第34話、立体パズル
これからなにが起こる!?
そこで俺の手の中にあるボックスが、七色に光を放ち始める。そして俺の手を離れ立方体の形状を一度パーツごとに分解させると、なんと四面体の三角錐に組み上がり漆黒の色に落ち着いた。
その三角錐の一面は立方体と同じく9つのパーツに分かれており、そのパーツの一つ一つが全て三角の形をしている。
まだパズルをやらせるつもりか。いいだろう、やってやる、とことんやってやる!
今度は4分の1の確率か。
模様の種類は炎、水、風、土のシンボルである。
そして三角錐を手に取ろうとすると、勝手に横や斜めに回転して模様がぐちゃぐちゃになった。
くくっ、模様はどれでも良い。全て試してやる!
そうして時間もそこそこに最初に揃えたのは、水のシンボル。すると周りの液晶テレビの全てが深い青色に染まる。そしてその個々のビジョンに、濃い緑色の奇妙な台座——脈動しているようで見ようによっては生物のような質感のように見える——が映し出される。
そこでカメラワークが、その生物のような台座に近付く事でズームアップされていく中——
上の部分に十字の亀裂が走ったかと思うと、内からめくれるようにしてペリッとゆっくり開いていく。そして覗き込むようにカメラアングルが動いていくのだが、何かが飛び出して来たようで、カメラが真っ黒に映る。
とその瞬間、右から破壊音が!
咄嗟に見れば右側の液晶テレビの一台が破壊され、出来た穴からこちらへ向け何かが飛び出して来ていた。
地を蛇行して這うようにして俺に向かって来ているそいつは、カブトガニとタコを足して2で割ったような生物!
その生物は俺の近くまで来ると、顔面に向かって飛び上がって来た。
「うぎゃぎゃ」
そして椅子から転げ落ちた片足の俺に、そこそこ重いそいつは覆い被さってくる。
くそっ、くそくそ!
そこで8本の触手でガッチリと俺の顔面に張り付いたそいつを、手で剥がそうとするのだが——取れない!
「学氏、学氏! 」
秋葉も一緒になってそれを剥がそうとしている中、俺の顔面に張り付くその生物の内側から何かが伸びる。それは無理矢理口内に侵入してくると、喉の奥まで差し込まれた。
うぐぇ、ぐがぐがぐが。
そして喉まで差し込まれた管のような物から吐き出されるようにして出された固形物が、ズズッと確かに喉を通り俺の腹まで落ちていく。
嫌な予感がする。俺に寄生生物でも産みつけたのでは!?
そこで顔面に張り付いていた生物は、俺の顔面に粘液を残して干からびたカブトガニのようになって剥がれ落ちた。
「まっ、学氏、危険でござる! 身体に異変が起こる前に、退場するでござる! 」
「あひゃひゃひゃ」
俺は秋葉の手を再度払いのけると、三角錐を睨み付ける。
続行だ、続行なんだよ!
チラリと視界に映る秋葉は、尻餅を付き口を開き驚愕の表情を張り付かせて俺を見ている。
関係ねぇ、やってやる、俺はソラのためにやってやる!
「ソラ、空、ソラ」
腹の中で何かがぐるりと蠢き、激しく気分が悪くなる。しかし俺は這いつくばりながらも、一人で椅子まで移動する。そしてドカッと椅子に座り込むと、三角錐を手に取りパズルに挑む。
今度は炎だ!
「ふははは」
そして三角錐を回転させていき、あっという間に炎のシンボルを揃えた。
さぁ、どうだ? 来るなら来やがれ!
『キンッ』
扉の前にある二本ある鎖が、二本とも切れた。すると今まで交差する鎖で見えなかった扉の真ん中部分に、野球ボールくらいの大きさの丸い穴が空いている事に気がつく。
とそこで俺の手の中にある三角錐が、七色に輝き始める。
「ふふぁふぁふぁ」
そして輝きを見せていた三角錐は、形状を変化させて五角柱へと変わる。と同時に周りにある全ての液晶テレビが黒色へと変わった。そのため今も尚輝き続けている五角柱が、闇夜に浮かび上がるような形で存在している。
なんだ? いつまで待っても、今度は光続けているぞ。このままでパズルをするのか?
それにおかしい。五角柱のどの面にも、模様が描かれていない。この部屋では俺達に、模様を揃えていくゲームをさせるんじゃないのか?
……時間が勿体ない。俺は覗き込むのをやめて、五角柱に手を伸ばす。そして五角柱を手に取ってみると、五角柱をルービックキューブのように横へ回せる事に気がつく。そこで試しに真ん中の辺りを時計回りに回して見る。すると五角柱は尚も光を放ちながら、形状が六角柱へと変わった。
そうか、わかったぞ。あの扉の穴にコイツを嵌め込んだら扉が開くんだ! クリアの形状は球体なんだ! そしてあと少し、あと少しであの扉の先にいける! つまりこのクソゲームを、クリア出来る!?
それから六角柱を右へ左へいじくり回していく。すると様々な形状に変化していき、元ボックスだったそれが星形八面体に変わった時にそれが起こる。
真っ暗な左面全てのビジョンを使って、大きな真っ白な六芒星が浮かび上がる。そして乾いた風切り音と共に、全身——顔や手足などの全身と言う全身——にズキズキとした痛みが走る。
くそっ、なんだ?
輝く星形八面体の光で眼下の両手を見てみる。すると腕中にピアノ線のようなものが伸びており、その先である腕には釣り針のような物が付いているのだがその全てが表皮に食い込んでいた。そこで肉ごと皮膚が引っ張られる感触が。そしてぶちぶちと耳障りな音と共に、息をするのを忘れる程の痛みが全身を襲う。
「くびゃびゃっ」
熱い、顔や全身が、血が滾るかのように熱い!
そして関節を少し動かすだけで、全身がまるで切り傷を負ったかのようにヒリヒリ痛みだす。そこで浮かびながら光を放ち続けている星形八面体に、痛む腕がよく見えるように動かす。
すると光に照らされ確認出来た腕は、皮や肉が剥がされ筋肉が剥き出しになっていた。
……まぁいい、どうせハズレを引いたのだろう。それよりパズルだ!
「学氏——」
そこで激しい腹痛がした。それは一度で終わらず何度も何度も痛み、その痛みで前屈みになり動けなくなる。
もしかして、くっ、さっきのカブトガニみたいな奴に強制的に嚥下させられた物のせいじゃないだろうな?
くっそ、あまりの痛みでパズルが出来——
「ぐがが」
腹痛は間隔を狭めていき、そして脂汗が滲み出る中——そいつは出てきた。俺の腹を食い破って。
『ピギャー』
俺の腹から頭を覗かせる小さきそいつは、俺の血に塗れて真っ赤に染まっている。そして俺の腹から勢いよく飛び出したそいつは、暗がりの部屋の隅へと消えていってしまった。




