最悪の小説
な・・・。なんだこれは・・・!!!!
美奈はすさまじい絶望感に襲われた。
こんな小説、世界にあっていいものなのか!?
あらすじを紹介しよう・・・
”ある村に、貧しい少女が住んでいました。名前はマレリリア。
彼女は大変美しい心を持っており、飢えた人に自らの小さなパンをすべて与えてしまうような優しい少女でした。
マレリリアは早くに両親を亡くしていたので、祖母を介護しながら生活していましたが、その祖母さえも、マレリリアを置いて天国へ旅立ってしまいました・・・。
悲しみに暮れたマレリリアは、ふらふらと家を出、行く当てもないまま道を歩きました。
そこへ、たまたまこのウェラーリム王国の王子・マティオが通りかかり、彼女を憐れんで城へ連れて行き、自室にかくまいました。
それからマレリリアとマティオは恋に落ちます。
やがてマレリリアには、天から授かりし最強の力があることが発覚し、王子と同じディラン学園へ入ることとなりました。
そこで、彼女の人柄で多くの男が惹かれ、学園の三大戦士の全員を虜にします。
また彼女は大変頭がよく、その力を民のために使ったので国王にも気に入られ、ついに女性初の大臣にも任じられます。
マティオが20歳になると、国王は「マレリリア以外に、王子の妃はいない」といいます。
マティオには婚約者がすでにいたのにかかわらず・・・。
多くの男は彼女の結婚を残念がりましたが、マレリリアの幸せを願い、花束を贈りました。
マレリリアは王子と結婚し、その力を捧げ、末永く幸せに暮らしたとさ、めでたしめでたし・・・”
いやめでたしじゃないだろ!!
こんな都合よく運ぶことってあるか??
男に囲まれ逆ハーレム。
その生まれながらの力と頭の切れで大臣まで一気に下剋上。
そして最後まで一人だけ輝く、主役最強パターン。
・・・。
ふざけるな、マレリリアっ!世の中そんなに甘くないんだよ!
婚約者かわいそうだし・・・。
自分たちだけ幸せになってっっっ!!!!
電車の中で美奈はこぶしを握り締めた。
悔しい・・・!!
”次は下川~、下川でございます・・・。お降りの際は・・・”
はっと美奈は顔をあげ、慌てて荷物を抱えた。
プシューっと扉が開き、さっさと美奈は下車した。
なんだか心がもやもやする・・・。
美奈はカバンを持ち直して、会社へと歩き出した。