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雑談クラブ  作者: A-T
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第十話 相性がいい副業について考えよう

「あのさ、どうして副業を禁止にしてる会社があるわけ?」

 今日も部室で、遥が部活には関係のない話題を切り出す。

「どうしたの? 急に」

 と葵。

「副業解禁ってニュースを見て初めて、副業がダメなんだって知ったんだけど、なんでかなぁ~って」

「会社にもよると思うけど、本業に影響が出るからというのが一番多いんじゃない? そもそも、会社が社員の副業を禁止すること自体、法律上は原則として認められていないんだけどね。公務員は別として」

「なんか、『部活をしたら、勉強がおろそかになるから辞めなさい』って感じの理由だね」

「そうだね」

 葵が相槌を打つと、遥は納得した顔で軽く頷いた。それを見て、葵は話は終わりだと思い、持っていた本を読み始める。その隣では、楓が教科書に落書きをしていた。

「なんで、急に副業を解禁したんだろう?」

 再び遥が話し始めたので、葵は本を閉じて答えることにした。

「ニュースで、理由には触れてなかった?」

「なんか言ってた気がするけど、家を出る時間になったから聞いてない」

「あぁ、登校前に聞いたのね。よく言われてる理由は、優秀な人材を引き留める為っていうのがあるけど」

「えっ、なんで引き留めに繋がるの?」

「優秀な人の中には、自分で商売した方が儲かりそうだなって、考える人もいるんだけど、そういう人だって会社を辞めて起業するよりも、会社に残ったまま新たなビジネスにチャレンジできる方が、リスクが少なくて済むでしょ?」

 説明を受けたものの、遥は難しい顔をするだけだった。

「なんて言ったらいいかなぁ……。釣りをしていたとして、隣の池の方が釣れそうだなと思ったとき、今いるとことにも釣り糸を垂らしたまま、隣の池にも垂らせたらいいよねってこと。一箇所だけってルールだと、隣の池に移動したら、今いる場所で釣れる分を失う訳だから、思い切りが要るよね……みたいな」

「ん~、なんとなくわかったかも」

「他にも、満足な給与を出せないから、もっと必要なら副業をして稼いでよというのが本音のところもあるだろうし、社風として副業で多様性を得たいところもあるって聞いたよ。副業で業務外の知識が身に付いて、それが本業に活かされることもあるみたいだしね」

「へぇ~……」

 とは言うものの、遥の視線は葵ではなく、天井に向けられていた。また、何やら変なことでも考え始めたのではないか、そう思う葵だった。

「副業かぁ……。やるなら、どんなのがいいわけ?」

 再び、疑問が投げかけられる。

「それは職業によるんじゃない? 本職の知識が活かせるものとか……。勿論、やりたいことがあるなら、それがいいと思うけど」

「本職の知識が活かせるものかぁ……。例えばさ、警備の仕事をしている人だったら、巡回時間とかに詳しいから、副業は泥棒がベストみたいな?」

「例としてはいいけど、それは完全にアウトだからね」

「だよねぇ~。楓はさ、本業と副業の組み合わせで、なんか良さそうなの思いつく?」

 話を振られた楓は、落書きをしながら口を開く。

「アニメーターが、イラスト素材の販売で稼ぐ」

「それって……」

 と言いかけて、葵は口をつぐむ。本業よりも稼ぎそうだから、そっちが本業になるんじゃないかと言うところだった。耳に入ってくる低賃金という情報だけで、滅多なことを言うもんじゃないと思い直し、言葉を飲み込んでいる。

「絵を描いてる人は、やっぱ副業も絵かぁ……。それじゃさ、学生に合った副業って何? 何をやったら本業が活かせる? JKお散歩とか?」

「それはどうかと……。昔から、若さをウリにするのは、あるみたいだけど……」

「でも、他に高校生がウリになるって言うか、高校生だからできることって無いような……。あっ、いいこと思いついた! 高校のレビューサイトを作ろう」

「は?」

 唐突な思いつきに葵の口が大きく開く。

「購入者レビューって、購入者しか書けないじゃん。だからさ、その高校のレビューも、高校生しか書けない。ってことはだよ、その高校の評判を気にしてる人に需要があるんじゃない?」

「まぁ、そうだね……」

 遥にしては真っ当なことを言っているなと思いつつも、それはそれで納得できない葵だった。

「そのサイトを見ると校風とか、ムカつく先生とか、嫌な生徒とか、イケメンが多いかとか、学食は何が美味しいかとか……そういうのがわかる感じのヤツ。きっと流行るよ」

「兄が通っていた大学には、単位が取り易い授業は何か、大学周辺でオススメの飲食店はどこか、みたいな情報誌を出してるサークルがあったけど、そんな感じに……ン? でもサイトだから、転職の口コミサイトに近いのかなぁ」

 ぶつぶつ言う葵をよそに、遥の語りは熱を帯びていく。

「問題はレビューをしたら、どんな得があるかだよねぇ~。書いても何も貰えないと、あんまし流行らない気がするし……。投稿するとポイントが貯まるとか、そういうのが要るよね。でもって、ポイントはギフト券と交換できる感じで……。どう? いいと思わない?」

「ン? うん……」

 あまり聴いていなかったが、葵は取り敢えず同意してみた。

「よぉ~し、じゃ誰かに作ってもらおう。そしたら、あたしは学校レビューを書きまくる! うちの高校だけじゃポイントが貯めづらいから、他の高校にも通ってレビューするんだ。高校生の副業で高校生をやって儲ける! 定時制ならいけるよね?」

 立ち上がってドヤって見せる遥に対し、楓がゆっくりと口を開く。

「学費の方が高くつく……」

 その一言で興奮が冷めた遥は椅子に座り、つまらなそうに頬杖をつく。

「終了~」

 と言って遥は、この話題を終わりにした。

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