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八話

「頼みたいこと……ですか?」


屋敷に居ても良いと言ってくれているだけでもすごくありがたいし、その上何もしなくてゆっくり過ごして構わないとまで言ってくれているのに、それに素直に従えないのはとても失礼なことなんじゃないかと思う。


しかし、公爵様はそんな私に全く気分を害した様子もなく、変わらず穏やかに微笑みながら提案をしてくれた。


「セリーナの話し相手として屋敷に居るというのはどうかな?

どうも最近のセリーナは色々とストレスも溜まっているみたいでね。

年齢の近い君が話し相手になってくれることでリラックス出来れば、それは公爵家としてもとても助かるんだ。

イライラしてるセリーナは怖いからね」


「お父様!?」


最後はちょっとおどけた感じで言う公爵様に、セリーナさんが眉を釣り上げて反論している。

あ、これは確かにイライラしてたら怖いかも知れない。

思わずなるほどといった感じでこくこく頷いていたら、セリーナさんにギロっと睨まれた。あ、やっぱり怖い。


「実際、王族や貴族の屋敷では令嬢などの話し相手として人をいれることは良くあることなんだ。

まぁ、大体はもっと子どもの頃から、将来の婚約者候補の選抜も兼ねてやることが多いんだけどね。

ともかく、これはきちんとした立派な仕事の1つだよ。

それなら、ここで仕事をしている訳なのだから、気兼ねすることなく過ごせるんじゃないかな?」


「ま、まぁ確かに?

ミリが話し相手になってくれれば私としてもありがたいとは思いますが?」


ぷいっとそっぽを向きながらセリーナさんは言うが、ちょっと赤くなっている。

前世のこともあり、私よりずっと大人な人だと思ってたけど、その様子はこちらでの年相応という感じで可愛らしい。


「そんなにストレス溜めるくらい毎日大変なんですか?」


具体的に何でストレスを溜め込んでいるのかまではわからないけど、公爵家の令嬢ともなれば色々あるんだろうか?

そう言えば、マリーさんも何かそんな感じのこと言ってたような。


「えぇ、まぁ、色々とね……」


ちょっと言いにくそうにするセリーナさんの様子に、公爵様がおや?っといった様子で口を開く。


「まだ話してなかったのかい?

特に隠すことでもないとは思うから教えておくと、セリーナは王太子殿下の婚約者なんだよ。

それで毎日のように王太子妃教育を受けていてね」


王太子の婚約者……。

私と同じくらいの年齢でもう婚約者とかいるのか。

日本人の感覚だと早すぎるって感じるけど、公爵様によると貴族なら割と普通らしい。

特に王族の婚約者ともなれば、結婚した後は当然王族の一員となる訳で。

その為の厳しい教育期間が必要になるので、婚約者も幼少時に決めてしまうそうだ。


「…………」


公爵様の説明にふむふむと頷いている私の横で、セリーナさんはずっと黙っている。

王太子妃教育の辛さでも思い出してるのかな?


「さて、それじゃあミリはセリーナの話し相手……待遇としては侍女見習いといったところかな。

2人とも、それで問題ないね?」


「はい、わかりました。これからよろしくお願いします」


私としては断る理由もないありがたい話なので、二つ返事で了承する。

セリーナさんも問題ないみたいだ。


ちなみに、私は屋敷で働いている女性をメイドさんと一括りにしていたけど、厳密にはメイドってて言うのは屋敷の維持、つまり掃除や洗濯などを担当している人達のことを指すらしい。

それに対し、侍女というのは公爵様やセリーナさんといった、この屋敷に住んでいる人達の身の回りの世話をする人達のことなのだそうだ。


公爵家はメイドや侍女を始め、使用人には手厚く報いるというのを代々大切にしているそうで、全使用人に個室が与えられているらしい。


私は今泊まらせてもらっている客間にずっと居ても良いと言われたけど、セリーナさんの話し相手っていう仕事しかなくても、一応侍女見習いという立場になる以上、そちらに移らせてもらえるようにお願いした。


「もう、そのままこの部屋を使えばいいのに……」


荷物……というような物は何もないが、使用人用の部屋に移動する準備をしていたら、部屋にセリーナさんがやって来た。

頬をぷくーっと膨らませて不満顔だけど、それもまた可愛い。


「いえ、流石にそれは他の使用人の皆さんにも悪いですし……」


「そんなこと気にするような使用人はうちには居ないわよ。ねえ?」


「確かにその通りではありますが、そこはミリ様のご意志を尊重しませんと」


とはマリーさん。

ブツブツと文句を言っているセリーナさんを相手にしても、穏やかな笑顔は全く変わらない。


他者が居る時は令嬢モードで過ごしているらしいセリーナさんだが、マリーさんの前では素の状態になっている。

なんでも、マリーさんは今は私のお世話をしてくれているけど、本来はセリーナさん付きの侍女らしく、ものごごろつく前からずっと一緒にいるそうだ。


「あ、マリー。

ミリは服とか身の回りの物もないだろうから、また私の物から適当に持って行ってね」


……え?今なんと?


「あの、もしかして今私の着てる服とかって……」


「ん?私の服よ。

ほら、私達の身長同じくらいでしょ?だからサイズ何とかなるかなーって」


恐る恐る尋ねる私の横に立ち、身長を比べて見せるセリーナさん。

いや、確かに同じくらいではあるけど。


「ずっと制服着てる訳にもいかないでしょ?」


超絶美少女に耳元でそっと囁かれ、同性なのに思わずドキドキしてしまう。

制服ではこの世界の服装とはあまりにもかけ離れていて、悪目立ちしてしまうのはわかるけど、仮にも公爵令嬢という立場の人の服をそんな簡単にホイホイと借りていいものなのか。


「お嬢様は気になさる方ではありませんし、1度言い出したら聞かない方でもありますので、諦めてください」


心中お察ししますという感じに、マリーさんも苦笑いしている。

あー、やっぱりあんまり普通のことじゃないみたい。

そりゃそうか。


その後も、あれも持ってけこれも持ってけと言い続けるセリーナさんを宥めつつ、最終的にはマリーさんに止めてもらって無事に使用人部屋への引越しは完了した。

侍女やメイドの違い、ミリの仕事内容などについてはあくまでもこの世界オリジナルのものとお考え下さい

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