表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

一話

その翌日。

私はいつものように買い物に出ていた。


マリーさんはいつもミリに行かせるのは悪いと言ってくれてるけど、部屋での仕事に関してはマリーさんの方が圧倒的に上だから、せめてこのくらいはやらせて欲しいと私から志願している。


そして、問題なく買い物を済ませて寮への帰路を急いでいると、不意に後ろから声をかけられた。


「あ、お前は確かセリーナ嬢の……」


誰だろうと思って振り替えると、いつも王太子と一緒にいる黒髪くんだった。

名前は……忘れた。


とりあえず、結構な身分の貴族ではあるだろうから、ぺこりと頭を下げる。


「昨日はその……すまなかったな」


「え?」


突然謝られてキョトンとしてしまう。


「ほら、1人残して先に帰っちまっただろ?

いくら学内とは言え、もう夕方近いのに女性を1人残してって言うのはなぁ」


どうやら、昨日片付けをしている私を残して先に帰った事を気にしているらしい。

そう言えば、なんか去り際にこっちをちらちら見てた気がしたけど、そう言う事だったのか。


「いえ、とんでもございません。私などに気を使って下さりありがとうございます」


とりあえず、営業スマイルで気にしてませんよアピール。

実際全く気にしてないと言うか、さっさと帰って欲しかったし。


「いやぁ、それでもやっぱり騎士としてはだなぁ……」


何やらぶつぶつと言っている。

本当に気にしなくていいのに。真面目か?


「あ、そういや名前も名乗ってなかったな。

俺はレイナード・ラッセル。お前は?」


「えっと……ミリと申します」


まさか自己紹介をされるとは思わずびっくり。

貴族なのに、私みたいな使用人の事を気にして謝ってくるだけでも驚いたのに。


大抵の貴族は使用人に興味なんてないし、使用人側もそれが普通だと思っている。

名乗るまでもなく自分の事は知っているだろと思っているから、わざわざ名乗る事もしない。

まぁ実際は使用人の立場では顔までは知らない事が多いんだけどね。


とりあえず、異例の事だとは思うけど、自己紹介までして貰って知らないでは済まされない。

侍女の教育の一環で主要貴族の名前は教わったし。

そう思って、ラッセルという名を必死に記憶から引っ張り出す。


……あ。思い出した。

ラッセルと言えば、ラッセル侯爵家だ。確か騎士団長を歴任してる、代々の騎士の家系。

やば、めっちゃ名門じゃん。黒髪くんとか呼んでる場合じゃない。


「ミリか。よろしくな。

それで?昨日は何事もなく戻れたか?」


私が内心あわあわしてる事も知らず、ラッセル様は陽気に話し掛けてくる。


「はい。特に問題はございませんでした」


何とか平静を装って答えられてはいるけど。

なんでこんなにフレンドリーなんだこの人。


「それなら良かった。しかし……」


何かを思い出すようにふっと遠くを見るラッセル様。


「昨日のサーシャは凄かったなぁ……」


あ、あれ見てたのか。

少なくとも見える範囲にはいなかったと思ったんだけど、どこにいたんだろう?


そんな気持ちが顔に出ていたのか、ラッセル様は笑いながら教えてくれた。


「すぐ近くの木の陰から見てたんだ。一応殿下の護衛役でもあるんでね。

気付かなかったろ?」


してやったりという顔で言われても……ねぇ?

わざわざ隠れてた意味が分からないし。私素人だし。


「はっはっはっ。そう拗ねるな。

別に他意があって隠れてた訳じゃない。サーシャと話す時に俺が一緒だと、殿下が嫌がるんだよ。自分の背が低く見えるからって」


拗ねるなと言われて、顔に出ていたかと焦ったけど、その後に続いた言葉に絶句してしまう。

あの王太子が?そんな事を気にしてるの?


まぁ、確かにラッセル様はすごい大きい。190くらいはありそうだ。

でも、王太子だって180近くありそうに見えたけどな。


「意外だろ?あの殿下がそんな事気にするなんて」


「そう……ですね。驚きました」


ラッセル様が「だよなー」と言って大笑いするもんだから、私もつられて笑っしまう。

王太子の事をこんなに笑ってたら、まず間違いなくまずいとは思うけど、何となくこの人は平気なような気がする。


「ところで」


ひとしきり笑って満足したのか、笑い止むと私の顔を覗き込んでくるラッセル様。

え?何いきなり。まさか今更王太子の事笑って不敬だとか言ってくる気!?この人なら大丈夫そうと思ったのに!


「な、何でしょうか……」


思わず1歩後ずさってしまう。


「いやな、ミリはあまりこの国では見ない顔立ちだなと思って。どこの出身だ?」


あ、そっちか。

この世界というか、この国の人は所謂欧米人風の顔立ちをしている。

その中に1人、いかにも日本人です!と言う顔をしている私が混ざっている訳だから、当然目立つし、こういう事を聞かれるのも初めてじゃない。

だから、私もいつものように答えるだけ。


「実は……」


記憶がなくて云々。セリーナさんに森で拾われて云々。そこから公爵家に云々。

私としてはいつもの作業みたいな感覚での話だったけど、ラッセル様にはそうではなかったみたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