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異世界転生詐欺に遭いました  作者: 雪ねこ柳


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1/2

1・レネーの場合

初投稿です。

前半後半の2話で終了となります。

 気がついたら、別人になっていた。

 そんなこと言っても信じてもらえないだろうけど。


 28歳独身のOL。

 趣味はアニメ鑑賞やゲームに読書。特にラノベが好き。

 そんな私だからこそ、即わかるよね。いやあ、私、異世界転生したの〜?って。

 今までの生活やら、仕事やら、いろいろヤバいかなと思うことはあるけど、憧れの異世界転生。

 とりあえず、テンション上がるよね?


 でもこの体って生まれたてじゃなくって、高校生くらいかな。

 これってこの子が死にそうになって、前世の記憶が戻ったってやつかな。


 そんなこと考えていたら、この子の記憶が入ってくる。

 貴族だけど、ド貧乏で、高熱でてるのにお医者様にも診てもらえないみたい。

 そういえば、すっごくだるくて熱い。喉がかわいたな。

 うっすらと目を開けると、


「お嬢さま、大丈夫ですか?」


 確か侍女よね。記憶の中から名前を思い出そうとするけど、まだよくわからない。

 彼女が手を握ってくれた。


「お水が欲しいわ」


 と言うと、侍女は急いで部屋を出ていった。


 ゆっくりまわりを見回す。

 寒い部屋。飾り気のない薄暗い部屋。

 唯一女の子らしいのは、枕元に飾ってある、ビスクドールくらいか。


「私の名前は、レネー・グライムス。16歳。貧乏男爵家の長女かあ」

 徐々に記憶が浸透していく。


 彼女の記憶を掘り起こしてみた。魔法はある世界だけど、ラノベほどチートな能力はなさそう。

 あと、貴族が通う学園には通っているみたいだけど、王子さまとか恋愛シミュレーション系ゲームの要素がありそうなキャラも記憶にない。

 家族は両親と2歳下の弟ね。


 それならと、日常生活で足りないものを記憶から探す。

 舞台は中世っぽいかな。不便なところは多そうね。


「これは、生産系のチートで儲けるしかないわね」


 転生ラノベ読者としては、いつでも転生していいように、調味料や石鹸の作り方は覚えているものだ。


「やってやるわ〜」


 これは、ラノベで培ってきたノウハウを活かす時ね。領地改革やら、食事の改変とか、うはうは儲けてやるわ〜。


 うふうふ笑っていたら、水を持ってきた侍女に変な顔されたわ。

 ああ、名前はカリエンだったわね。


「お嬢さま、お水を」

「ええ、ありがとう」

「もう大丈夫ですね」


 カリエンがにっこり笑っていたから、私も微笑みかえしておいた。



**********



 それからは、怒涛の日々だったわね。

 回復してから、衣食住の改革実践。美味しいものとかドレスの流行の波を起こして注目を浴びたわ。


 レネーはもともと勉強はできる子だったけど、私の知識と合わせて、さらにパワーアップ。

 商会をおこしたり資金を貯めたり、社交デビューも完璧にこなしたわ。


 そこで運命の出会いを果たしたのが、クラム侯爵家のフィクトルさま。

 黄金の髪は少しウェブがかって肩まで流れていて、サファイアの瞳は少し鋭くて。

 背は高め、ムキムキではないけど鍛えているのはわかる。

 彼は他の貴族に絡まれていた私をスマートに救い出してくれて、優しく微笑んでくださったのよ。


 はい、ホールインワ〜ン。

 速攻、恋に落ちました〜。


 チョロいって言わないでよね。

 彼は優しく私を甘やかしてくれるの。

 でもそれだけじゃなく、私が商会を運営するのをちゃんとバックアップしてくれる。

 貴族女性が働くのは好意的に思われない世界だけど、彼は、


「君は素晴らしい才能を持っている。これは世界の為になるんだよ。自分に自信を持って、好きにやればいいんだよ」


 って。


 そして、20歳の誕生日と同時にプロポーズされたわ。

 はい、もー、喜んでー。

 ですよね〜。うはうはうはっ。


 あと少しで結婚式というときに、事態は思わぬ展開を迎えるのであった。やばい。



**********



 ある朝、目が覚めたと思ったんだけど、身体が動かない。

 誰か呼ぼうと声を出そうとしたけど、出ない。

 でもまわりの声は聞こえる。


「やっと元に戻れたわ」

「お嬢さま、お疲れさまでした」

「これでもう一安心ね」


 この声を知っている。

 私の声。レネーと侍女のカリエンだわ。


 どうして、私の声で、私以外が話しているの?


