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番外編:気付かない恋心

初めての祭りの続きです。

尾張を後にした斬紅朗と藍璃は再び奥州を目指して北に向かった。


昨夜の事を気遣い斬紅朗は藍璃を哀しい想いにさせないように奥州な事について話した。    

年に一度、国を上げての大祭、罪を犯した罪人に課せられる処罰、女達が機を織りながら歌う童歌。


そんな斬紅朗の気遣いが嬉しかったのか藍璃は斬紅朗が話し終えると同時に質問責めをした。          

藍璃の質問に斬紅朗は一つ一つ丁寧に答えた。


そんな二人を太陽が優しく奥州への道を照らしてくれた。













山の中腹辺りで茶店を見付けた斬紅朗は藍璃に休憩を促した。        


「お客様達はどちらに向かっているのですか?」


二人に三色団子とお茶を出しながら老婆が聞いて来た。 


「上野に向かっている所です」


奥州とは言えずに咄嗟に嘘の場所を藍璃が老婆に言うと老婆は愛想良く笑った。  


「左様でございますか。所で、お二人はどういった関係でございますか?」


老婆の質問に藍璃は戸惑った。


「主従関係ですか?それとも夫婦ですか?」


夫婦と聞かれ藍璃は顔を赤くした。


「えっ、そ、そんな夫婦なんて・・・・・・」


藍璃は戸惑ったが斬紅朗は冷静に否定した。       


「・・・・・いや。ただの連れだ」


斬紅朗の言葉に藍璃は傷付いた顔をしたが、老婆は笑った。     


「・・・素直じゃありませんな」


老婆の言葉に斬紅朗は金を置き先を歩いた。 


「あっ!ま、待って下さいよ!斬紅朗殿!」


急いで市女笠を持って後を追おうとした藍璃を老婆が止めた。


「・・・・・・どうか旅中ご無事で」


老婆は藍璃に紫色のお守りを渡した。    


「・・・・はい。お婆さんもお元気で」


笑顔で言うと藍璃は先を歩く斬紅朗を追った。














茶店を後にした二人は気不味い雰囲気を味わいながら山中を歩いた。


夜が近くなりこれ以上歩くのを危険と判断したため野宿に決めた。


火の中に薪を入れながら斬紅朗は取って来た野鳥を焼いた。          


「熱いから気を付けろ」


斬紅朗が焼き上がった野鳥を藍璃に渡した。


そんな些細な気遣いでも藍璃は嬉しかった。     


食事を済ませた斬紅朗は鞘から刀を抜いて手入れを始めた。


藍璃は膝を抱え斬紅朗の仕草を見つめた。  


その時、不意に冷たい風が吹いた。


藍璃は無意識に両腕を重ね合わした。   


「寒いのか?」


手入れを止め藍璃を見た。     


「・・・・・・はい。少しだけ」


苦笑しながら藍璃は答えた。        


「・・・・寒いのなら」


斬紅朗は自分が羽織っていた羽織りを藍璃の肩に掛けようとした。      


「それでは斬紅朗殿が羽織る物が無くなるじゃないですか」


藍璃が断ろうとしたが           


「俺は大丈夫だ。心配するな」


斬紅朗は気にするなと笑い優しく羽織りを肩に掛けて言った。      


斬紅朗の羽織っていた羽織りは気持ちが良かった。 


『・・・・・斬紅朗殿の羽織り、暖かい』


そんな風に思っていると藍璃は夢の世界に旅立った。     


藍璃が寝たのを確認すると斬紅朗は再び刀の手入れを始めた。
















斬紅朗と藍璃は月と松明の明かりを頼りに夜の峠道を歩いていた。


翌朝、山を下りている途中に猟師と出会い次の村までは峠を一つ越えないと分かり二人は急いだが等々、夜になってしまった。


先を急ぎながら斬紅朗は藍璃の歩く早さに合わせ歩いた。          


ウォーン!ウォーン!近くで狼の遠吠えが聞こえてきた。


藍璃は急に恐くなりその場に座り込んでしまった。 


「どうしたんだ?藍璃」


斬紅朗が後ろを振り向いた。


「こ、恐くなって足が竦んじゃて・・・・・・」


苦笑しながら立ち上がろうとするが足腰に力が入らず立てない。         


「・・・・・・」


斬紅朗は何も言わずに近づくとあっさり藍璃を自分の背中に担いだ。つまりおんぶだ。 


「斬、斬紅朗殿!」


顔を真っ赤にして藍璃は降りようと暴れた。       


「・・・大丈夫だ。気にするな」


斬紅朗は降りようと暴れる藍璃を宥めながら松明を片手に夜道を歩き出した。          

「安心しろ。何が遭ってもお前は俺が護ってやる」


初めは嫌がった藍璃も斬紅朗の大きな背中に顔を預け眠り始めた。


藍璃が眠るのを確認すると斬紅朗は驚くべき速さで峠を折り始めた。


峠を降りると近くの洞窟に入ると藍璃を地面に寝かせて火を点け寝ずの番を始めた。


藍璃はそんな事も知らずに幸せそうに眠り続けた。



また番外編でお会いしましょう。

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