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マスターズ

第三部を本格的に開始したりします!


教室というのは半円形になっていた。


 中央の教壇が見えるようにになっていて並んだ机は後ろに行くほど段々になってて見下ろす形になる。あたしが本を片手に教室に入ると中にいたみんな……と言っても全然知らないんだけど。とにかくいる人みんなが見てきた。


 奇異な目で見られるっていうのかな、まあ入学式で全員に挨拶をしたからわからないでもないね。少し恥ずかしいけど、恥ずかしがってても仕方がないから中に入る。


 窓際の席にニーナがいた、あたしを見て一瞬躊躇したそぶりを見せてから「こっちだ」と呼んでくれる。


「おはよ」

「ああ」


 今日は学校の説明。新入生は各教室にばらけて説明を聞くことになっている。授業の受け方とか、卒業の仕方とかいろいろ。


 ふふん。しかしあたしとニーナはすでに全部知っている。なんたって一年上のラナから先に説明をしてもらったからさ! ニーナの横に座って少しの間話をしていると数人の男性が教室に入ってきた、黒くて長い服を着た人たちだ。肩には剣を象った文様のある黒衣を着ているのは職員さんだってさ。


 その中の一人のが教壇に立って行った。


「皆さん入学おめでとう、私は学園の事務を行っているクロードと申します。これからよろしく」


 柔和な表情であいさつをするクロードさんの後ろで別の人達が広い黒板に説明のための紙を貼り付けていく。


 ここで説明するのは3つ。


 フェリックス学園はギルドが運営に関与している。いろんな地域からいろんな人が集まってくる。たぶんギルドに見込まれた子達なんだろうけど、その出自はばらばらだ。


(あたしなんて村育ちだし……。あれ? そういえばなんで自分は選ばれたんだろう。魔力なんてないし。うーん、まあ、いっか)


 ともかくその中でたぶん少ないけど文字とか計算とか勉強しないといけない学生もいる、そのために本来の授業とは別に一般教養としての授業を任意で受けることができるんだってラナが言ってた。


 それとここからが本題なんだけど。


 クロードさんが言った。


「この学校を卒業するにはまず3年以上在学することと、そして卒業資格は2つです。一つは一定以上のギルドからの依頼を受けて成功した実績を作ることです。ただし君たちはまだ子供ですから無制限に依頼を受けられるわけではありません」


 ギルドからの依頼を受けるにはランクが関係する。あたしは「FF」だからまともに一人では受けられなかった。たしか2つのギルドのランクと学園のランクがそれぞれ意味を持ってる。とりあえずランク以上の依頼は受けられない。


「そして今後の学園の授業ですが――」


 クロードさんがみんなを見渡す。


「わが校の学風は自由です。そのため、我々の最低限の説明を聞いた上で皆さんが望むままにそれぞれの先生に師事をしてもらいます。実際に独り立ちした時も基本的に自己管理は自分でしなければなりません」


 騒めく学生。その中で職員さん達が数枚の紙を全員にいきわたるように配った。その中には人の名前とその専門とするところが書かれている、表紙には「マスターズ」と書かれている。要するにこれは先生たちの一覧だ。


 頭の中にラナとの記憶が思い出された。ニーナと先に教えてもらった時だ。


『いい? 基本的にこの学校は学ぶことを自分で選んで自分で決めることが必要なのよ。先生も自分で選ぶ。それぞれの先生は専門も性格もぜーんぜん違うから、これを選び間違ったらとんでもないことになるわ」


 記憶の中のラナがニヤッと笑った。


『安心しなさい、あんたらには比較的穏やかで簡単に学生に合格点をくれる先生をリストアップしてあげるから、なに? マオあんたなんかいいたいことがあるの? ……ははーん。なるほどね、そんなに楽に取れていいのかって。バーカ! そんなんだからいつもへんてこなことに巻き込まれるのよ!! まずは最低限オッケーな状況を作ってからあとは専門的なことでも好きなこともするの! 要領よくしなさいって!!』