 ふいに私の目が片方開いた。もう片方も。

 開けたのはレネーだった。

 パチパチと音がした。この音は聞いたことがある。いつも枕元に飾っておいたビスクドールのまぶたの開閉音だ。指で上げると目が開く仕様になっていた。


 私の目が、ビスクドール?

 私が私を覗き込んでいる。


「私のことがわかるかしら?あなたのおかげで助かったわ。

 お世話になったことだし、教えてあげるわね。

 うちはおじいさまの借金が多額にあってね。

 このままだと私は金持ちの後妻として売り飛ばされそうだったから、家に隠し財産とかないかなって屋根裏部屋を捜索していたら、ご先祖さまの日記が出てきたのよ。

 そこに、異世界から魂を招きよせる方法が記載されていたの。

 ご先祖様はこの技を使って、異世界人を招いて、領地改革を手伝ってもらったらしいわ」


 そうか、私の魂はレネーによって召喚されて、今ビスクドールの中にあるのか。

 そして、レネーは私の生まれ変わりではないと。

 そして、そして、この状況は。


「おかげさまで領地は潤ったし、お金持ちにもなれたし。それに素敵な旦那様も手に入ったわ。

 だからね、あなたはもういらないの。あなたの魂が私の体にいる間に、あなたの記憶はすべてもらったから」


 なんですとー?

 私のすべての記憶って、あんなのやこんなのや、恥ずかしいのや、やべえやつとか。


「知識よ、知識」


 あ、こいつ、わかってやんの。

 ちょっと赤くなってる。

 お願い、忘れて。頼むから。


「まあ、いいわ。ちなみに異世界から呼びよせた魂は、もう元の世界には戻せないのよ。このまま捨ててもいいんだけど、何かあったら困るから、しばらくはこの中にいてもらうわね」


 え、人形のままなの?、結婚式がもうすぐなのに?


「結婚は、私がするのよ」


 レネーは、ニンマリ笑うと、侍女と部屋を出ていった。

 わざとなのか、瞼は閉じられなかった。


 そこからは見ていることしかできなかった。

 声をあげても、助けはこない。人形から抜け出すことも無理だった。私が出来たのは、ただ見ているだけ。


 レネーは人形を嫁ぎ先にも持っていった。

 大切なものなのと言って、寝室に飾っていた。

 私が得るはずだった、彼との結婚生活。

 レネーは私に見せつけるように、人形の前で彼とキスをするのだった。



**********



 あれから2年ほどして、事態はまた動き出す。

 私はちーっとも動けませんけどねー。


 びっくりしたよね。

 レネーとフィクトルが、商会のことで口論始めてさ。

 どうやら、彼が商会のお金を好き勝手に使っていたみたいなんだよね。

 おまけに愛人もいるみたい。

 結婚しなくてよかったな。うん。


「離婚よ、商会は私のものなんだから!」

「離婚してやるが、あれはもう私のものだ!」


 愛はどこにいったー?それともはじめから、商会狙いだったのかな。


 フィクトルがレネーの首を掴んだ。

 ああ、見たくないな。

 昔の私が死んでいく。

 レネーが私を見た。

 助けてやれないよ。

 入れ替わってなんか、やれないからね。


 フィクトルがレネーを床に放りだす。

 どさりと音を立ててレネーが倒れこんだ。


「やっと終わったな、うるさい女だった」


 悪かったな。私のおしゃべりなんか、うるさくて仕方なかったのか。

 出会った頃のデートとか思い出して泣けてきた。

 そういえば、そもそも私って、デートなんかゲーム内でしかやったことなかったからな。

 嬉しくってテンション上げ上げだったわ。

 いろんな意味で泣けてきたな。


 フィクトルは執事を呼びに部屋を出ていったようだ。

 廊下で声がする。

 その隙にカリエンが部屋に入ってきた。


「奥様、ああ、なんてこと」


 もう事切れていることは理解しているのだろう。レネーには手を触れずにそっと離れていく。

 そして()をつかむと部屋を出ていった。

 私を連れてどこにいくのよ?


