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超絶技巧前哨戦

     ……………


 忍如、アナスタシヤの同時攻撃に天出仁はニヤリと笑う。


「出たとこ勝負と言ったところか……。正に、ね……」


 その独り言の後、正確かつ高速な呪文の詠唱を完遂する。


『所詮この世はサイコロ勝負 分の悪い賭けだけご臨終 死ぬか生きるかまた一勝負』


 天出仁の手からは六面サイコロが地面に零れ落ちる。そのサイコロが目を示す瞬間。忍如、アナスタシヤの二者はその同時攻撃を天出仁の無防備な喉元に到達させる。

 現れた賽の目は『4』。

 天出仁は出た目に更なる笑みをこぼす。


――ままならねえな。ククク……。


 喉元に突き刺さるアナスタシヤのナイフ、そしてその逆側には忍如の魔力によって鋭さを高められた手刀。双方、天出仁の喉、その表皮へ滑り込み、肉へと切先を押し込む。

 瞬間、わずかな鮮血が刃に滲みだす。

 しかし、忍如は違和感を覚え、手刀を引き戻す。


「!?」


 時、すでに遅し。


――動かん!!


二者の刃はその位置にがっちりと固定され、留まる。押す事も退くこともできない。

 刃の上に滲んだ血液が、魔術の触媒として、文様を描き出し、二人の動きを硬直させる魔術結合が完成する。それは自身の身体のあらゆる部分を魔力によって子細に操作することができる天出仁が織りなした超絶技巧。


 手練れの二人はその規格外の無詠唱紋章魔術に一抹の畏怖を覚える。


 だが、当の天出仁は硬直した二人に目もくれず、真っ直ぐ正面に存在するシュウメイの魔術障壁を見定め、そちらに歩み寄り手を伸ばす。


 そのとき、突如として正面の魔術障壁が遥か後方のシュウメイと位置を入れ替える。


 彼の魔術を利用した奇襲は、天出仁の予知によって看破されていた。


 彼は、そのことへの驚愕で一瞬動きを硬直させつつも周囲の障壁を天出仁に向かわせ、自身も徒手空拳、半身を切った構えから最速の突きを放つ。


 だが、天出仁の腹部にその突きが触れた瞬間、その拳は魔術結合に囚われる。


――無詠唱魔術!

 いや、強度は大したものではない。物理的紋章も無くすぐ解呪可能!

 焦らず解呪だ!


 シュウメイがその魔術結合の解呪のため、魔力操作を行う中、拳に纏わりついた魔術結合は《《天出仁自身の手によって》》解呪される。


――どういうことだ!?

 いや、魔術の発生条件か!!


 天出仁の後方にて血の紋章による拘束を抜け出そうとする忍如とアナスタシヤも、天出仁の手によって魔術が解除。解放される。二人は急ぎ、天出仁に飛び掛かる。

 

 天出仁の背後にはギラギラとしたネオンサインに彩られる、闇夜に冴え渡るルーレットが出現し、回転と共に絵柄を示す。


「ヒャハハハハ! 焦ってるボケ共! いいこと教えといてやるぜ~?」


 仰々しい演出からそう語る声が響く中、シュウメイ、忍如、アナスタシヤはそれを一瞥もせず天出仁へ攻撃を急ぐ。


 だが、全員は攻撃を行う事が出来ず、姿勢を崩し、『痛み』に身をよじる。


 天出仁の魔術『素晴らしきこの世界(ラッキー38)』はなおもハイテンションで語る。


「演出よりも『先』に効果は出てる。オメーちゃんたちはもう天出仁の呪物に呪われちゃってんの♡」


 天出仁はニヤリと笑う。

 彼の背後にてリズムと共に光と演出を放つルーレットは絵柄を表示していく。

 荘厳な日本家屋の中、柱に打ち付けられた血を流す一本の腕。

 『愛の手(ネビロスの庭園)』である。


 天出仁を中心として、周囲は日本家屋の一室へと一気に姿を変える。

 幻覚による『偽物』の、しかし実感のある『本物』の空間。天出仁を含めた、周囲にて膝をつく魔術師たち全員の胸に釘で打ち付けられた血を流す『愛の手』が現れる。その流れ出す鮮血が全員の神経を刺激し痛みを徐々に増幅していく。

 忍如はその痛みにいち早く慣れ、そして自身の神経に防御用の簡易神経操作術を施すと、すっくと立ちあがり天出仁に立ち向かう。


――結界術……。儂の感知では心念たち後方の無事もわからん。

 だが、儂の魔術は『反撃カウンター型』そしてこの広大かつ高度な結界空間にて実存し得る強度と単純さを持つ……!

 火力で奴を制する……!


 忍如を守る魔術防護は反転し、彼の背後に明王が現れる。そして、予備動作なく火球の掃射が開始される。


 一方、アナスタシヤも本来意味のない無線を利用し、彼女の魔術を発動する。


「RLからHQへ、HQへの帰還任務遂行のため、敵対的魔術師排除の緊急追加任務を遂行する。排除対象、天出仁!」


 彼女の身体に走る激痛は増幅し、しかし彼女の身体能力、魔術能力もまた爆発的に増幅する。彼女は自身の神経を最低限、術によって守ってはいたがそれ以上に天出仁への攻撃力を重視。霊魂たちも出現させ一気に攻撃を開始する。

 迫りくる火球と霊魂を操る魔術師に、天出仁は気にすることも無く、ごそごそとコートの内ポケットをまさぐる。

 

「地産地消、それが《《私の目的》》にも適うからね」


 そう呟くと彼は、ポケットから丸い鏡を取り出す。だが、その鏡は周囲の情景を反射することは無く、そこに映されている像は『龍』の姿であった。


「君の真名は『大津悪龍おおつのおろち』さあ、行っといで」


 鏡より、『龍』が真っ直ぐ、その長い胴体を過ぎ去る電車の様に顕して突撃する。

 龍の咆哮は雷を帯び、その天神としての力を示す。天出仁に近しい実力を持った強靭な神霊は、目の前に立つ忍如、アナスタシヤたちへとその突撃を続ける。勢いは加速され続け、空を切り裂く音がはじける。


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