 うう、き、記憶の中まで怒られてる。


 横を見るとニーナと目が合った。二人でうんと頷く。ラナの作ってくれたリストにある先生達をリストから探して指で示す。


「さて」


 クロードさんの声にはっと前を見た。今ラナが説明してくれたことを話している。


「そのリストには先生方の名前が書いてあります。全員で38名の在籍がありますが、皆さんが全員に師事をする必要はありません。1年には前期と後期があり、それぞれ6人までに師事を受けることができます。各期末にはテスト……まあこれはペーパーだったり、実技だったりいろいろですが、卒業までに18名に認められることが皆さんの卒業の最低ラインになります。純粋に半分の19名ではないのはあまり気にしないでください」


クロードさんの声はよく通る、穏やかで聞きやすい。


「どの先生に師事をするのかは一週間以内に我々職員にお答えください。質問はどれだけでも受け付けます。ちなみに先生の授業を受けるかどうかは全く自由で、最終試験で18人に認められればその過程は問いません、もちろん真面目に講義を受けることを評価にしている先生は多いでしょう……」


 教室はざわついているけど、すぐに収まった。


「皆さんがここに来たのは様々ないきさつがあると思います。それに剣や槍などを得意とする人も、魔法を得意とする人も、あるいは別の才能も多くとあると思います。私どもはそんな皆さんの才能が花開くように支援するものです。さて、これで説明は終わりです、良い学園生活を」


 にっこりを笑顔で締めたクロードさん。何となく拍手をすると周りもだんだんと合わせてぱちぱちと教室に響いた――学園生活……結構楽しそうかもしれないね!



「あんたらさぁ……」


 家でキレた顔のラナの前で正座させられていた。ニーナも一緒だった。


 ラナの手にはあたしが前期に受ける先生の一覧があった。説明の後にすぐにニーナと申し込みをした、それを見てラナは引きつった顔をしている。


 すでに夕方で外から夕日が入り込んでくる。


「今期受ける先生の一覧にさぁ、私が指定した先生がひとぉりもいないんですけどぉ? マオちゃん、どうせあんたでしょ? 説明してくれるかなぁ?」


 へ、へんなしゃべり方をしているラナが怖い。椅子に座って片足を組んでいる。へ、へへ。そ、それがですね。


「い、いろいろとありまして、その、ご、ごめんなさい」

「この馬鹿!! ああーもう、これおかしいでしょ!?」


 怒りが噴き出したように立ち上がったラナ。頭を抱えてその場でくるくる回る。ご、ごめん。あたしをきっとにらみつけた。


「なんでポーラ先生の授業受けるの?! 馬鹿じゃないの??」

「……わ、私は止めたんだが」

「ニーナ! こいつを止めた程度で止まるわけないでしょ!! 首根っこ捕まえて引きずってきなさいよ!!」

「あたしは、ね、猫じゃないんだから」

「猫の方が素直よ!!」


 ひ、ひどい。


 ……でも怒るのは無理もないことだ。


「それにほかの連中も変人ばっかりだし……そ、卒業する気あるの?」


 ラナが両手でリストを突き出してくる。そう、ここにいる先生たちのことなんて全然知らないけど、きっと難しい人たちだろうということは分かっていた。先生の名前とその授業のテーマが書いてある。


1『ゲオルグ・フォン・ヴォ―ド セレスタス魔方陣の概要』

2『リリス・ガイコ 魔法工学概論」

3『ウルバン 剣とかいろいろやりたいひと~おいでー』

4『ポーラ・ジャーディス 3大元素について』

5『チカサナ パーティーの戦い方』

6『クロコ・セイマ 地図とか書き方』


 ――で、でもさ


「あたしは頑張るよ!」

「はぁー」


 大きくラナがため息をついた。


「そんなんわかってんのよ……だから心配なんでしょ。まあ、ほとんどの授業はニーナと同じらしいけど……はぁー。油断したわ」


 と、とにかく頑張るしかない! やっていくぞー!


「そういえば」


 ラナが言った。


「なんでこんな授業にしたの? だいたい想像つくけど」

「あ、それは――」


 職員室でのことだった。


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