「まて!」


 カリエンが走り出した。慌ててフィクトルが追いかけてくる。

 もう少し大事に持ってくれないかな。ゆれるのよ、酔うじゃない。あわあわあわ。


 階段の手前でフィクトルに腕を掴まれて、私を放り出した。


「許してください、何にも言いませんから!」

「だまれっ!」


 カリエンが宙を舞う。

 フィクトルが力一杯、カリエンを突き飛ばしたから。

 階段から転がり落ちていく様を、ビスクドールはしっかり目撃した。



**********



 私、ビスクドール、今度は応接室に置かれるようになったの。

 レネーは死ぬとき私を見てたし、カリエンも盗んで逃げようとしたし。大事なものだと思ったんじゃね?

 かといって部屋に置いておくと気持ち悪いんだろうな。しまうのもなんだし。

 いろいろあったからねえ(遠い目)


 先日レネーの葬儀が執り行われた。

 階段で奥様と侍女が落ちて亡くなったのだ。

 階段から落ちた奥様を助けようとした侍女も巻き込まれたのだそうなー(棒読み)


 葬儀が終わって数日後、応接室には、レネーの弟のエドがいた。

 私が憑依する前はあんまり仲良くなかったみたいだけどね。

 でも、私ひとりっ子だったからね、兄弟欲しくて。

 やっぱ弟って、いいよね〜。だから、うれしくてつい可愛がってしまったな。


「姉上、変わりましたね」


 って言われて、やばいーとは思ったけど、


「弟なのだから、可愛く思うのは当然のことよ」


 って、ごまかしたな。

 んで、めちゃ可愛がったな。

 みんな呆れてたな。

 その節はすんませんでした。


「あんなに元気な姉上が亡くなるなんて。事故は怖いですね」

「私のせいです。もう少し安全管理を徹底していればこんなことには」


 よっ、主演男優賞〜。

 よく泣けるなあ。あ、水魔法か。


「ひとつお願いがあるのです」

「なんでしょう?」


 フィクトル、水魔法オフ(笑)


「姉上の遺品をいただきたいのです。家にはそれらしいものが何にも残っていなくて」


 そうだな。自分のものは全部持って嫁いだからなあ。

 でも、いるんか?そんなもん。


「そうですね、何がいいでしょう」


 そっか、嫌いな女の物なんていらないよな。金目のもの以外は。


 弟は私のほうを見て、ニコっと笑った。

 え、目があった?


「姉上のビスクドールをもらってもよいでしょうか?子供の頃からの思い出の品なんです」

「あ、あれは」


 フィクトルのやつ、慌ててやんの。

 あれは目撃者ですぅ〜って、誰か言ってやれ言ってやれ。


「あれは、彼女が大切にしていた人形です。私にとっても、あれは彼女の分身のようなもので」


 意外とするどいな、こいつ。

 合ってる合ってる。


 弟は少し残念そうな表情を浮かべて、


「そう、ですよね。残念ですが....」


 諦め早いなー。

 私としては、連れ帰ってほしいけどな。


「すまない....」


 水魔法、オン(笑)



「一度触れてもいいでしょうか?」


 その程度ならと、いや、それを拒否したら怪しまれそうだもんな。

 弟はフィクトルの前でビスクドールの頭に手を乗せた。


「懐かしいです。姉さま、お別れですね」


 頭を撫でる手を感じる。

 優しい、弟の手。

 弟よ、元気でな。もうここに来てはいけないよ。

 さよなら。


 私は心の目を閉じる。



**********



 そして。

 あれ、ここどこ?なんか揺れてる?


「ここは馬車の中ですよ。家に向かっています」


 あれ、人形は置いてきたんだよね?


