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プロローグ 少女たちの日常

 

「ママ、どこ……?」


 都内、某所にて。

 小さい女の子の迷子が、一人で住宅街を彷徨っていた。


「どこぉ……?」


 女の子の声に応える者は居ない。

 真っ昼間の住宅街にも関わらず、人っ子一人居ない。

 なぜなら、今この街には『黒い霧』に包まれており、避難警報が出されていたからだ。


『BM濃度が20を越えました。エリアコールを発令します。住民の方々は避難してください。繰り返します。BM濃度が20を――』


「ママ、どこぉ……」


 この街の住民――いや、この世界の人なら一目散にその場から逃げ出すその避難警報の意味もわからず、同じことばかり呟く。

 だから、その女の子の目の前に現れるのは優しい大人ではなく。

 大の大人だって裸足で逃げ出してしまうような『化け物』だった。


「……?」


 女の子は首を傾げる。

 なぜなら、目の前に居る『それ』は、タブレットの動画でも動物図鑑でも見たことのない見た目をしていたからだ。


 ――『それ』は、猿のような二本脚で立っていた。

 ――『それ』の右腕は、鳩の羽のようになっていた。

 ――『それ』の左腕は、ゴリラのように毛むくじゃらで丸太のようになっていた。

 ――『それ』の胴は、豚のように丸くなっていた。

 ――『それ』の頭は、トカゲのように鋭いものになっていた。


 明らかに、この世のものではない。

『鵺』。

『黒い霧』汚染された生物の成れの果てである。


「wo――――」


 その『鵺』は低く唸りながら右腕を振りかぶり、女の子に近付く。

『生きているものは全て殺す』

 それこそが、怪物『鵺』に備わった唯一の本能なのだから。

 しかし、


「狂気解放――」


 それを見逃すような『彼女達』ではなかった。


「――『覇者の黒衣(マグナディオ)』!」


 上空から降ってきた団子頭の女子高生が、鵺の頭を思いっ切り殴り飛ばす。

 直後、


「――『指先の暴力(フィンガーファイブ)』!」


 団子頭の少女が小さな女の子を抱え離れたのと同時に、銃弾が雨のように鵺に突き刺さた。


「woooo!」


「まだ死なないかぁ……」


 目を丸くしてる女の子を脇に抱えたまま、団子頭の少女が呆れたように呟く。

 そして、


「周寧!」


「わかってる!」


 上空から声が聞こえる。

 それは、翼を生やしたピンク髪の少女に抱えられた銀髪の少女のものだった。


「狂気解放――『心的収穫(ハーベストハート)』」


 黒い根が銀髪の少女の手から伸び、異形の怪物『鵺』に接続される。


「……弱点は腹のど真ん中!」


「わかった!」


 銀髪の少女の声に団子頭の少女が大きな声で応じると、小さい女の子は道路に丁寧に置く。

 次の瞬間、


「オラァ!」


 自動車もかくやといったスピードで鵺に近付くと、拳を目の前の異形の怪物に腹に叩き込む。

 すると、『ドパァァァァァァン!』と大きな音を立てながら怪物の腹が弾け飛んだ。


「wo……」


 化け物が小さく唸り声を上げると、そのまま体を消滅させる。

 死体も何も残らない、『鵺の死』だった。


「よし、一仕事終わり!」


 団子頭の少女が元気よく伸びをし、そのままその場から立ち去ろうとする。

 他の少女達も、団子頭の少女に追随しようとする……が、上空でピンク髪の少女に抱えられた銀髪の少女が何に気付いたのかアスファルトの地面に飛び降りる。

 そのまま彼女はゆっくりとした足取り手間小さな女の子に近付き、少し屈んで女の子と視線を合わせると、


「一人でどうしたの?お母さんは?」


「……いなくなっちゃった」


「そっか。じゃあ、一緒に探そっか」


 銀髪の少女は小さな女の子の手を取って歩き出そうとする。

 女の子は初めビックリしたが、銀髪の少女が纏う雰囲気があまりにも柔らかく、抵抗なくそのままついていく。

 だけど、例え抵抗なくても、気になることはあって、


「……おねえちゃんたちは、なんなの?」


 化け物を軽々しく倒した少女達の正体をたどたどしく尋ねた。


「うーん、そうだね……」


 銀髪の少女は女の子と繋いでない方の手を顎に遣り、少し考えるようにする。

 数秒後、彼女は微笑みを浮かべて、



「――あなた達を守る正義の味方、ってとこかな?」



 そんなことを、軽い調子で呟いた。




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