時、お嬢様の目にはかつての輝きが戻って来ていた。

何が原因かはわからない。

それでも、このミリという少女との出会いがお嬢様に活力をもたらしていることだけは確かだった。


もしかしたら、この少女がお嬢様を救ってくれるのではないか。

そう期待せずにはいられなかった。


お嬢様に連れて来られたミリが、そのまま御屋敷で侍女見習いとして働く事になったのはとても驚いた。


貴族の使用人と言うのは、誰でもなれるものではない。

特にラズウェイ公爵家くらいの家柄ともなると、その使用人は採用される前に出自から何から、ありとあらゆる事を詳しく調べられる。


だからこそ、大変な目にあって記憶があやふやになっているというミリの境遇には同情したが、良くて身の置き所が決まるまで客人として滞在するくらいだと思っていた。


伝え聞いた話では、お嬢様が公爵様に熱心に頼み込んで公爵様が根負けしたらしい。

他の使用人達はお嬢様がそこまでした事を不思議がっていたけど、私は納得出来た。

やはり、この少女はお嬢様にとって何か特別な存在なんだと。


そうして働き始めたミリは、とても真面目だった。

教えた事は熱心にメモを取り、どんどんと吸収して行く。

そんな姿は公爵様ご夫妻や他の使用人達にも好印象を与え、働き始めて1ヶ月もしないでミリは御屋敷にすっかり溶け込んでいた。

私自身も、先輩として慕ってくれるミリが可愛く思えたし、いつも笑顔を絶やさない彼女自身の魅力に惹かれていくのを感じていた。


やがてお嬢様が貴族学校への入学が近付き、私とミリがお嬢様のお付きとして共に行くことになった。


お嬢様が貴族学校へ入学されてからは、お嬢様にすっかりだらけ癖が付いてしまった事を除いては比較的平穏な日々が続いていた。


しかし、ある日事件が起きた。

お使いに出ていたミリが涙で目を真っ赤に腫らして帰って来たのだ。


彼女が泣くのを見るのは初めてだった。

慣れない環境での、慣れない仕事にも常に真摯に取り組んでいたミリ。

いつも笑顔を絶やさず、周りへの気配りも忘れない。

そんな彼女を誰が泣かせたんだと頭に血が上りかけたが、私以上に怒っているお嬢様の姿や、心配をかけてしまったとずっと謝っているミリの姿を見ることで、何とか平静を保てた。


どうやらラッセル侯爵家の令息にお嬢様の事を悪く言われたのが原因だったらしい。

その事を聞いた時、お嬢様が顔を真っ赤にして照れているのは幼い頃のお姿を見ているようで微笑ましかった。

しかし、それはそれ、これはこれ。

ミリに対してした事は決して許せるものでは無い。

ただ、そうは言っても相手が名門貴族の令息では、私に出来る事はない。

ミリに言ったという訳の分からない言い訳も許せなかったが、そこはお嬢様が対応して下さるとの事。


それならとこの件はお嬢様にお任せする事にしたが、本当の事件はここからだった。

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