「ええ、あんなものの中に入れっぱなしにはしませんよ、ねえさん」


 自分がどんな状態なのかわからないけど、とりあえず弟の手の中にいる気がする。


「ビスクドールから別の人形に移しました。もう大丈夫ですよ。見えますし声も出せますよ」

「え、ほんと?」


 慌てて、淑女らしくない声を出してしまった。



 弟は笑って手の中の小さな人形に話しかける。


「やっとねえさんを取り戻せました。幸せに暮らしているならそのままにしてたのですが、調べたらいろいろ出てきましたからね」

「ねえ、その様子だと私のこと、わかっているのよね」

「ええ、あなたは姉が異世界から召喚した魂ですよね」


 知ってたんかい....。


「どうして知っているんだと思います?」

「まさか」

「ええ、僕もあなたと同様だからです。異世界から来たんですよ」


 なんてこったい。二人いたのか。



「僕の場合は、エドの魂は死んで、彼は体に残っていませんけどね」

「いつからそうだったの?」


 私が可愛がっていたときに?

 彼はふふふと笑って、


「あの姉が、すぐに自分に秘術を施すタイプだと思います?僕は実験に使われたんですよ」




 レネーは秘術を発見した。家の歴史を調べると確かに突然家が豊かになった時があって、秘術と一緒に残っていた日記と内容が一致していたので、信じることにしたらしい。

 ただし、下手をすると死ぬことになる。

 だから弟で実験したのだ。


「この秘術は死にかけたものに、異世界から魂を召喚して憑依させるものです。

 そして異世界人の記憶から必要な情報を得るという。

 異世界人にはこちらの情報は都合のよい分だけ与えることも可能なようです」

「そっか、だから私はレネーの計画がわからなかったのね。レネーの体に入ったときにあの子の記憶が入ってきたのに、計画はわからなかった」

「そうです。でも僕の場合はエドの体に入った途端に、彼は死んでしまった。その時に彼の記憶はすべて受け継ぎましたけどね」

「私の場合は高熱で死にかけてたと思うんだけど、エドの場合は」

「一緒ですよ。ただし真冬の池に突き落としてね」


 どうやらもともとレネーはエドをいじめていたみたい。

 どおりで私が弟をかわいがっていたら、みんな死んだ目で見ていたはずよね。



「とりあえず、死にかけた体を用意しましたので、こちらに移動してください」


 簡単に言うなあ。それにしても、


「あなたも秘術を使えるのね」

「もちろん、必死になって覚えましたよ」


 やり方は聞かないでおこう。

 なんか笑顔が怖いし。


 エドは孤児院から死にかけている子供を用意してくれて、死ぬ瞬間に私の魂を転移させてくれた。

 その後は彼のメイドとして生きている。


「そもそもねえさんはいろいろやりすぎたんだよね。いくら異世界転生が嬉しかったからって、目をつけられるでしょ?」

「すまぬ」

「だからあんな屑に目をつけられるんだよ」


 まあ、そのおかげでレネーが死んだからいいのかって、ぼそっと言わないでくれる?



 そういえば、フィクトルは、逮捕されたらしい。

 そもそも私からレネーに中身が変わった時点で、周囲が何かおかしいなと思っていたらしくて。

 いくらお互いの記憶があっても、考え方がまったく違うわけだし。

 そんなにキャラが違ってたかなあ。商会の仲間も不審に思っていたみたい。


 フィクトルが商会の経営に絡んできた時点でますますあやしいと思っていた商会の会頭が、騎士団に相談していたらしいのね。


 そこで騎士団がコッソリ使用人として潜入捜査していたところでレネーが死んだわけだから。

 そりゃ捕まるよね。


 フィクトルの実家も商会のお金を使い込んでいたみたいで、そちらも逮捕。

 商会はそのまま独立したみたいだけど、特許料は、元々レネーのものなわけだし。

 フィクトルが名義をこっそり変更していたらしいけど(公文書偽造)、捕まったじゃん?

 だから、巡り巡ってレネーの肉親の弟に入るようになったらしい。


 とりあえず我々は、特許のおかげで安定した暮らしが保証されたのよ。

 それって、結局は私のおかげだよね。


 ま、とりあえず、しばらくはのんびり暮らすわ。


 今更だけど、これって、異世界転生詐欺よね。

 みんなも死んだら、気をつけてね。

後半に続きます。

明日投稿予定です。


恋愛は後半です。(若干)

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