2.公園で出会った仲間。
「勢いで出てきたはいいけど、手掛かりもないし。どうしよう」
――何事も準備が大切。
ボクは避難所を飛び出して小一時間経過してから、そう思った。
「しまったなぁ。とりあえず、その辺の魔物は大したことないから良いんだけど。これじゃあ、いつになったらサナのお父さんを見つけられるか……」
ボンヤリと、満月を見上げながらつぶやく。
誰にあてたわけでもない声は、空気の中にすんなり溶けていった。
「サナの家の方を目指してきたけど、いるかなぁ……」
慣れない道をウロチョロしながら。
ボクは壁に寄りかかって、少し休憩することにした。
改めて周囲に魔物がいないことを確認して、ふっと息をつく。現状で遭遇した魔物は、手持ちのバットで一撃だった。
サナの母親や、自衛隊の人が警戒する理由はよく分からない。
でも、たしかに油断はよくない、とは思った。
「たしか、あっちの方に公園があったよな。座って休憩しよう」
でも、今はとりあえず休みたい。
体育の成績は4だけど、運動のできる生徒と比べたら体力はない方だった。強いて長所を上げるなら、毎日のパシリのお陰で、短距離走が得意というくらいで。
「――と、あれって?」
そんなことを考えながら歩いていると、公園が見えてきた。
そして、あることに気づく。二つあるブランコの片方に、男性がいた。それなりにガタイは良いが、遠目からでも分かるくらいに疲弊している。
もしかしたら、逃げ遅れた人なのかもしれない。
「あの! すみません!!」
「ひっ!?」
そう思って、ボクは声を張り上げた。
すると男性は大きな身体に似つかわしくない悲鳴を発する。どうやら、魔物がきたのだと勘違いされてしまったらしい。
思い切り迎撃態勢を取られる。
「あの、大丈夫ですよ。どう見ても人間でしょう?」
「…………あ。あぁ、そうみたいだな」
なので、警戒を解いてもらうために大きく腕を広げてそう言った。
するとようやく、男性は安堵したようにうな垂れる。
でもそれと同時にハッとして――。
「――しっ! 静かに!」
「え……?」
人差し指を立てて、そう口にした。
どうしたのかと首を傾げるボクに対して、彼は真剣な表情でこう続ける。
「あのバケモノが、音に気付いてくるかもしれない……!」
「あの、バケモノ……?」
どうやら、男性は魔物から逃げてきたようだった。
だからあのように警戒をしていたのだろう。ボクは一人、そう納得した。
「あぁ、そうだよ。他のバケモノとは比べ物にならない大きさだ」
「そうなんですか? それじゃあ、早く逃げないと」
「それは、できない……」
「え……?」
ボクの提案に、彼は首を左右に振る。
逃げてきたのに、逃げることはできない……?
「どういう意味ですか?」
意味が分からずにそう訊ねる。
そうすると彼は、汗を拭ってこう答えた。
「娘を探しているんだ。ちょうどキミと、同じくらいの年の、な」
「そう、だったんですか」
なるほど、それなら逃げられないよね。
ボクはうんうんと頷いて、こう男性に提案した。
「だったら、ボクと同じですね! 協力しませんか?」――と。
すると、男性は少し驚いたような顔をした後。
小さく笑ってから、こう言った。
「本当はキミみたいな子供を、守らなければならないのだろうが――背に腹は代えられない、か。それに、一緒の方が安全なのは、確かなことだ」
そして、こちらに手を差し出す。
「安藤ソウタだ。よろしく頼む」
ボクは一つ微笑んでから、男性――安藤さんの手を取った。
「はい! よろしくお願いします!!」




