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五話

そんなやり取りから数日が経った今。

私は何故かセリーナさん、マリーさん。それにサーシャとアイラさんと同じテーブルでお茶をしている。


貴族学校の敷地内にある庭園の一角。

基本的に学外に出ることがない生徒達に、季節の移り変わりを楽しませる目的で作られた庭園。

その一角にある東屋でみんなでお茶をしていた。


マリーさんが淹れてくれたお茶を飲み、アイラさんがどこからともなく取り出してくれたお菓子をつまみつつ、どうしてこうなったのか考える。


先日のサーシャとのお茶会以降、毎日のようにセリーナさんやマリーさんと、サーシャと王太子をどうやって引き離そうか考えていた。

だが、中々いい案が浮かばず、気分転換をしようとみんなで庭園の散策に来たんだ。


そうしたら、同じように散策に来ていたサーシャとアイラさんと遭遇。

挨拶から雑談に発展し、次第にそれが盛り上がって来てそのままお茶会という流れに。


まぁ、それだけならまだわかるんだけど、何故使用人の私達まで同じテーブルについているのか。

セリーナさんとサーシャはああ言う性格だから気にしないんだろけど、他の貴族に見られたらどう思われるのか。


私はそこが気になって仕方ないんだけど、先輩侍女であるはずのマリーさんもアイラさんも気にする様子なく侍女談義に花を咲かせている。

私があれこれ気にしすぎなのかなこれ?


私のそんな思いを知ってか知らずか、とても楽しそうに話しかけて来るサーシャに答えつつ、なんだかんだで私も穏やかな時間を過ごしていた。

みんなも楽しそうに笑っているし、これはこれで良いのかなと思っていた。


招かれざる客がこの場に現れるまでは。


「サーシャじゃないか!ん?それと……セリーナ?

セリーナ、お前ここで何をしている。サーシャに何かしたんじゃないだろうな?」


頭痛の種の付き纏い馬鹿男、王太子ラウル。

こいつが現れた事で、場の空気が一変する。


サーシャを見つけて相当嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべて挨拶をしたと思いきや、セリーナさんの姿を見るなり表情は一変。

眉間に皺を寄せて相変わらずの死んだ目で睨み付けている。


文句の1つも言ってやりたいくらいイラッとしたけど、セリーナさんとサーシャが立ち上がり王太子にすっと頭を下げているので、私もそれに倣う。


そして、使用人と言う立場なので頭を下げつつ素早く後ろに下がったマリーさんとアイラさんの更に1歩後ろへ退避。


「ご機嫌麗しゅう王太子殿下。

フェルチェ伯爵令嬢とは散策中に偶然お会い致しまして、お茶をご一緒させて頂いていただけですわ」


セリーナさんが久しぶりに見せる令嬢モードで王太子に答える。

その表情をチラッと盗み見れば、笑顔を貼り付けてはいるけど目が笑ってない。

どうやら、楽しい一時を邪魔されてご立腹のようだ。


「ふん、どうだか。

サーシャが最近私と親しくなったものだから、嫉妬に駆られて嫌がらせでもしていたんじゃないか?」


セリーナさんの言葉を一笑に付す王太子。

なんなんこいつ。本当にムカつく。てか、挨拶くらいきちんと返せよそれでも王族か。


イラッとする私とは逆に、セリーナさんは笑顔を貼り付けたまま動じない。

この辺はさすがだよなぁ。


そんなセリーナさんの様子にイライラしたのか、王太子が眉間の皺を深めて何か言おうとする前に、その場に響いたのは別の声だった。


「待ってください王太子殿下!!」


サーシャ……?

予想外の人の予想外な大声に、その場にいた全員がフリーズする。


「サーシャ?そんな大声を出してどうしたんだい?」


腐っても王族か。

いち早く硬直が溶けた王太子が、戸惑いながらもサーシャに訊ねる。


「やはり、セリーナから何かされたんじゃ……」


「セリーナ様はそんな事はなさいません!!」


ふざけた事を言いかけた王太子の言葉を遮り、さらに声を荒げるサーシャ。

いつも楽しそうにニコニコと笑顔を浮かべている顔には、今は普段なら絶対に見せない怒気が満ちている。

あ、サーシャが面と向かって怒声を浴びせるの自体初めて見たかも。


「王太子殿下は私が何かされている所をご覧になられたのですか!?

そんなはずはありませんよね!?

それなのに、どうしてそんな酷い事を仰るんですか!?」


「お、落ち着くんだサーシャ。私はただ君を心配して……」


サーシャの剣幕に狼狽える王太子。

いや、王太子だけではない。

いつものサーシャからは想像が出来ない怒り具合に、セリーナさんやマリーさんまでポカンとしている。

ちなみに、アイラさんだけはさすがサーシャ付きの侍女と言うべきか。

普段と変わらず冷静に見え……いや違うな。

王太子を見る目が視線だけで凍り付きそうなくらい冷たい。


「私は落ち着いていますし、そもそも心配して頂くような事は何もされておりません!

中々周りの貴族の皆様に馴染めない私に対して、こうして親しくして下さるご令嬢はセリーナ様だけです!!

むしろ、王太子殿下が心配すべきなのは、婚約者である方に突然こんな酷い事を言われたセリーナ様の事ではないのですか!?

あぁ、そんな事出来ませんよね!王太子殿下がセリーナ様に酷い事を仰ってる張本人ですもの!!」


どう見ても落ち着いているようには見えない勢いのサーシャ。

王太子もとうとう口を噤んでしまった、ざまぁみろ。

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