1.少年の決意。
避難所はボクの通ってる高校だった。
体育館にはバリケードが張られており、自衛隊の人が立っている。ひとまず挨拶してから、サナと一緒に中に入った。すると目に飛び込んできたのは、ケガをしている人々の姿。
救護隊の人たちが必死に動いているが、明らかに手が足りていなかった。
「えっと、あ……! ママ!!」
「サナ!? ――あぁ、無事だったのね!」
周囲を確認したサナは、先にやってきていた母親と合流する。
チワワのリクも一緒になって、家族の再会を喜んでいた。
「でも、どうして……?」
「うん。そこの男の子――間宮くんに助けてもらったの」
「あら、こんな可愛らしい男の子が?」
「ど、どうも……」
サナのお母さんに、軽くお辞儀をする。
そうすると、まるで我が子のように抱きしめられた。
「怖かったでしょう。ここなら、安全ですからね……」
「え、いや。そこまで怖くは……?」
困惑しながらも、それに甘える。
たしかに、疲れたは疲れたからね。
「あれ? そういえば、パパは……?」
「それが――」
と、そんなことをやっていると。
ふと父親の不在に気づいたらしい、サナが母親にそう訊ねた。すると母親は、どこか泣き出しそうな表情になってこう口にする。
そして、それは考えられるうちで最悪の事態。
「お父さん、サナを探すって言って……」
「え、そんな!?」
二の舞、というやつだった。
サナは母親の言葉を聞き、手で口元を覆う。
大人ならそこまで危険ではないのでは、と思ったが、ここは何も言わないでおこう。少なくとも魔物が出ている状況では、危険であることに変わりない。
「助けに行かないと!」
「なにを言っているの!?」
「え、でも……!」
なので、とっさに口を突いて出たのはそんな言葉。
しかしサナの母親は、驚愕に顔をゆがめてボクのことを制した。
「いま、自衛隊の人が捜索に出てくれているわ。それを待ちましょう……」
「………………」
そして、とても悲しそうにそう言う。
サナの方を見ると、彼女も同じような表情を浮かべていた。
「ありがとうね、間宮くん。でも、危ないよ」
「サナ……」
少女はそう口にしてから、一筋の涙を流す。
それを見て、ボクは――。
「…………!」
胸の内で、一つの決心を固めた。
◆◇◆
――時刻は、深夜二時。
ボクは体育館にいるすべての人が寝静まったのを確認して、外に出た。
自衛隊の人の目を盗むのは大変だったけど、思ったより人手は少ないらしい。なんでも、世界各国で同じような状況になっているらしく、きっと人数が足りていないんだ。
「よし、武器はこれでいいかな」
ボクは体育館倉庫に転がっていたバットを手に、駆けだす。
困っている人を見捨てるなんて、できない。
「行こう!」
ボクは少ない街灯に照らされる街中へと、繰り出した。